「燃料電池はケータイのこれからに“must”な技術」――KDDIの村上氏:FC EXPO 2006
KDDIの村上執行役員は1月26日、FC EXPO 2006で基調講演を行い、今後の携帯電話には燃料電池の搭載が必須、と話した。
通信の高速化と端末の高機能化が進むにつれて、携帯電話の消費電力は増大し続けている。この問題は、常に端末メーカーを悩ませてきた。リチウムイオン充電池の性能向上よりも速いペースで必要な電力量が増えているため、300〜400時間程度の待受時間があっても、通信を行ったり、搭載されているさまざまな機能を利用すると、2時間から4時間ほどでバッテリがなくなってしまう。4月1日から本放送が始まるワンセグや、秋にサービスが開始される地上デジタルラジオなど、今後登場する新サービスや新機能への対応も考慮すると、さらにバッテリの持ちは悪くなることが予想される(ちなみに「W41H」は最長3時間45分、「W33SA」は最長2時間45分のワンセグ視聴が可能)。
KDDIの村上執行役員は、今や社会のインフラとして活用されている携帯電話が、頻繁に電池切れを起こさないですむように、長時間のバッテリ駆動を可能にする燃料電池には大いに期待しているという。氏は「燃料電池は、ケータイのこれからに“much better”なものではなく“must”なものである」と話し、携帯電話への燃料電池搭載は必須であるとの考えを示した。
KDDIは2005年10月4日のCEATEC JAPAN 2005で、東芝および日立製作所が試作したパッシブタイプのDMFC(Direct Methanol Fuel Cell:直接メタノール型燃料電池)を内蔵する携帯電話を公開している(2005年10月4日の記事参照)。講演の中でもこの2つの端末を「まだ少し厚みがあるが、製品化は手の届くところまで来ている」と紹介。最初に燃料電池を携帯電話に搭載する話を持ちかけた数年前には、けんもほろろに断られたエピソードを交え、東芝と日立にさらなる奮起を促した。「今年の夏前くらいまでに、実用レベルの製品を提示してほしい」(村上氏)
このように、すぐそこに迫っているように思える燃料電池搭載ケータイだが、技術的な問題以外に、いくつかの課題がある。例えば、燃料の販売規制の問題。メタノールは、消防法や劇毒取締法により取り扱いが制限されていて、今のままではコンビニなどで売ることはできない。また航空法施行規則により、爆発物に該当するメタノールを航空機内へ持ち込むことも現状では不可能だ。燃料やカートリッジの標準化がまだ完了していないという点も不安要因の1つ。さらに、米DMFCが米国とオーストラリアで燃料電池の基本特許を取得しており、製品を発売すると特許侵害で訴えられかねないという事情もある。ただ、「2007年ごろには規制も緩和され、多くの問題は解決するだろう」と村上氏。見通しは明るいという。
最後に「これは個人的な見解だが」と前置きし、「理想をいえば、メールや通話だけなら1週間程度利用でき、ワンセグも24時間くらい視聴できる電池がほしい」と話した。それを実現するためには、現在一般的に利用されているリチウムイオン充電池の10倍程度の容量が必要になる見込みだが、「是非とも実現してほしい」と期待をにじませた。
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