「どこまでやれば気が済むのか」〜機構設計者をぼやかせた「W22H」(2/2 ページ)
携帯の開発に付きものなのが、デザイナーと機構設計者間のバトル。いいものを作ろうという気持ちは同じだが、どこで折り合いをつけるかが問題。「W22H」でも、そんな攻防が繰り広げられた。
しかしこれも、基板やパーツを入れる上での苦労を生み出すことになった。「(斜めにカットすると)中に配置する基板は、斜めに対して逆らって作らざるを得ないし、(配置できる)体積も減ってしまう。部品の高さも、下は入るが上は入らない……といった制約が出てくる。そのレイアウトを適正化するのには苦労した」(下山田氏)
こうした機構のため、カメラやスピーカー、miniSDをレイアウトする位置も制限された。「端末上部はカメラとLED以外は何も置けないようなスペース配分になってしまった」(下山田氏)が、スピーカーを縦にして、ここに入れ込んでしまったという。「デザイン的にも無理のない処理ができ、開口部からの音抜けがよくなるという効果も出た」(下山田氏)。
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0.01ミリの攻防
デザイナーと機構設計者の攻防は、「少しでもコンパクトなボディに」というところでも勃発。「デザイナー側からもっと小さくしてとオーダーすると、設計側は“0.2ミリしか隙間がない”と。そんなにキリのいい数字が出るはずはない、本当に検討したなら0.25とか0.24とかいう数字が出てくるはず」(岩間氏)
「……」(下山田氏)
「デザイン側もCADでデータを確認できるので、“100分の2ミリくらいはつめられないのか”と迫った(笑)」(岩間氏)
「……(苦笑い)」(下山田氏)
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折りたたみ端末の倍くらい労力がかかった
ほかにも想像を絶するような苦労が下山田チームを襲った。ツートンのボディもその一つ。「普通の折りたたみ携帯なら、例えば背面部分のケースは上と下の2枚使いで2つ作ればいい。W22Hは、開けたところが黒、閉じたら赤にしたいというので、底面を構成するパーツがバッテリーカバーなどを入れると5つになる。上面を入れたらいったいいくつ作ればいいのか……。ちょっとまってよ、と」(下山田氏)。
液晶画面をサイドの部分まで回し込んでいるのも「製法的に難しい部分」(下山田氏)。柔らかいエラストマー素材を使ったminiSDスロットのフタも「本体と同じ色、質感じゃないとイヤだ、というところでケンカ(笑)」(岩間氏)。
「エラストマーに固い塗装をするとひび割れる。樹脂の塗装とは違う追従性のいい塗料を使い、色を合わせなければならない。いったいどこまでやれば気がすむのか……」(下山田氏)
「下山田さんにいえばやってくれるから……」(岩間氏)
「やらせるほうも大変だ(笑)」(下山田氏)
こんなやりとりが取材の間中繰り広げられていたが、相互の信頼は厚い。
W22Hを一見しただけでは、細かいこだわりは分からないかもしれないが、それも開発陣の狙いだ。「白鳥のようなもの。水面下で(開発陣は)バタバタやってるんです」(岩間氏)。
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裏面のくぼみの役割は?
W22Hをスライドさせた状態の裏側には、若干くぼんだ部分がある。デザイン処理かと思いきや、ここは「閉じたときにたわんだフレキシブルケーブルが収まる場所」だと下山田氏。
フレキシブルケーブルは、端末上下のインタフェースをつなぐ役割を果たすもの。W22Hは、スライド幅が大きいため、フレキシブルケーブルが移動する幅も大きい。「横方向にずれると断線の恐れがあるため、できるだけ素直に上下にしか動かないよう、規制をかけている」(下山田氏)。
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