きちんと使えるものを、適切な時期に──カシオが考える腕時計型デバイスの未来:携帯+腕時計の未来を探る(3)(2/2 ページ)
カメラ、MP3プレーヤーなど、腕時計型デバイスの開発で実績があるカシオ計算機は、携帯電話との連携製品について、どんな考えを持っているのか。
ウォークマンへの挑戦──腕時計型MP3プレーヤー「WMP-1V」
同社はリストカメラに先駆けて、腕時計型のMP3プレーヤーも発売している。その当時の音楽プレーヤー市場といえば、「まさにウォークマンの独壇場だった」と奥山氏。だがカシオには時計分野で“スポーツギア”という得意分野があり、“歩きながら、あるいはスポーツしながら音楽を聴く”というスタイルがあるのではないかと考えた。
実際、同社の腕時計型MP3プレーヤーは、歩きながら音楽を聴いても音飛びせず好評だったが、唯一の泣きどころは、腕から伸びるヘッドフォンのコード。技術的にはワイヤレス化も可能であったはずだが、コードを採用したのにも理由があるという。
「デジタル音楽プレーヤーが出たばかりの頃は、アナログの音源に比べて音質は劣化するものという認識がありました。また、大型のヘッドフォンを使うユーザーもいたはずで、音質へのこだわりを持とうとすると、(ノイズの混入する)ワイヤレスは選択できなかったのです」
ウォークマンが、ポータブルプレーヤー市場で主役の座をiPodに奪われた今、カシオが腕時計型MP3プレーヤーでiPodに挑戦するという考えはないのだろうか。Bluetooth対応のヘッドフォンが続々と登場する昨今なら、技術的なハードルはそれほど高くないと思われる。
この問いに奥山氏は「iPodがこれだけ普及し、薄く小さくなっている中で、新しいハードウェアで勝負するのは難しい」と答えた。
BT Watchへの期待は?
奥山氏は、シチズン時計の「i:VIRT」(6月30日の記事参照)やSIIの実験機(7月5日の記事参照)の現状を認識した上で、同じような機能に留まる商品を出すつもりはないという。
「腕時計と携帯電話が共存して発展するという考え方は、シチズン時計さんやSIIさんとまったく変わりません。ただBluetoothという通信手段がお客様にとってどうなのかと考えると、“世界初”にこだわる必要はないというのが私たちの考えです」(奥山氏)。現状ではBluetooth自体が一般ユーザーに深く浸透しておらず、対応する携帯電話も少ないことから、新商品の投入については投入時期や機能を慎重に検討するとした。
しかし、同社が腕時計型デバイスの開発を止めているということではない。実際、2004年には非接触型ICを埋め込んだGショックを商品化している。
「きちんと使えるものを、それにふさわしいタイミングで提供するということを念頭に、現在も開発を進めています。ぜひ、ご期待いただきたいと思います」(奥山氏)
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