Bluetoothを拒むハチ公前な人々

業界注目のワイヤレスソリューション,Bluetooth。その対応製品が流行するカギとなるのは何か,渋谷ハチ公前の人々を調査した。

【国内記事】 2001年5月31日更新

 4月24日に幕張メッセで行われた「Bluetooth Expo 2001」において,あるデバイスが出品された。JTDCが現在開発中のハンズフリー・ワイヤレス・ヘッドセット「i2me」(12月15日の記事参照)である。

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 これは近距離無線規格である「Bluetooth」を採用しているため,コードなしに耳元のヘッドセットから携帯電話で通話できるという製品だ。使用にあたっては,まず通信アダプタを携帯電話の裏面に接続し,写真のようなヘッドセットを耳に装着する。この状態で,携帯電話が着信した際に耳元のヘッドセット側のボタンを押すと,イヤホンマイクに向かってしゃべるだけで“コードレスかつ両手が空いた状態で”通話が可能になるというものだ。

 この機器に採用されているBluetoothとは,2.4GHz帯域を用いる無線伝送規格。PCやその周辺機器,家電,携帯電話など,デバイスを問わずにワイヤレスでのデータのやりとりを実現する技術として,対応製品の開発が待ち望まれている。上記のような使い方以外にも,携帯電話と自動販売機を連動させた「電子財布」(5月7日の記事参照)構想などもあり,今後の発展が期待されている。

 まだ実際にBluetoothに対応した製品は少ないのが現状だが,i2meは少なくとも今年中に発売される見込み。この製品を利用すれば,わずらわしいコードなしに両手が開いた状態での通話が実現する。自動車の運転中の通話などにおいて,生活が便利になることは確かだろう。

 しかし,これが実際に市場にどう受け入れられるかどうかは,興味深いところだ。本製品が一般の人々にはどう受け止められるのか,ZDNet Mobileでは街頭調査を行った。

ハチ公前の人々には不評?

 場所は渋谷ハチ公前。街ゆく人々にi2meのパンフレットを見せ,「これを買いたいと思いますか?」と話を聞いてみた。

 結果は以下のとおり。

買いたい 買いたくない
14 7

希望購入額平均=3780円

 質問に答えてくれたのは14才から59才までの男女21名(男性9名,女性12名)。調査にあたってはBluetoothの説明も行い,技術としての今後の可能性も強調した。

 この調査で見るかぎり,一般市場ではそれほど本製品が熱望されているわけではさそうだ。実際,これが今後発売になることを知っている人はほとんどおらず(1名を除く全員が製品を知らなかった)また,希望購入額の3780円も,予定価格である2万5000円とは程遠いものとなった。

 買いたい派の主な意見は「便利だ」とのこと。「いいじゃないですか,デザインもかっこいい」という声も1部にあった。現在コード付きのイヤホンマイクを使用している人には好評で,全て(3人)が買いたいと答えていた。

 逆に買わない派の主な意見は「装着したとき,見た目がかっこ悪い」「(手を添えていないため)独り言を言っているみたいで不気味がられるのでは」というもの。ただしこちらは「みんなが買うなら買う」という意見が多く,実際に製品が市民権を獲得してしまえば抵抗はなくなるかもしれない。

 買わない派の意見で,もう1つ目立ったのが「高いならいらない」というものだ。「500円ぐらいならギャグで買ってもいい」「5000円で,(心尽くしのため少々値が張る)プレゼント用かな」という意見が多く,ほとんどが3000円前後での購買を希望している。

 認知度については製品が発売されることで高めていくことが可能であるとしても,この希望購買額と実売価格との大きすぎる差は,いったいどこまで埋めることができるのだろうか。

Bluetoothはどこまで安くできる?

 Bluetooth関連製品の売れゆきに重要な要因となりそうな価格について,Bluetoothの仕様を決定している業界団体「Bluetooth SIG」を運営する企業の1つである,Ericssonに話を聞いた。なおEricssonは,現在海外でBluetooth搭載のヘッドセットを販売中だ。

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これがEricsson製のヘッドセット

 今回話を聞いたのは,「Bluetoothガイドブック ワイヤレス通信の新技術」などの著作もある,日本エリクソンのモバイルインターネットソリューション部マーケティングマネージャーである宮津和弘氏だ。

ZDNet:Bluetoothはどこまで値下げが可能ですか?

 「現在の開発段階では,Ericssonのヘッドセットの価格も2万円ほどになる見込み。しかし価格は下げていくことが可能であり,場合によっては5000円くらいで販売することもあり得るとみている」

ZDNet:というと?

 「ヘッドセットの場合,携帯電話のキャリアと提携するかたちでの販売になる可能性がある。現在携帯端末の販売について,ほとんどのキャリアではメーカーに対し“1台いくら”の補助金を与えるという方式をとっているが,これがヘッドセットの場合にもあてはまれば,メーカーとしては補助金を頼りに販売価格を5000円まで下げることも可能だ」

 この場合,生産の段階で1万円の商品をキャリア側が1万で買い取り,キャリアのブランドを付けて5千円で販売するということだ。差額分はキャリアがかぶることになる。携帯電話や「eggy」などが低価格で販売されているカラクリがこれである。

 「そもそもBluetooth自体,もうかるような仕組みにできていない。Ericssonは,Bluetoothで業界を活気づけるのが目的であって,これ自体でもうける気はない(から値下げもありうる)」

キャリアとの提携がカギ

 Bluetoothの発展には,携帯電話への搭載が不可欠だということは以前からいわれてきた。現在,KDDIはBluetooth内蔵携帯電話を発表しているが(5月17日の記事参照),ほかのキャリアはまだ様子をみている段階にある。

 今後発売されるであろうさまざまなBluetooth製品。携帯電話の全キャリアがBluetoothを支持するようでないと,低価格化はなかなか難しいのかもしれない。

[杉浦正武,ITmedia]

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