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誰1人が欠けても作れなかった〜「PENCK」完成までの道のり(2/2 ページ)

au design projectのBREW+WIN端末として登場した「PENCK」(ペンク)。クールなたたずまいの裏には、さまざまな技術的チャレンジがあった。

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 端末の端の部分から、だんだん歪みのないメッキ表現ができていったが、真ん中は面が波打ってどうしても“ゆず肌”になってしまう。「これなら──といって何回もサンプルを持ってきてくれた。でも『確かに前回のよりは良くなっているけど、このへんにまだゆず肌が残っている』と。こうしたやりとりを、これでもかというくらい延々と何十回も繰り返して、最後の最後に滑り込みセーフでパーフェクトなものができあがった」。仕上がるまでには小牟田氏も日立の技術陣も、トウプラスのある秩父に何度も足を運び、研究所のある中国にも行ったという。

 「金属メッキが仕上がった中国で、関わった人たちと軽い打ち上げをやった。このときに、金属メッキの現場を仕切っていた高山さんが(トウプラス技術部の高山幸一課長)、『お客さんに対していいもの作りたいっていうのに、俺、しびれちゃってさ。俺の職人人生、賭けちゃったよ』と言ってくれた。気持ちが伝わったんだなと思って、このときは泣きそうになった」

カスタマイズを楽しむ携帯に

 PENCKは「特別なデザインだと主張するものではない」というのが、サイトウマコト氏と小牟田氏の共通した考えだった。

 「もっと深い部分で、人の気持ちや人と物との関係を考えるからこそ、こういう(シンプルな)デザインが必要だと考えていた。さりげなく近くにいてくれて、決して主役じゃない。どんなシールを貼ったり、ストラップを付けたりしても成立する、いわばカンバスのようなもの。ユーザーが楽しいと思う世界観でつきあえるものを提供してあげるのが僕たちの務めじゃないか」

 背面がシンプルなのも、完璧な表面処理を施したのも、こうした考え方に基づいたものだと小牟田氏。「画面のデザインも、凝ったアーティスティックなものではない。さらりとしていながらも、きらっと光る一発のセンスに頼るような見せ方。(サイトウマコト氏が)プロ中のプロという表現を見せてくれた」

 内蔵の着信音は「メロディを排除したほうが、PENCKの純粋さが際だつ」ということから、音階を感じさせない音を入れている。内蔵の着信音を作曲したのは、カシオ日立でカシオ端末の戦略推進グループリーダーを務める濱島秀豪氏だ。「カシオ端末に内蔵される着メロは、よくあるクラシックに頼るのではなく、彼がオリジナルで作ってきた。さまざまなベクトルの音をまんべんなく出せる人で、彼を使ったら面白いと思った」

 人が話す様子をイメージした着信音や、近未来風の開閉音やシャッター音など、一風変わった音がプリセットされている。

トータルで置いてあるたたずまいを大事にしたかった

 PENCKは、充電台やACアダプタ、ステレオイヤホンといった付属物が白で統一されている。特にACアダプタを白くするのは、携帯では例のない試みだ。「トータルで置いてあるたたずまいを大事にしたかったので、白か透明で作れないかと検討してもらった」

 最初はNGだったが、「今後au端末で使う標準品も、意図を持ってきれいに作っていきたいと考えている」と説得したところ、OKになったという。「黒にすると、完成度がイマイチ。白にすることで、愛情を持って作っている感覚が伝わった」


 充電台の横にあるカバーを外すと、充電しながらPCとつないでデータ通信を行える。「WINユーザー向けなので、こうした仕組みも採り入れた」(小牟田氏)。充電台の下には放熱用の穴も用意される

すべてが完璧でなければならない、箱根細工のようなもの

 PENCKの開発は「この部分が一番大変ですというのはない」と小牟田氏。「どこかに四角い部分が出てしまうので、あきらめてください──というデザインじゃない。すべてがパーフェクトでなければならない箱根細工のようなもの」

 この形を表現するためのテクノロジーと、それを実装するエンジニアリング──技術の素晴らしさがこの形を作ったと話す。

 「既存の技術では、ここまでパーフェクトにはできなかった。日立の上杉さん、森田さん、プロペラの山田さんと僕、そしてこの端末開発に関わったすべての人たち──。誰か1人が欠けても、絶対に作れなかったし、根性がなければできなかった。チームワークがこれを成し得た」

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