スマホをタッチせずに改札もレジも通過 日本で広がる「UWBタッチレス決済」最前線(1/3 ページ)
UWB技術を活用した公共交通のタッチレス改札やバス乗降、小売店決済の実用化に向けた動きが国内で加速している。FiRa ConsortiumにはJR東日本やソニーに加え、りそなやJCB、小田原機器、ゼンショーも参画し開発が進む。スマホのモバイルウォレット連携やJR西日本の動向も含め、2028年度の商用化へ向け水面下の連携が活発化している。
UWB(Ultra Wide Band)を使った公共交通機関での乗降サービスや小売店での支払いサービス実現に向けた取り組みが、現在日本国内で水面下で広く展開されようとしている。先日は東日本旅客鉄道(JR東日本)が高輪ゲートウェイで「タッチレス改札(ウォークスルー改札)」のデモンストレーションを行ったが、これもUWB技術を改札機の通過判定に使っており、同社では「ウォークスルー改札の本命(技術)はUWB」と宣言している。
UWB改札機をスマートフォンで通過する際の処理イメージ。駅構内に入ると設置されたBluetooth(BLE)ビーコンに反応してスマートフォンのUWB機能が有効になり、改札機がUWBの信号を元にした追跡と通過判定を行う(Nano Banana 2で作成)
今日、「Suica」に代表される日本国内の交通系ICカードの礎を作ったのはJR東日本であり、その基本となる技術「FeliCa」を作ったのはソニーだ。UWBを使った関連商品やサービス開発にあたっては、同技術の業界標準化団体であるFiRa Consortiumに参加して最新仕様を入手し、検証や接続テストを経ることで、他社製品との相互接続性が保証され、その信頼性をもって認定プログラムが利用できる。
FiRa Consortiumのメンバーページを見ると、現在JR東日本とソニーはともにメンバーとして参加していることが分かるが、かつて1990年代後半から2000年代初頭にかけてSuicaを生み出した2社がいま再びタッグを組み、UWBを使って「次世代Suica」と呼べる技術の開発にあたっているのだ。“タッチ”から“タッチレス”へ、四半世紀を経てUWBがどのように次の公共交通や決済の世界を変えていくのか。
鉄道改札以外でも広がるUWB決済の世界 飲食チェーンでの動きも
今紹介した直近のFiRa参加企業のうち、「りそなホールディングス」に注目してほしい。2026年3月4日に同社はJCBと共同で「新たな購買体験を実現するUWB決済実用化に向けた基本合意書の締結」と題したプレスリリースを発表している。近年、クレジット/デビットカードでも、Apple PayやGoogle Payなどのスマートフォン決済においても“タッチ”で支払うNFC決済が一般的になりつつあるが、店舗レジではポイントカードの選択やレジ袋の有無のみならず、どの決済手段を用いるのかといった情報を事前に伝える必要があり、店員との会話の往復が何度もあって時間がかかってしまう。
こうしたやりとりが煩わしいと感じる人もいるだろう。そこでスマートフォンにこうした情報を事前に全て入力しておき、実際にレジに立った段階でこれら情報は自動的に先方に送信され、会計まで自動的に済んでしまう。しかもUWBはある程度の距離が離れていても通信が行えるため、例えばスマートフォンをカバンやポケットに入れたままでも構わない。UWB決済の世界では“タッチ”から“タッチレス”に移行するというわけだ。
この両社による基本合意書の締結は、2024年1月にスタートした「タッチしないタッチ決済」というプロジェクトが契機となった。その成果の一部は同年5月に発表した「近づいてチェック」という実証実験として形となり、今回の発表へとつながっている。JCBイノベーション統括部市場調査室室長の間下公照氏によれば、NFCによる“タッチ決済”の次を模索する過程でUWBという技術に着目し、これを決済に応用できないかと考えたのが最初のきっかけだという。
ただ、実際に小売店など現場の意見を集約していくと「これ以上新しい決済は不要だ」という反応が多く、現場で複雑化するレジ周りのオペレーションに対する疲弊の声が大きいことが分かった。それならば……ということで「現場のオペレーションを軽減する仕組みを提案しよう」という形でまとめたのが「近づいてチェック」のような仕組みだ。
JCBによれば、UWBを使った決済の仕組みは2026年度中に実証実験をスタートし、2027年度には最終的な事業化判断と事業化に向けた協業を行っていくという。商用サービス開始は2028年度を見込んでいるが、2026年度中に行われる実証実験は2024年の「近づいてチェック」のように限定的な環境ではなく、より本番環境に近いスタイルになると予想される。そのため、実証実験には“リアル”の小売店や飲食店が参画する必要があると思われるが、そこで注目してほしいのが、先ほどのFiRa参加企業一覧にあった「ゼンショー」だ。
これはゼンショーがJCBとりそなが表明するUWB決済の実証実験に参加することを必ずしも意味するわけではないが、本来はPOSレジなど決済システムを受け入れるだけの企業である飲食チェーングループのゼンショーが、FiRaのメンバーとしてわざわざ参加しているのはなぜだろうか。理由としては、UWBを用いるシステムの設計段階からメンバーとしてプロジェクトに参加し、実際の検証まで深く関わる何かしらの意図があると考えるのが正しいのかもしれない。このあたりは後日改めて取材してみるが、非常に興味深い動きだ。
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