マイナンバーカードを運転免許証に――「マイナ免許証」は2025年3月24日から運用開始予定 関連政令のパブリックコメントを募集
警察庁が、マイナンバーカードを運転免許証として利用するために必要な法律および政令の施行予定日を2025年3月24日にすることを明らかにした。9月13日から10月12日まで、同庁は本件に必要な政令などの案についてパブリックコメントを募集する。
警察庁は9月12日、マイナンバーカード(個人番号カード)を運転免許証として利用できるようにする制度(いわゆる「マイナ免許証」)について、必要な道路交通法の一部改正を2025年3月24日に施行する方針を明らかにした(※1)。予定通りに施行された場合、同日以降に所定の手続きを行うことで、マイナンバーカードを運転免許証として利用できるようになる。
また同庁は同日、上記施行に必要な政令/規則の案を公表した。これに伴い、同庁は9月13日から10月12日まで政令/規則案に対する意見(パブリックコメント)を募集する。
(※1)改正法自体は既に成立済み
マイナ免許証と規則改正の概要
先述の通り、マイナ免許証はマイナンバーカードを運転免許証として利用できる制度だ。警察庁が9月12日に公表した政令/規則案は、その実現に必要なルールの改定/新設を行うものである。主な内容は以下の通りだ。
マイナンバーカードへの「特定免許情報」の書き込み
マイナンバーカードの利用で先行している「マイナ保険証」では、マイナポータルを通してマイナンバーカードと医療保険(健康保険)の被保険者情報のひも付けを事前に行う必要がある。ただし、マイナンバーカード自体には保険証のデータは保管されていない。
一方、マイナ免許証では都道府県公安委員会(都道府県警察)が指定する箇所(運転免許センター、警察署など)においてマイナンバーカードに「特定免許情報」を書き込む必要がある。特定免許情報は以下の通りだ。
- 運転免許証番号
- 運転免許の有効期限
- 運転免許の種類(仮免許を除く全種類に対応)
- 運転免許の条件(眼鏡等、運転できる車両の変速機/重量/装備条件など)
- 顔写真
特定免許情報の読み書きは、都道府県公安委員会が指定する箇所に配備される端末で行える。また、読み取りについては警察官が所持するスマートフォンでも行える。
特定免許情報を記録したマイナンバーカードは、マイナ免許証として使えるようになる(※2)。既存の運転免許証の交付を受けず、マイナ免許証を唯一の運転免許証とすることも可能だ。この場合、自動車や原動機付自転車(原付)を運転する際にマイナンバーカードを所持しなければならない。
一方で、国際免許証を使って海外で運転で自動車を運転する場合、運転免許証の“原本”の提示を求める国/地域もある。そのことを鑑みて、マイナ免許証の制度開始後も従来の運転免許証は引き続き発行される。マイナ免許証との併用も可能だ(※2)。
(※2)マイナ免許証と従来の運転免許証を併用する場合、自動車/原付を運転する際はマイナンバーカードと運転免許証のどちらかを所持する必要がある
「ジュネーブ条約」に基づく国際運転免許証(画像)は、単独で有効な国/地域もあれば、自国における運転免許証との同時所持を求める国/地域もある。そのため、従来の運転免許証も引き続き発行される(出典:警視庁)
なお、マイナ免許証の有効期限は、マイナンバーカード自体の有効期限とは連動しない。そのため、マイナンバーカード自体が有効でも、マイナ免許証が有効期限を迎える際は特定免許情報の更新が必要となる。逆に、マイナンバーカードが有効期限で失効した場合でも、特定免許情報が有効なら当該カードはマイナ免許証としては有効だ。
住所変更手続きの特例
従来、引っ越しに伴い住所を変更する場合、マイナンバーカードは市町村/特別区の窓口、運転免許証は都道府県警察が指定する箇所に別個に届け出なければならなかった。
この点、マイナ免許証についてはマイナンバーカードの住所変更(市町村/特別区の窓口での手続き)をもって、運転免許証の住所変更を同時に行う特例が設けられる。ただし、この特例を適用するには以下の条件を全て満たす必要がある。
- マイナ免許証“のみ”利用していること(従来の運転免許証と併用する場合は不可)
- 住所などの情報を都道府県公安委員会へと提供することに同意すること
なお、上記の特例は本籍地や氏名の変更時にも適用される。
免許更新に関わる特例
現在、運転免許証の更新を行う場合は都道府県公安委員会が指定する箇所で検査や講習を受ける必要がある。
この点、マイナ免許証を保有する人については、指定箇所での講習をスマートフォンやPCを使った「オンライン講習」に代えることができる。オンライン講習を受けた人は、指定箇所での講習が省略される。
ただし、省略できるのは講習のみで、オンライン講習を受けた人も写真撮影(※3)、視力検査や免許の更新(データ書き換え)手続きは指定箇所で行う必要がある。また、以下の講習はオンラインでは受けられない。
- 初回更新者講習(運転免許を初めて更新する人が受ける講習)
- 違反運転者講習(3点以下の軽微違反が累計6点以上となった人が受ける講習)
(※3)要件を満たせば、自分で撮影した写真を持ち込むことも可能。ただし、持ち込み写真で手続きをする場合、対応可能な箇所が限られることがあるので、事前に都道府県警察に確認することを推奨する
運転免許証の更新手続きを受け付ける箇所は、都道府県によって異なる上、受講する講習の内容によっても異なる。更新案内のはがき/封書、あるいは各都道府県警察のWebサイトをよく確認したい(画像は静岡県警察の場合)
交付(更新)に伴う手数料の標準額の変更
マイナ免許証の開始に伴い、運転免許証の交付(更新)に伴う各種手数料の標準額が変更される。
まず、マイナンバーカードに特定免許情報を書き込むための「特定免許情報記録手数料」が新設される。これは従来の運転免許証に対する「免許証交付手数料」や「免許証等更新手数料」に相当するものだ。マイナ免許証と運転免許証の両方を同時に発行する場合は、特定免許情報記録手数料が大きく値引きされる。
他の手数料については多くは値上げとなるが、一部に据え置き、または値下げとなる項目もある。
【運転免許証の新規取得に伴う交付手数料】(標準総額:括弧内は特定試験免除時)
- 現行:2050円(1700円)
- 改定後(2025年3月24日以降)
- マイナ免許証のみ:1550円(1350円)
- 運転免許証:2350円(2100円)
- 運転免許証+マイナ免許証:2450円(2200円)
【運転免許証の更新に伴う交付(書き換え)手数料】(標準総額)
- 現行:2500円
- 改定後(2025年3月24日以降)
- マイナ免許証のみ:1550円
- 運転免許証:2100円
- 運転免許証+マイナ免許証:2950円
パブリックコメントについて
今回の政令案に意見がある場合は、9月13日から10月12日までの期間中に以下のいずれかの方法で意見を送付しよう。
- e-Gov(電子政府総合窓口)のパブリックコメント意見提出フォーム
- 警察庁のメールアドレス(※4)
- 警察庁への郵送(10月12日必着で郵送する必要がある)
(※4)確実に送付したい場合は、e-Govまたは郵送を推奨
今回の政令案の概要、新旧対照表や意見の送付方法の詳細は、警察庁の特設Webページで確認できる。
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