ローエンドモデルもデザイン重視に――海外大手メーカーの新モデル:ITU TELECOM WORLD 2006
全世界における携帯出荷台数は10億の大台に達しようとしている。この成長を牽引するのは、インドや中国、ブラジルなど経済発展が著しい新興国向けのローコスト/ローエンドモデルだ。
中国の中小メーカーだけでなく、世界シェア上位の大手メーカーが新興市場向けのローコストモデルの開発に力を入れている。ITU TELECOM WORLD 2006の会場で、大手メーカーの動きを追った。
Motorola、電子ペーパー採用の「MOTOFONE」
Motorolaは、11月末からインドで先行発売している(7月26日の記事参照)GSM対応モデル「MOTOFONE F」とCDMA対応モデル「MOTOFONE Fc」の2機種を展示していた。
MOTOFONEは、厚さ9ミリのスリムなストレート端末。低価格を実現できたのは、機能を通話とSMSに絞り、ディスプレイにE Ink製の電子ペーパーを採用したからだ。電子ペーパーは構造がシンプルで消費電力が小さい。視野性がいいことから電子ブックリーダーなどにも採用されており、携帯向けサイズで低解像度であれば、コストも大きく下げられる。
また、液晶とは異なり上下左右の角度を変えても、明るいところや暗いところで文字がよく見える。最新技術をハイエンド向けに利用するのではなく、ローコスト化を図るために採用する動きは興味深い。
安くともデザイン重視がポイントに
MOTOFONEが厚さ9ミリのスリムボディで登場したように、ローコスト/ローエンドモデルにはスタイリッシュなモデルが増えている。画面が低解像度でカメラの画質はVGA以下と、スペック面で特筆すべき点はないものの、デザインは一昔前のローコストモデルとは大きく異なっている。
例えばMotorolaは、折りたたみ型のローコストモデルを「Motorola V66」などの伝統的なコンパクトスタイルから、「RAZR」に変更した。価格も100ドル以下に抑えることで、ローコスト市場でのプレミアムモデルを目指している。また、オーソドックスなストレート端末も、側面の素材を石材調にすることで“安っぽさ”を排除した。
ローエンド端末の女性向けモデルを投入したのはSamsungだ。同社の女性向け端末はこれまで、上品なデザインを取り入れた高価格帯のみがラインアップされていたが、学生などの若い女性が気軽に購入可能な「SGH-X520」を用意した。
VGAカメラ、128×160ドットの1.9インチディスプレイ、FMラジオ、赤外線通信などベーシックな機能を備えるSGH-X520は、化粧品をイメージしたという外装で“おしゃれ端末”を狙うという。発売は2007年上半期を予定している。
ローエンド市場でも大手メーカーによる寡占化が始まるか
ローコスト/ローエンドモデルは中国メーカーなどが得意としているが、中国国内での販売が不振なことから海外への輸出が増える傾向にある。しかし新興国市場では、大手メーカーがしっかり作りこんだローコストモデルが支持され始めている。
高嶺の花だった大手メーカーの端末が手ごろな価格で購入できるようになると、同じ価格帯にある無名メーカーの端末を選ぶユーザーが減少し、大手メーカーによる寡占化が進むことも予想される。
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