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「値上げ」は悪手ではない? KDDIとソフトバンクの“価値競争への転換”から見える勝ち筋石野純也のMobile Eye(3/3 ページ)

KDDIは2025年の料金値上げによりユーザー数を維持したままARPUを大幅に向上させ決算で好業績を収めた。追随するソフトバンクもサービス拡充を伴う値上げに踏み切り2027年度に1000億円規模の増収を目指す。一方ドコモや楽天は据え置きを維持しており上位2社はオンラインブランドを楽天対抗の盾にする戦略だ。

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ソフトバンクが目指す来期1000億円の増収、オンラインブランドは楽天対抗に

 宮川氏は「ギリギリまで値上げしないようにしようと、話をしてきた」としつつも、「最後の最後は世の中の物価が上がりすぎているので、残念ながら値上げしないと会社の構造が壊れてしまう」と語った。ただ、悩みぬいた末の増収効果は大きい。ソフトバンクの常務執行役員兼CFOを務める秋山修氏によると、その効果は今期で「100億円程度」だという。

 これは、KDDIと同様、年度の途中からの値上げになるためだ。1年に渡って“値上げ効果”の恩恵を受けられる2027年度は、「1000億円に近い水準」(同)まで増収が拡大する形だ。数四半期に渡って3700円前後を推移していたARPUも、KDDIと同様、数百円単位で増加することが見込まれる。


ソフトバンクの秋山CFOは、値上げの影響が今期は100億、来期は1000億近い水準になることを明かした

 ただし、今期は新規獲得重視から方針を転換したのに伴い、「前半戦に獲得費用の精算をするつもり」(宮川氏)だといい、一時的に減益になる見込み。第3四半期以降、この傾向が回復し、増収効果と相まってコンシューマー事業も継続的な増収増益を目指す方針を打ち出している。

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上期に獲得偏重だったこれまでのウミを出し切り、下期で増収増益への転換を狙う

 こうした得た収益は、コンシューマー分野だとAIサービスなどへの投資に使っていく。宮川氏は、「現在はスマホやアプリを中心としたサービス展開だが、(AIで)ユーザーに寄り添い、生活のあらゆるシーンを支えるサービスを展開していく」として、スマホやウェアラブルだけでなく、スマート家電、モビリティなども包含した新サービスの投入を示唆した。


スマホやアプリ中心だった現在から、徐々にAIサービスの展開を図っていく方針だ

 既存ユーザーへの値上げを実施した(する)KDDIとソフトバンクだが、完全に獲得競争を諦めたわけではない。宮川氏は、LINEMOの料金について問われた際に、「1社がなかなかがんばっている。そのけん制にもなるので、ちょっと辛抱しようかと思っている」と値上げの可能性を否定した。この1社は、料金を据え置きにしている楽天モバイルのこととみられる。

 KDDIも、オンライン専用ブランドのpovo2.0は、価格を大きくは変えていない。むしろ、期間限定トッピングで楽天モバイルと同等かやや安い「データ使い放題」トッピングを投入し、真っ向から対抗している。メインブランドやサブブランドではサービスを付加して値上げしつつ、より影響の少ないオンライン専用ブランドで楽天モバイルに対抗するというのは、2社に共通の戦術といえる。


値上げしたKDDIも、オンライン専用ブランドのpovoでは、楽天モバイル対抗の安価な使い放題トッピングを投入している

 値上げにかじを切った2社に対し、ドコモは現時点で、料金の改定に踏み切れていない。楽天モバイルも、現状ではユーザー獲得を優先しており、「他社に比べてまだマーケットシェアが大きくないので、総合的に判断し、長期的に考えていきたい」(楽天グループ 代表取締役会長兼社長 三木谷浩氏)という状況だ。値上げは収益性を改善する特効薬になる半面、ユーザーが離脱するデメリットもある。決算では、KDDIやソフトバンクがそのバランスをうまく取っていることが明確になった。

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