SH505iS特集

200万画素にオートフォーカスは必須だった〜SH505iS開発秘話

商品企画部の
田中宏生主事

「少しでもきれいに撮れるほうがいい。202万画素は必然だった」──。そう話すのは、ドコモ初の202万画素カメラを搭載した「SH505iS」の企画を担当した田中宏生主事だ。
といっても、202万画素カメラの搭載は“単に載せればいい”というものではなかった。「202万画素では、オートフォーカスでないとダメ」と田中氏は言い切る。その理由は何だったのだろうか。

画素向上とピントのジレンマを解決

 202万画素とオートフォーカスの関係を探るには、デジカメの基礎知識をおさらいする必要があるだろう。デジカメでも携帯でも、レンズを通ってきた光を受けて画像にする受光素子と呼ばれるものがある。CCDとかCMOSといった方式の名前で呼ばれる半導体だ。銀塩カメラではフィルムがこれに当たる。

 画素数を増やしていったときに問題となるのは、この受光素子の大きさ(CCDサイズ)である。画素が増えれば自然とサイズも大きくなる。202万画素カメラモジュールを搭載した「SH505iS」の場合、1/2.7インチと普通のデジカメ並の大きさまできた。

▼シャープ製カメラモジュール(抜粋)

画素数受光素子サイズ焦点距離センサ方式
11万 1/7インチ2.0ミリCMOS
31万1/5インチ2.6ミリCCD
100万1/4インチ3.7ミリCCD
202万1/2.7インチ5.2ミリCCD

 一般的なデジカメでは、「受光素子サイズは大きいほうがいい」というのが常識。受ける光も多くなり感度が上がるからだ。しかし、携帯の場合はほかにも考慮しなくてはならないことがある。

 「画角を今までと変わらないようにすると、受光素子が大きくなる分、光学系が相似で大きくなる。すると結局焦点距離が長くなる。焦点距離が長くなると被写界深度が浅くなる」(第4技術部の奥村政雄係長)

 表を見ても、画素数が増えるにつれて受光素子サイズが大きくなり、合わせて焦点距離も伸びている。焦点距離が伸びると被写界深度(ピントの合う範囲)が浅くなる。光学ズームレンズで望遠にしたときに前後がボケるのと同じように、ピントの合う範囲が狭くなっていくのだ。

受光素子が大きくなると焦点距離も伸びる。すると、必然的にピントの合う範囲も狭くなる。ボケ味が楽しめるカメラとなるが、ピンボケしないためにはオートフォーカスも必須だ

 最近話題の一眼レフデジカメでは一点にだけピントがあって前後がボケる。これもひとつには受光素子が大きいせい。携帯カメラも200万画素時代を迎えるに当たって同様になってきた。

 「100万画素までは単焦点(オートフォーカスなし)でもなんとかなった。1メートルくらいのところで一番ピントが合って、そこを境になだらかにピントがボケていく」(田中氏)

第4技術部の
奥村政雄係長

 オートフォーカスなしのいわゆる単焦点(パンフォーカス)では、厳密にはどこでもピントが合うわけではない。遠景や手元は、ターゲットから離れるにつれてボケていく。

 「200万画素クラスでは、ピントのズレ具合が大きくなってくる。ボケてしまうのは許せない」。こうした判断が、オートフォーカスの採用に踏み切らせた。

 もちろん、オートフォーカスを使わずとも被写界深度を深くして、広い範囲でピントが合うようにすることもできる。簡単なのはレンズを暗くすることだ。絞りを絞るほど広い範囲にピントが合うことは聞いたことがあるだろう。

 しかし「SH505iS」では、従来同様F2.8という明るいレンズを使った。「ちょっと暗めの場所で使われることが多い。ある程度明るさが取れないと」(田中氏)という思いからだ。

 レンズには非球面のガラスレンズ3枚を使った。従来のプラスティックレンズに比べて、ガラスレンズはコストが高い。しかし「解像度が高いうえ、屈折率が高い」(奥村氏)ためだ。

「SH505iS」のカメラ部。ガラスレンズ3枚にオートフォーカス機構を備えた、202万画素CCDカメラが収まっている。明るさもF2.8。レンズ横には3色のLEDを組み合わせた高輝度のライトも配置されている

 画質を追い求め、正攻法で作っていった結果、1/2.7インチという大きな受光素子に、F2.8という明るいレンズを組み合わせ、浅くなった被写界深度をカバーするためにオートフォーカスを採用。できあがった画質は、他社の携帯どころか、デジカメと比べても“負けない”ものに仕上がった。

 「SH505iS」で撮影した画像を見ると、202万画素というサイズのほかにも気づくことがいくつかある。ひとつは、目標にしっかりピントが合っているだけでなく、前後がきれいにボケることだ。二つ目は、暗い場所でもノイズが少なく美しく写ることだ。

 200万画素時代到来と共に、携帯カメラも単に出力画素数だけでは判断できなくなってきた。“本格カメラ”の作りを持っていること。それが「SH505iS」の特徴の一端であろう。