モバイルでも定額制は必要なのか?

第3世代携帯電話が普及し,期待されるリッチコンテンツ市場が立ち上がるには“通信速度よりも料金体系のほうが問題だ”という議論は以前からある。各キャリアの“料金定額制”に対するスタンスはかなり異なる。

【国内記事】 2001年9月6日更新

 携帯電話やPHSなどのデータ通信について,料金定額制導入の動きが活発になってきた。動きが速かったのはPHS陣営だ。

 アステルグループの一部では早くから定額制を導入しており(2月9日の記事参照7月18日の記事参照),DDIポケットが「AirH"」ブランドで定額制PHSを全国展開するに当たって(7月31日の記事参照),“PHSのデータ通信は使い放題”というイメージができあがろうとしている。

 それでは携帯電話はどうか。第3世代携帯電話の導入を目前に控えた携帯の場合,各キャリアによって考え方はかなり異なる。

定額制に積極的なKDDI

 携帯電話でのデータ通信について,定額制に積極的なのはKDDI。2002年の10月に予定している「CDMA2000 1x EV-DO」(HDR,7月30日の記事参照)の導入時には定額制を実現する予定だ。

 「(高速データ通信サービスは)パケットの従量課金では無理。データに特化したIMT-2000だが,定額制が実現するインフラでなければ導入するつもりはない」 (mobidec2001にて,KDDIのモバイルインターネットビジネス部の高橋誠部長)

定額制は念頭にないドコモ

 逆に携帯電話での定額制について,疑問を呈するのはNTTドコモ。FOMAの説明会で料金定額制について問われた立川啓二社長は「無線のスペクトラムはすべてのユーザーで共有している。定額制は導入できない。(FOMAでは)料金面でもパック料金によって,プランを選んでもらえればかなり定額制に近い」と回答している。

 立川社長は「プランを選べば定額制に近い」と言うが,その価格設定は微妙だ。FOMAで最も高い「パケットパック80」を選択すると,1パケット当たり0.02円。8000円の無料通信分で送受信できるデータ量は約49Mバイトになる。

 定額制のAirH"導入に際し,DDIポケットは「PCを使ったインターネットの月平均転送データ量は30Mバイト強」と語っている(5月21日の記事参照)。この数字が定額制導入時のインフラの負荷を考える目安になったようだ。

 FOMAの場合は8000円で50Mバイト近くまで利用できるわけで,ある程度は“定額制に近い”というのも納得できる。しかし“メールに添付されるファイルが数Mバイト”ということもよくある昨今,本格的にデータ通信に利用するには少々厳しいとも考えられる。

モバイルマルチメディアマーケットの開拓に必要なのは?

 NTTドコモのiモード企画部長,夏野剛氏は「定額制イコール安くなると考えているのであれば間違い。定額制はヘビーユーザーとライトユーザーの平均的な価格を設定しようということ。これがいいかどうかは各社の戦略の問題。ドコモは価格体系はフレキシブルであるべき」と語っている。

 確かに現状のiモードを考えれば,定額制を求めるほどパケット代金を払っているのは一部のヘビーユーザーだ。一方でDDIポケットのAirH"を見ても,「定額制はうれしいが,5800円は高い」という声があることも確か。

 夏野氏が「ユーザー間の不公平を生んででもフラットにしたほうがいいのか? マーケットが広がることを考えると,まだ今のほうがいいかな」と語るのも分かる。

 しかし,問題は現状よりも今後だ。第3世代携帯電話のキラーアプリケーションの1つとして考えられている動画や音楽などのリッチコンテンツと相性がいいのが定額制であるのは事実。

 定額制によってリッチコンテンツ市場が立ち上がるのか,リッチコンテンツ市場が隆盛ならば定額制も成り立つのか。昔からある“鶏が先か卵が先か”の議論がここにもある。

[斎藤健二,ITmedia]

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