富士通、30%高濃度メタノール燃料を使った小型燃料電池
パッシブ型の燃料電池(DMFC)において、燃料の高濃度化の障害であったメタノールクロスオーバーを従来の10分の1に低減できる材料を富士通研究所が開発した。300ミリリットルの燃料で、ノートPCを8〜10時間駆動させることが可能になる。
富士通研究所は1月26日、30%の高濃度メタノール燃料を使った燃料電池の材料技術開発に成功し、携帯機器向けのプロトタイプを開発したと発表した。新材料の固体電解質材料を使い、メタノールクロスオーバーを10分の1に低減した。
これによりパッシブ型のマイクロ燃料電池の高容量化が可能となる。試作機では、厚さ15ミリの薄型システムを使い、15ワットクラスの高い出力を実現した。300ミリリットルの燃料で、ノートPCであれば8〜10時間の駆動が可能となる。
メタノールを燃料として使うマイクロ燃料電池(DMFC)には、高濃度のメタノール燃料をポンプを使って希釈して利用するアクティブ型と、濃度を変えずにそのまま利用するパッシブ型がある。小型化のためには、ポンプなどの補器が必要ないパッシブ型が適しているといわれている。
少ない燃料で長時間駆動を可能とするには、高いメタノール濃度の燃料に対応する必要がある。しかしマイクロ燃料電池の固体電解質材料として一般的なフッ素樹脂系の材料では、メタノール分子が電解質材料を透過してしまうメタノールクロスオーバーという現象がおき、発電中に燃料が失われて発電容量が下がったり、メタノールと空気の副反応により発電電力が低下するという問題があった。燃料の濃度が上がるにつれクロスオーバーが増加するため、クロスオーバーが起こりにくい材料が求められていた。
今回同社は、メタノール透過速度が低い芳香族炭化水素系の固体電解質材料の表面に、高活性な白金系ナノ粒子触媒を高密度に固定化したメタノールブロック性の電極触媒層を形成した発電ユニット(MEA)を開発。フッ素樹脂系材料を用いたものに比べて、トータルのメタノールクロスオーバーを10分の1に低減した。
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