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SpaceXが米国で自前の携帯サービスを目指す 衛星が届きにくい屋内は800MHz帯で補う

SpaceXが米国で800MHz帯の周波数免許を取得する契約を発表した。FCCが認可した次世代衛星1万5000機と合わせ、携帯会社の周波数を借りずに自前で携帯サービスを提供する準備を進めている。

 SpaceXが米国で携帯キャリアになろうとしている。10月8日、同社は800MHz帯の周波数免許を取得する契約を発表し、Starlink Mobileが米国で携帯キャリアになる道を開く取得だと自社サイトで説明した。その2日前には、米連邦通信委員会(FCC)が次世代のStarlink Mobile衛星1万5000機の打ち上げと運用を認可している。


SpaceXが10月8日の発表で掲載したStarlink Mobile衛星のイメージ。左が現行の第1世代(V1)で、次世代のV2はビームの数が多い

 日本のStarlink Mobileは、KDDI、ドコモ、ソフトバンクが自社の携帯サービスに組み込んで提供している。米国でSpaceXが目指しているのは、SpaceX自身が通信網を持ち、携帯サービスを提供する形だ。

 ただし衛星の電波は建物の中に届きにくく、普段使う携帯として成り立たせるには屋内をどうつなぐかが課題になる。SpaceXは今回の800MHz帯を、建物の中までつなぐための帯域だと説明している。

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携帯会社の一機能から、自前のサービスへ

 今のStarlink Mobileは、携帯会社の周波数を借り、その帯域の電波を衛星から送る仕組みだ。日本ではKDDIが「既存のau周波数を活用」すると説明しているとおり、衛星が携帯会社の基地局として働き、契約も携帯会社と結ぶ。


au Starlink Directの仕組み。衛星経由の通信はStarlinkの地上局とコア網を経て、auのコア網につながる

 米国ではT-Mobileが貸し手で、SpaceXが使える帯域は約5MHz幅にすぎない。T-MobileのSrini Gopalan CEOは7月の決算説明会で、衛星経由の利用はネットワーク全体の0.0002%、夏の繁忙期でも0.0003%だと述べ、補完的なサービスだと言い切った。

 自前のサービスを出すには、自社で使える周波数が要る。SpaceXは米衛星放送大手EchoStarから、1.7~2.2GHz帯に分かれた計65MHz幅を196億ドルで買う契約を結んだ。EchoStarが米国で4番目のMNOを目指し、5G網に使っていた周波数だ。EchoStarは2025年に自前の無線網を止め、周波数を手放した。

次世代衛星で普段使いの通信を目指す

 SpaceXが株式上場に向けて米証券取引委員会(SEC)に提出した登録届出書は、次世代衛星を使えば、米国では改造していない既存のスマートフォンの相当数で5G相当の通信を提供できる見込みだと記載している。グウィン・ショットウェル社長兼COOは8月4日の決算説明会で、使える帯域が約5MHz幅から65MHz幅に増え、衛星の数も約10倍になると説明した。単純化すれば10倍と10倍で「今の100倍良くなる」という。

 ショットウェル氏は同じ説明会で、米国の大手3社としてAT&T、Verizon、T-Mobileの名前を挙げ、「我々のサービスの方が良くなると思うので、3社の顧客をかなりの数獲得できると見込んでいる」とも語った。


MWC 2026の基調講演に登壇したSpaceXのグウィン・ショットウェル社長兼COO(左)とStarlink担当SVPのMike Nicolls氏

 次世代衛星は2027年に打ち上げを始め、同年末にサービスを始める計画だ。FCCが10月6日に認可した1万5000機は、米国内ではEchoStarの周波数を使うため、携帯会社から周波数を借りる必要がない。ただし周波数の移転が完了するのは2027年11月の予定で、それまでは商用サービスに使えない。

衛星だけでは屋内に届きにくい

 ショットウェル氏は8月の決算説明会で、EchoStarの周波数には地上で使う権利も含まれるとして、地上の通信網も整備すると明言した。Starlinkのブロードバンド用アンテナの架台に小型の携帯基地局を載せ、必要な場所から置いていく案を示し、「ローバンドの周波数に最初から何十億ドルも使う必要はない」と述べた。AT&TのJohn Stankey CEOは9月のインタビューで、この案は「マクロ網を作るのと同じだけ費用がかかる」と反論している。


ドコモの可搬型基地局。上部にStarlinkのアンテナを載せ、衛星回線を使って携帯の電波を出す

 8月の説明会から2カ月で、SpaceXはローバンドにあたる800MHz帯の取得に動いた。発表文では、2GHz帯は多くのデータを送るための帯域で、建物の中まで電波を届かせるには800MHz帯が要ると説明している。800MHz帯は多くのスマートフォンがすでに対応している帯域でもある。

 取得するのは上り下り合わせて最大14MHz幅で、SpaceXは取得額を明らかにしていない。投資会社のGrain ManagementがT-Mobileから8月に買ったばかりの帯域で、SpaceXへの移転にはFCCの承認が要る。

 800MHz帯のような低い周波数は電波が遠くまで届き、1つの基地局で広い地域をカバーできる。その分、小型局を近い間隔で並べると隣り合う局の電波が干渉しやすく、波長が長い分アンテナも大きくなる。Starlinkのアンテナの架台に小型局を載せて細かく置く案には合いにくい。地上で使うなら、鉄塔などに大型の基地局を建てて広い範囲を覆う、Stankey氏の言うマクロ網の建設に近づく。

 800MHz帯の電波を衛星から送る場合は、FCCの認可が別に要る。10月6日の認可に、800MHz帯での衛星通信は含まれていない。AST SpaceMobileは4月、AT&TやVerizonなどが持つ700~900MHz帯を使った衛星通信について、FCCの認可を得ている。SpaceXは800MHz帯を衛星と地上のどちらで使うのかを明らかにしていない。

日本ではKDDI・ドコモ・ソフトバンク経由のまま

 KDDIとドコモは、次世代衛星「Starlink Mobile V2」への移行を準備している。KDDIは9月、V2の契約を8月10日に結んだと発表し、2027年中に音声通話と高速データ通信を始める目標を掲げた。ドコモも8月に同じ契約で合意し、2028年度中に提供する予定だ。


ドコモが6月の災害対策の説明会で示したdocomo Starlink Directの案内

 ソフトバンクはV2の契約を発表していない。楽天モバイルはStarlinkではなくAST SpaceMobileと組み、10~12月の開始を目指している。


MWC 2026の基調講演で楽天グループの三木谷浩史会長兼社長が示した衛星直接通信の計画。日本では2026年第4四半期に始めるとした

 今回の800MHz帯もEchoStarの65MHz幅も、米国の免許だ。EchoStarとの取引には2GHz帯に関する海外の権利も含まれるが、上場時の届出書によると、今のスマートフォンはこの帯域での衛星通信に対応していない。対応端末が出るまで、SpaceXは海外では国ごとの携帯会社との提携に頼るとしており、日本で使えるStarlink Mobileは当面、KDDI、ドコモ、ソフトバンクを通じたものに限られる。

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