800MHz議論再燃〜携帯周波数第3回検討会(2/2 ページ)
1.7GHz帯などを新たに携帯に割り当てるための検討会第3回では、各社が議論をぶつけ合った。議題としては含まれていない800MHz帯の扱いに議論が集中する一幕も。
新規事業者には何MHz幅が必要か?
800MHz帯に関する議論ではなく、周波数の利用拡大に関する本来の議論ももちろん交わされた。例えば、新規事業者にどのくらいの周波数幅を割り当てるべきかだ。
「新規のオペレーターが何ユーザーを収容しようとしているか次第で必要な周波数は変わる。ソフトバンクBBは1100万近くの固定回線ユーザーを持っており、(携帯でも)1000万規模のユーザーを収容したい。KDDIやボーダフォンに匹敵する規模を必要としている」とソフトバンクBBの孫氏。
1.7GHz帯と800MHz帯の両方の周波数を使うマルチバンドを主張する孫氏だが、「キャパシティとしては20MHz幅×2があれば、当初十分な競争ができる」とした。
イー・アクセスの千本氏は、「15MHz幅×2で十分。750万加入が可能だ」と、現実路線。1.7GHz帯の新規割当領域でまかなえるとする(11月4日の記事参照)。
もちろんキャパシティ以外に、周波数幅の大小は投資コストにも影響してくる。あまりに周波数幅が狭いと、基地局1つがカバーする面積(セルサイズ)を小さくして、周波数を再利用しなくてはならないからだ。
「(もらえる)周波数が小さいと、セルサイズを小さくしなければならない。投資コストもかかる。(既存の事業者と)同じ程度の周波数をいただくのが重要」(平成電電の佐藤賢治社長)
既存事業者に追加周波数は必要か?
新規事業者にどの程度の周波数を割り当てるかの議論と同時に、既存の事業者に追加の周波数を割り当てるべきかの議論も行われた。
「(KDDIは)これから2GHz帯を使う。今800MHz帯を使っているユーザーを全員2GHz帯に移しても、十分収まる。十分な周波数を持っている」というのが、ソフトバンクBBの孫氏の意見。
対して、1MHz幅当たりの加入者数やトラフィック量で判断するだけでなく、今後のサービス動向を見据えた判断が必要だと、既存各事業者は述べた。
「定額・ベストエフォートでも、ある程度の水準のサービスを提供すべき。そのためには周波数が必要」(KDDIの小野寺正社長)
「非音声は未知の領域。例えばパケット定額をやって料金競争になれば、いくらでも利用量(トラフィック)は上がる」(ボーダフォンの津田志郎氏)
実際のところ、どの事業者にとっても周波数幅が多すぎて困ることはない。基地局一つ当たりの収容人数やトラフィックに余裕が生まれるため、都市部など過密地域でも基地局を設置する数が少なくて済む。また、トラフィック当たりのコストを下げることも可能になる。
次回検討会では、1MHz幅当たりの収容人数などの情報を提出するよう既存事業者への要望も出されたが、地域や時間帯によっても状況は異なり、なかなか判断が難しいようだ。
マルチバンドは必要か?
ソフトバンクBBが主張するマルチバンド(複数の周波数を使ったサービス)についても、多くの疑問が出された。孫氏は、「ドコモも(800MHz帯と2GHz帯という)同じような考えを持っている。マルチバンドでより有利な投資コストになると考えている」と話すが、既存事業者の意見は“しかたなくマルチバンドを使っている”というものだ。
「有効利用の観点からは、細切れ(の周波数)よりもまとまって使ったほうがいい。マルチバンドのほうがよいということはなく、限られた周波数を有効活用するにはマルチバンドにするほうがよい、という話」(ボーダフォンの津田氏)
「まとまった周波数が取れるなら別だが、数多くのユーザーを収容する事業者は、複数の周波数帯を使わざるを得ない」(ドコモの石川氏)
さらに、「マルチバンドには3ドル程度の追加コストで対応できる」という孫氏に対し、「(KDDIは)同エリアの中で2G/800MHz帯を使うことになるので、ハンドダウン(2GHz帯から800MHz帯への切り替え)はできない(10月4日の記事参照)。RFチップは安価かもしれないが、ソフトウェアは別の話」(KDDIの小野寺氏)という反論も出た。
ドコモのPDCは2012年で使えなくなる?
「(2012年の)800MHz帯の再編に当たり、現行の端末は使えるのか?」。千葉大学の多賀谷一照学長補佐から、こんな疑問も提出された。対するドコモの石川氏の答えはこうだ。
「800MHz帯の再編時は、通信方式をPDCからW-CDMAに変える。(現行の端末は)全く使えなくなる。新たな端末を使うことになる」
つまり2012年を目処に、現在の50xや2xxなどPDCの携帯電話は使えなくなる。もっともドコモは、2005年末にはFOMAとPDC(ムーバ)の契約数が逆転し、2012年を迎える頃にはほとんどPDCの加入者は残っていないという移行イメージ図を提示している。
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