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第5回「見極めよ! モバイルとマスの効果的マーケティング連動」

モバイルは次世代マーケティングにおいて重要なツールとなる。しかしモバイル単独での独りよがりのマーケティングでは,その効果もたかが知れている。既存のマスマーケティングとの連動により初めて,その効果は最大限に発揮されるという認識が必要だ。

【国内記事】 2001年11月6日更新

 “コンテクスト”の重要性は前回述べた通りである(連載第4回参照 )。そして,この次世代型マーケティングを行うには,常にユーザーの身近にあるモバイル端末が,決して欠かすことのできないツールとなることも述べた。

 しかしモバイルのみで次世代型のマーケティングが完結するのかといえば,決してそうではない。モバイルからマスまでのマーケティングの連動があって初めて,次世代マーケティングとしての強みが発揮されるのである。

マスマーケティングとの連動の必要性

 これまで本コラムでは時として,マスマーケティングに対し,ある意味,否定的な論調で述べてきた。しかし真の主旨はマスマーケティングの否定にあるわけではない。インターネット時代になり,垂れ流し的なマスマーケティングのみではユーザーの心に届かなくなりつつあること,そしてそんなマーケティングから脱却するために,モバイルが1つの重要なトリガーになり得ることを述べていきたかったのだ。

 モバイルマーケティングにはマスマーケティングは不要,ひいては“マスマーケティング全体の終焉”的な見解もたまに見受けられる。確かに,これまで語られてきたマスマーケティング至上主義の概念が終焉し,その質が大きく転換するということはいえる。しかし不要になるとは決していえない。

 その大きな理由の1つには,モバイルを活用したマーケティングには,マスマーケティングの持つ広範な認知性を持たないことがある。マスに負けない認知性を出そうとすると,頻繁にユーザーにメールなどを送らざるを得ず,単なる迷惑メールと捉えられかねない。

 モバイルマーケティングは,時や場所,ユーザーの感情などといったコンテクストを的確に捉えて行わなければならない。そのためにも,モバイルとマスの適材適所のマーケティング連動こそが重要なポイントになるのである。

モバイルとマスのマーケティングポジション

 ではマーケティングエリアの中において,モバイルマーケティングはどのようなポジションにあるのだろうか。ユーザーがある商品を認知してから購買に到るまでに触れるであろう媒体を,単純化してマッピングすると,モバイルマーケティングは以下のようなカバーリングをしていると想定できる。

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 このポジショングマップを見れば明らかなように,広範なマスユーザーへの認知のためのアプローチに強みを持ってきたマスマーケティングに対し,既に興味の対象が決まっているユーザーを,購買というアクションへと導くために最適なアプローチを取れるのがモバイルマーケティングだ。

 また別の言い方をすれば,“認知に関してはマスで行い,アクションへの導きはモバイルで行う”という,それぞれの強みを活かした適材適所のマーケティングを行うことがマーケティング全体の視点として重要になる。それこそがモバイルマーケティングによって可能になった付加価値部分だといえよう。これが広義の意味でのモバイルとマスのマーケティング連動の概念である。

モバイルとマスの直接連動マーケティング

 またマスマーケティングとの連動とはいっても,モバイルマーケティングは使うタイミングを誤ると,迷惑メール的な感情をユーザーに与え,逆効果を生む可能性がある。少ないアプローチで最大の効果を生むためにはどのようなモバイルマーケティングを行っていくべきなのであろうか。その解の1つとして,モバイルとマスの直接連動マーケティングが挙げられる。

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 これもまた,ある目的に向かうユーザーの流れで見ていくと分かりやすい。ユーザーはその目的に到るまで移動をしていく。その間,目的に対するコミット感は自然,高まっていくであろう。移動の際に,ユーザーはモバイル以外のさまざまな既存のマスマーケティング媒体に接する機会がある。そのコミット感の高まりと,移り変わっていく既存マーケティング媒体とが交わった部分でいかに効果的にモバイルマーケティングを打てるかが重要になってくる。それこそがモバイルマーケティングが単なる迷惑なものに成り下がるか,ユーザーに喜ばれるサービスになるかの分岐点となるのだ。

 例えば,自宅にいる時,行ったこともない店舗のナビゲーションサービスが提供されたり,頻繁にクーポン券が送られてきたら,それは間違いなくユーザーの不満を買う。しかしユーザーがその店舗の近くにいる時に街頭スクリーンからクーポン券を入手できたり,目的の商業施設内で店舗ナビゲーションサービスをモバイルで利用できればどうだろう。全く同じサービスを提供していたとしても,ユーザーの利便性や満足度は大きく異なってくる。そして購買までの最後のひと押しがぐっと容易になってくるのだ。

 しかしそのようなユーザーのコミット感を引き出すのはなかなか難しい。GPSなどの位置特定技術が完全に普及したとしても,いる場所とその時々の気持ちなどのコンテクストを常に引き出していくのは容易ではない。その時,ユーザーが移動しながら接していく既存のマス媒体がその強さを発揮する。

 マス媒体はワントウワン的なアプローチではなく不特定多数アプローチであるため,モバイルマーケティング特有の“ウザイ”感をいきなり与えることはない。しかもエリアを特定しているため目的を持ったユーザーを最初からある程度セグメントできるのである。

 そのマス媒体を見てモバイルからユーザーにアプローチしてもらう,もしくはマスマーケティングの中にモバイルを組み込んだアプローチをかけていく。この違和感のないマーケティング連動こそが,マーケティング全体としての効果をより高めていく。この狭義の意味でのモバイルとマスの連動マーケティング,つまりモバイルとマスとの直接連動が非常に重要なポイントとなってくるといえよう。

マーケターの手腕の問われる時代に

 このような形でマスからモバイルへとマーケティング全体をプランニングしていけば,購買までのひと押しが弱いマスと,広範なアプローチが苦手のモバイル双方の弱さを補完し合うことができるようになってくる。その連動をきっかけにしていけば,ちまたでよくいわれる“モバイルがマーケティングを変える”的な見方も実際のものとなっていくことであろう。

 となると……。実際に困るのはマーケターなのかもしれない。これまで,購買などの具体的なアクションまでは責任が取れない,もっと悪く捉えれば売れるか売れないかの責任までは持てない,としてきたマーケティング限界説的な言いわけはもはや通用しなくなる。

 モバイルマーケティング時代は,マーケターの手腕が問われる時代ともいえるのである。

[イエルネット 杉村幸彦,ITmedia]

関連リンク
▼ イエルネット

連載バックナンバー
▼ 第1回「到来する? モバイルバブルの崩壊」
▼ 第2回「見誤るな! モバイル時代のユーザーの捉え方」
▼ 第3回「どこへ行く? モバイルコンテンツビジネス」
▼ 第4回「成功の鍵は? モバイルマーケティングのキモ」
▼ 第5回「見極めよ! モバイルとマスの効果的マーケティング連動」
▼ 第6回「捉えよ!モバイルマーケティングの全体像と今後の方向性」

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