モバイル音楽配信の明日はどっちだ?(1) 4種類が入り混じる現在

音楽をはじめとするコンテンツ配信サービスが活発化している。これについて今回より3回の集中連載を行う。第1回は現在行われている音楽配信の技術面について。続く2回めにはビジネスとしての音楽配信についてを掲載し,第3回にはそこからの展望を掲載する予定だ。

【国内記事】 2001年5月25日更新

どこでも音楽,買いたいですか?

 最近,PHSで音楽が買えるようになったことをご存知だろうか? 1999年暮れごろより始まったパソコン向け音楽配信が,PHS経由で受けられるという話ではない。そのサービスに対応しているPHS端末1台だけで,試聴する際にはストリーミングによるリアルタイム再生と,購入する際には高音質の楽曲ファイルが著作権を守られた形でPHS本体のみの操作で購入できるサービスが始まっているのだ。

 もちろん「購入」というからには有料ではあるが,有料で買っても納得するほどの音質のよさは,対応PHSのヘッドフォン出力から実際に体験してみると,実用性への疑念も吹き飛んでしまうくらいの便利さと衝撃を感じることだろう。これは全て,既に現実となっていることである。

 このようなサービスは,サービスとしては2種類。細かくは4種類の方式が並存している。

 まずNTTドコモから,コンテンツ配信サービスであるM-stage(用語)が開始されている。PHSベースで音楽を配信するのが「M-stage music」(1月5日の記事参照),同じくPHSベースで動画を配信しているのが「M-stage visual」(2000年11月の記事参照)である。

 特に音楽を配信するM-stage musicは3月に松下通信工業製の端末とともにスタートした後,つい先日はシャープ製の端末が登場し,さらにバリエーションが広がった。

 また別の見方をすれば,松下製端末は同社の推進する半導体メディア「SDカード」を搭載し,シャープ製のものはソニーが推進する「メモリースティック」を採用していることから,同じサービスといえども対立の構図をみることもできる。つまり,同サービス内での対立構造の存在自体,現在のワイヤレス環境化におけるNTTドコモの巨大さを顕著に表している。

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左が松下通信工業製の「Picwalk P711m」,右がシャープ製の「Picwalk SH712m」

 「どこでも音楽を買える」ということが,「どこでも聞ける」ということ以上の意味を持っているかどうかは,使用者の趣味や主義にもよると思われるが,少なくともこれまで存在しなかった購買スタイルが音楽というコンテンツに起こっているのは間違いない。

 同じくPHSではDDIポケットはSound Marketというサービスで市場にトライしている(2000年9月の記事参照)。おそらく,巨大な投資が必要とされるサービスがここまで興るのには非常に強い理由があると思われる。

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上は三洋電機製の「RZ-J91 Leje」,下は東芝製の「Beat Carrots DL-B01」

規格の乱立するPHSでの音楽配信

 本稿にあたっては,「音楽配信」という言葉の定義として,

  • 課金システムの存在(コンテンツの商利用)
  • 著作権保護されているシステムを使用している
  • 音楽レーベルによる正式なコンテンツ提供(インディーズ楽曲の配信のみではない)

 という3点を満たしていることを条件としたい(広義では「自分の歌ったカラオケの録音をMP3ファイルにしてwebで公開した……」ということも音楽配信ではあるが,本稿は「音楽配信ビジネス」をおうことによる)。

表を見る

 現状のサービスは,仕組みにおいて各社バラバラの状態であることは上記に説明したとおりだ。それぞれに関して,まずは既に現在行われているPHSベースでの音楽配信について,その違いを表にすると上表のようになる。

 NTTドコモ,DDIポケットのそれぞれのサービスは,同一名称のサービスを使用するにものでも,使用している記録メディアの違いによりそれぞれの専用端末が存在しており,端末ごとのスペックも違う。

 また,実際にサービスを受ける側として何よりも気になる「買えるコンテンツ」もM-stage musicとSound Marketでは参加している音楽レーベルの参加・不参加により違っている。

 携帯電話・PHSでの音楽配信という先進的なサービスを受けることは,ユーザーとしてもあこがれる内容である。しかしよく考えて買わないと,買った端末は思いがけず音声通話機能は付いておらず,また,自分の好みのアーティストの楽曲はそのサービスでは提供されていない……ということにもなりかねない。黎明期ならではの楽しみも待っているものの,実際に購入するには慎重な姿勢と研究が必要といえる。

 では,実際にはどういった違いがあるのだろう。それぞれの要点についてメリット,デメリットを見てみよう。

 たとえば,突出した大きな違いは「買えるコンテンツの違い」である。確かにM-stage Musicはレーベルの数は多いが,一般に配布されている曲目リストを見ると決して参加レーベルの曲が全て網羅されているわけではない。それはSound Marketでも同じことであり,特に好きなアーティストがいる場合はそれらの参加を確認することが重要となるだろう。

 また,端末に関して最も特徴的なのはM-stage musicの松下製の端末であり,音声通話の機能を搭載していない。すでに携帯電話なりPHSを持っているならともかく,契約料を払って維持するたった1つの電話機にするには用途が限定される。

 その意味では,残りの3方式は全て電話機としての機能は最新のものが搭載されている。特にSound MarketのfeelH"端末は非常に豪華な機能を誇っており,カメラを接続することや,着メロの音質などでは引けを取らないどころか数歩先をいっている感がある。回線に定評のあるH"であるというところも,電話機としてもメインで使用するには評価できるところだ。

 また,記録メディアということで見ればキャリアをまたいで使用されているのはSDカードであり,ほかにはM-stage musicでメモリースティックと,Sound MarketではセキュアMMCを使用しているものがある。

 PHSでの音楽配信で特徴的なのは,記録メディアは単なる記憶媒体ではなく,配信側と一貫してつながるシステムの一部になっているところだろう。記録メディアに搭載されている著作権保護システムも含めて全体が構成されているため,単なるメディアの形の違いと割り切ることはできない。

 だが,既に2方式に使われているSDカードには,今後のデファクト化の兆候をみることもでき,また,メモリースティック扱えるウォークマンやパソコンを使用しているならば,M-stage musicのシャープ製端末を選択することもよいだろう。ただし,手持ちのメモリースティックがあるからという理由で購入を考えるときは,事前に手持ちのものの「色」を確認することをお勧めする。音楽配信を受けるのに使用できるのは,著作権保護機構である「MagicGate」を搭載した白色のメモリースティックのみであり,それを搭載しない紫色のものは使用できない。 

 配信システムは,全体的には4方式の全てが違っている。コンテンツの権利者の取り決めを維持する「DRM」という部分にIBMの「EMMS」というシステムを使用しているものが多いが(詳細は後述),それはユーザーの使用感には直接関係するところではない。

 さらに手前の配信システムにおいて特徴があるのは,M-stage musicのシャープ端末に採用されている配信技術「OpenMG Light」だ。ソニーの発表文を見る限り,仮にコンテンツファイルを受信中に回線が切れても,最初からではなく途中からダウンロードを再開できることを明確にうたっている。本端末はまだ発売されたばかりであり,この機能が本サービスで正確に働くかどうかはこれからの実績において確認したいが,これは移動体での通信の実際をよく理解した仕様といえるだろう。

群雄割拠? 業界の混乱?

 パソコン+インターネットという組み合わせで音楽配信を行うには,大きく下図のような構図が必要になる。その中でも「DRM」(著作権管理機構)と呼ばれる仕掛けはよく話題になる。

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拡大画像

 これは権利情報をコンテンツに付加し,維持する仕組みであり,IBMのEMMSが代表的なものとされる。音楽に限らず,配信されるコンテンツはある意味では「権利」のカタマリともいえる。たとえば音楽レーベルが配信する楽曲に「再生回数の制限」や「再生環境の制限」をかける場合,その情報をコンテンツに埋め込み,それを維持したままユーザーに届ける必要がある。コンテンツの電子的な配信ビジネスの応用性もここで決められるといっても過言ではない。

 このことは,インフラがインターネット系であろうと携帯電話に直接組み込まれたものであろうとその構図に変わりない。表で表したとおり,NTTドコモのM-Stage MusicにおいてもEMMSが使用されている。だが,PHSを用いた場合ワイヤレスでの配信であり,さらに専用端末を使用することからDRMだけではなく配信方式も規格が乱立しているのは前章で書いたとおりだ。

 この仕組みは決して分かりやすいものでなく,現在ビジネスとして運用が行われている音楽配信サービスは,実のところほとんどがほぼバラバラの仕組みで運用されている。

 SDカードなどの半導体メディアが特に必須ではない,パソコン+モバイル通信での音楽配信を受ける際にも,前述したDRMにより再生環境は異なっている。仮にEMMSを使用した音楽配信サービスで受ければそれに対応した再生ソフトが必須となり,別方式である「Windows media technology」で配信を受ければWindows Media playerが再生環境となる。

 また特に,PHSに配信システムが組み込まれているものは,購入したコンテンツをメディアを抜き差しすることでパソコンなどに移動させることも可能となっているが,その方式も現在のところさらに各方式によりまちまちであり互換性や共通性を期待できる状態ではない。

 さらに,実際に使用してみても配信システム自体がトラブル続きで,サービス自体がたびたび停止している現状もあるようだ。この状態は,あくまで個人の間隔によると思うが少なくとも筆者には,その未成熟度と不安定さにおいて,まだまだ「実験の域」を出ないものに思われる。だが,それを名だたる企業がまるで何かを取り合うかのように始めているのが現状だ。

 このように混迷を極める音楽配信が,ますますビジネスとして推進され続けようとしている。それは,なぜなのであろうか? また,多大な努力を払ってケータイにより行われる理由はあるのだろうか? 第1回は,現在行われている音楽配信についてその具体的な製品としての比較と,システムの比較を行った。次回第2回ではビジネスとしての音楽配信の現状とその目的について考えたいと思う。

[桜井里志,ITmedia]

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