スマホの「モバイル運転免許証」を活用した実証実験 車が店舗に到着→即サービスを受けられる世界に？（1/3 ページ）

トヨタ・コニック・アルファは、スマートフォンと車、店舗などが連携する「クルマウォレット」の実証実験を公開した。将来的に運転免許証がスマートフォンに搭載されるモバイル運転免許証を見据えたもの。実際の車にUWB、Bluetooth LE（BLE）を搭載してスマートフォンと連携させ、さらに店舗側にはUWBやGPSを使って情報を取得し、さまざまなサービスを提供する。

[小山安博，ITmedia]

　トヨタ・コニック・アルファは、将来的に運転免許証がスマートフォンに搭載されるモバイル運転免許証を見据えて、スマートフォンと車、店舗などが連携する「クルマウォレット」の実証実験を実施し、報道陣に公開した。

　実験は九州大学の伊都キャンパスにおいて行われ、実際の車にUWB、Bluetooth LE（BLE）を搭載してスマートフォンと連携させ、さらに店舗側にはUWBやGPSを使って情報を取得し、さまざまなサービスを提供する、という実証が行われた。

テストで使われたトヨタのシエンタ。車内にUWB／BLEアンテナが貼り付けられている

スマートフォンと車、サービスがUWBでつながる世界

　今回のクルマウォレットは、「人とクルマとサービスをつなぐ新たな顧客体験の検証」を目的としたもの。現在、自動車にはさまざまな走行データが保存されているが、あくまで「車両にひも付くデータ」であり、「運転者の特定」と「運転者の許諾」が難しいと同社は指摘する。

　A地点からB地点へ移動した車両の走行データがあっても、それを運転した人は明らかではない上に、そのデータを他者と共有するとしても、運転者が承諾したものかどうか判別できない、という課題があるという。

　これら2つの課題を実現するために、モバイル運転免許証と車をUWB／BLEで連携させることで、運転者の特定と認証を実現する仕組みを構築した。

運転者のスマートフォンに入っているモバイル運転免許証（mDL）を活用。車との接続はUWBとBLEを利用する。今回の実証では実際にはmDLは使っていないが、過去にmDLとの接続性の実証も実施済みだという

　モバイル運転免許証は、国際標準規格であるmdoc／mDLを利用。これによって運転免許証がスマートフォンに内蔵できるようになる。既に米国の一部州ではこうしてデジタル化した運転免許証がスマートフォンに内蔵可能になっており、日本でも今後、スマートフォン搭載が計画されている。

　想定されている使い方としては、例えばレンタカーを予約すると、デジタルの車の鍵であるデジタルキーが利用者のスマートフォンに送信される。利用者はレンタカー屋に行って指定の車に近づくと、デジタルキーで解錠、エンジン始動が可能になる。

クルマウォレットで想定される使い方。ポイントは、運転者が代わったら同じ車でも異なるウォレットを使ってデータのやりとりができるということ

　その状態で運転者のスマートフォンとクルマウォレットが通信をすることで、モバイル免許証によって運転者が特定できる。スマートフォンと車が接続すると、車載ディスプレイ上に重要事項説明が表示されて同意を押すと、運転免許証の情報が利用される仕組みだ。

車に乗り込んでエンジンをかけると、まずはスマートフォンと車載機器がUWB＋BLEで接続する

スマートフォン内のモバイル運転免許証を確認して本人を認証する

　これによって、レンタカーを契約した本人の確認が行われ、受付をしなくてもそのまま運転を開始できる。さらに車には「クルマウォレット」が内蔵されており、駐車券、給油あと払い券、車両情報が格納されている、という設定になっていた。

重要事項を確認してレンタカーの利用を開始する

クルマウォレット内にはさまざまな情報が保管され、シーンに応じて利用できる