各社が進める次世代3G、秒読み段階へ
現行の3Gに続く通信方式として、EV-DOやHSDPAなど3.5G、そしてOFDMを組み込んだ3.9Gなどの技術が見えてきた。最新通信技術の概要と各社の動向を概観する。
KDDIがEV-DO Rev.A導入と「ウルトラ3G」構想を打ち出したことで、各社の“ポスト3G”に向けた取り組みが見えてきた。スーパーからウルトラ、そして4Gまで──。“3G以後”の通信方式と各社の動向を概観しておこう。
第二世代(2G)から第三世代(3G)へ
現在携帯電話は、第二世代(2G)から第三世代(3G)へと移り変わろうとしている。大きなくくりでいえば、デジタルの2GからCDMAベースの3Gへ移行が進みつつある。
ドコモでいえば、PDC(ムーバ)からW-CDMA(FOMA)へ。KDDIの場合、cdmaOneからCDMA 1Xへの移行がそれだ。
さらに、3Gの中でもパケットデータ通信に特化した通信方式が開発され、3.5Gという呼び方で導入が進んでいる。KDDIはCDMA 1x EV-DOを「CDMA 1X WIN」というブランド名で導入済み。ドコモはHSDPAを2006年にも導入する予定で(2月16日の記事参照)、ボーダフォンも試験を始めている(2月14日の記事参照)。
各社の無線通信方式の動向をまとめたのが下表となる。
事業者 | 3G(現状) | 3.5G | 〜 | 3.9G | 4G |
ドコモ 導入時期 | W-CDMA | HSDPA | スーパー3G | 4G | |
商用化済み | 2006年 | 〜2010 | 2010 | ||
KDDI 導入時期 | CDMA 1x | 1x EV-DO | EV-DO Rev.A | Enhanced cdma2000 | ー |
商用化済み | 2006年 | 2010年 | ー | ||
ボーダフォン 導入時期 | W-CDMA | HSDPA | ー | − | ー |
商用化済み | 未定 | ー | ー | ー |
ドコモのHSDPAやKDDIのCDMA2000 1x EV-DOは、便宜的に3.5Gと呼ばれる。いずれも利用者の電波状況に応じて通信を制御し、基地局1つ当たりの合計通信速度(セクタスループット)を向上させる仕組みを採る。HSDPA(5MHz幅)では最大14.4Mbps、EV-DO(1.25MHz幅)では最大2.4Mbpsの下り通信速度を持つ。
KDDIが2006年に導入するEV-DO Rev.AはEV-DOの改善版で、物理層の改良などにより下り速度を最大で3.2Mbpsに、上り速度を最大1.8Mbpsにアップさせる(2月13日の記事参照)。Qualcommのベースバンドチップでいうと、CPU速度もアップした「MSM6800」がRev.Aに対応している(6月2日の記事参照)。
新規参入──各社のポスト3G展開
2005年から2010年にかけて、3Gの進化版が次々と登場する。携帯事業への新規参入を目指す各社の場合、参入タイミングによって通信方式が変わる。
ドコモやKDDI、ボーダフォンのいずれ標準的な技術を使っているため、新通信方式の導入タイミングは端末の無線チップセットや、基地局側の設備の開発に依存する。例えばHSDPAは、スウェーデンのEricssonや加Nortel、米Qualcommなどが手がけており、導入準備が整うのは2006年あたりだ(6月2日の記事参照、3月24日の記事参照)。
このため、2006年を目処に参入を進めるイー・アクセスが当初予定している通信方式はW-CDMA/HSDPA。その後、WiMAXのモバイル版であるIEEE802.16eの開発を待って、16eも導入していく計画だ(4月8日の記事参照、5月23日の記事参照)。
参入が2007年以降にずれ込みそうなソフトバンクは、HSDPA以降の技術を採用する可能性が出てきている(6月2日の記事参照)。Nortelなどが主張する「HSOPA」(High Speed OFDM Packet Access)だ(5月30日の記事参照)。HSDPAにOFDMを組み合わせた方式で、ドコモが進めるスーパー3Gに近い方式と見られる。
ウルトラ3Gの位置づけは?
ここまでに挙げたのは、いずれも携帯電話端末と基地局との間の通信──無線通信方式を指す。しかし、3Gといった場合は無線通信だけでなく、基地局から後ろの交換システム(コアネットワーク)も規定している。
例えば3Gは、5つの無線方式と3つのコアネットワークをそれぞれ組み合わせて構築する(3月4日の記事参照)。無線方式としては、W-CDMAやcdma2000、EDGE(UWC-136)、TDD(中国のTD-SCDMAなど)、DECT+(欧州コードレス用のDECTベース)の5つ。コアネットワークは、GSMで使われている「GSM-MAP」、cdmaOneで使われている「IS-41」、そしてIPベースとなる。
例えばドコモのFOMAならW-CDMAとGSM-MAP、KDDIの1Xならcdma2000とIS-41という組み合わせだ。
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KDDIが言う「ウルトラ3G」は、この無線方式とコアネットワークの両方をまとめて指す言葉だ。無線方式に次世代CDMA(Enhanced cdma2000)を使い、コアネットワークにはMMD(MultiMedia Domain)準拠のIPv6ネットワークを使う。このコアネットワークは、次世代CDMA以外に無線LANやADSL、FTTHなどの各種通信方式もつながるのがポイント。「さまざまなネットワークのシームレス化を図る」(KDDI)ところに、ウルトラ3Gの重点が置かれている。
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