“全部入り”のハイエンド端末がほしい──「904SH」:ITmediaスタッフが選ぶ2006年のベスト端末(編集部園部編)
携帯を選ぶときに重視するのは、やはりスペックだ。デザインも重要ではあるが、見た目は我慢できても利用できない機能やサービスがあるのはストレスになる。そうなると、やはり望むのは“全部入り”ケータイだ。
順位 | 端末名 | 概要 |
---|---|---|
1位 | 904SH | VGA液晶、光学2倍ズームAF付き3.2メガピクセルカメラ、GPS、6軸モーションコントロールセンサー、FeliCa、Bluetooth、国際ローミング |
2位 | W44S | デュアルオープンスタイル、ワンセグ、デジタルラジオ、16:9の3インチワイド液晶、FeliCa |
3位 | 911SH | サイクロイドスタイル、ワンセグ、3インチワイド液晶、Felica、Bluetooth |
もっとも全部入りに近づいたハイエンド端末──「904SH」
ソフトバンクによるボーダフォンの買収という、センセーショナルなニュースが報道される直前の2月28日に発表され、ボーダフォンの津田志郎元会長が「本格的な成長に向けた正念場」と位置づけていた、2006年春の3G端末のフラッグシップモデルが「904SH」だ。
後に発表される、サイクロイド機構を搭載したワンセグ携帯「905SH」とはほぼ同時期に開発された端末ながら、905SHが“アクオスケータイ”という、誰でも知っている家電の有名ブランドを冠し、新生ソフトバンクの象徴として記憶される端末となった一方、904SHは、ボーダフォン最後のハイエンド端末となった。
この904SHを、2006年のベスト端末に選びたい。理由は簡単だ。904SHが、もっともハイエンド端末らしい“全部入り”に近い端末だったからだ(3月1日の記事参照)。
904SHの最大のポイントは、国内の携帯電話として初めて解像度が480×640ピクセルのVGA液晶を搭載した点。一般的な携帯電話が採用していたQVGA(240×320ピクセル)の4倍の解像度を持ち、1ピクセルが小さいため表示がとても精細だったため、写真がとても美しく表示できる。またナビアプリを使用すると、細かな地図でも見やすく表示可能で驚いた。
ボーダフォンライブ!の公式サイトをブラウズしたり、メールを読み書きする際などにフォントを小さくして1画面あたりの情報量が増やせる点が、細かな文字が好きだった筆者は重宝した。また当時のボーダフォン端末にはPCサイトブラウザ(フルブラウザ)が搭載されていなかったが、jig.jpの「jigブラウザ」との組み合わせは、当時は“携帯最強”といえるWebブラウズ環境であり、もはやQVGA環境には戻れないと思ったほどだ。
さらに、904SHはGPSと6軸のモーションコントロールセンサーを搭載しており、ナビゲーションデバイスとしても非常に強力だ。プリインストールの「ゼンリンいつもナビ」ではなく、地図の美しさでVGAに対応した「NAVITIME」を利用していたが、モーションコントロールセンサーが搭載されている904SHでは、ナビゲーション中に自分が向いている方向を上に表示するヘディングアップが使える。
FeliCaも12月2日から晴れてモバイルSuicaに対応し(12月2日の記事参照)、首都圏では利便性が他キャリアの端末と同等になったほか、顔認証などのセキュリティ機能、Bluetoothなど、およそハイエンド端末に入っているべき機能はすべて搭載していた。もちろんボーダフォンが得意としていた国際ローミングにも対応。海外取材にもこれさえあれば困ることはなかった。
カメラはソフトバンクモバイルになって「910SH」が登場したことで最高スペックではなくなったものの、光学2倍ズームのAF付き3.2メガピクセルカメラは十分高機能だ。910SHは、光学3倍ズームの5メガピクセルAFカメラを搭載した点が確かに魅力だが、こちらはGPSやモーションコントロールセンサーは搭載しておらず、さらに日本国内専用モデルとなってしまったため海外では使えない。
デザインの面では、形状、カラー共にもう少し何とかならなかったかと思う部分はあるのだが、やはり全部入りに最も近づいたのは904SHであり、904SHこそが今年のベスト端末にふさわしい。
au端末にしては珍しい高機能モデル──「W44S」
第2位には、その個性的なスタイルの中に、ワンセグからデジタルラジオ、FeliCa、GPS、3メガピクセルカメラ、128kbpsのHE-AACにも対応した最新のau Music Playerなどを搭載したauの「W44S」を選ぶ。これも理由は単純で、ほしい機能がもっともたくさん搭載されているからだ。
auでは、開発段階から綿密にセグメンテーションを行い、かなりターゲットユーザーを明確にして、メーカー間での差別化を行うことが多い。そのため、ある機種にはこの機能が搭載されているが、この機種に用意されている機能は別の機種にはない、といったことがラインアップの中でよく起こる。
この戦略は、シリーズのラインアップの中で“かぶる”端末がなくなるというメリットはあるものの、逆に全機種に共通して搭載されている機能が少なくなるという問題もある。ハイエンド端末であってもFeliCaを搭載していなかったり、最新サービスが全機種でサポートされていなかったり、といったことがau端末では起こりうる。
しかしW44Sは、au端末には珍しくBluetooth以外の機能がほぼ網羅されている。EZニュースフラッシュやEZケータイアレンジ、ビデオクリップ対応のLISMOなど、テレビ電話以外の新サービスも利用可能だ。
ダイヤルキーが操作できる状態でディスプレイを横向きに開く“デュアルオープンスタイル”は賛否両論だが、個人的には大きく張り出したヒンジ部のデザインにもガジェット的な魅力を感じ、特異なスタイルながら一目ぼれしてしまった。
使いやすさの追求から生まれた独特の回転機構が魅力──「911SH」
第3位に選んだのは、アクオスケータイ2nd modelこと「911SH」だ。こちらは初代アクオスケータイの905SHから大きな進化を遂げたため、2nd modelをチョイスした。
911SHはいわゆる“全部入り”端末ではないが、どうしたら横画面がもっとも使いやすくなるかが考え抜かれたサイクロイド機構搭載端末が、さらに進化た点に感銘を受けたのが選出のポイントだ。
携帯電話でワンセグを視聴する際に、いかにスムーズに画面を縦位置から横位置に変えられるか、という点は重要な要素になる。初期のワンセグ端末は回転2軸型が中心で、全画面でワンセグを見るための「ワンセグ視聴モード」は「携帯電話モード」とは完全に切り替えて使うものだった。大きな画面でワンセグを見ようとしてディスプレイを横向きにすると、ダイヤルキーや十字キーはディスプレイの裏側に隠れてしまう。ボリュームやチャンネルなどのテレビ操作を行うためのボタンを側面に多数用意したモデルなども登場したが、やはり小さなボタンは押しにくい。
しかし、サイクロイド機構は操作性が抜群によく、とても分かりやすい。電話として利用する状態から、ディスプレイだけを横向きにできるので、ワンセグ視聴時もダイヤルキーや十字キー、ソフトキーは通話やメールを送受信する際と同様に、そのまま使える。机に置いても、片手で持っても、どんな状態でもユーザーが使いやすいことを考え抜いて開発されたものだけに無理もなく、完成度の高さは群を抜いている。
スペック面では、GPSやモーションコントロールセンサー(6軸でなくとも、電子コンパスになる地磁気センサーくらいはほしい)を搭載していないこと、国際ローミングに対応していないことなどが惜しまれるほか、スピーカーがモノラルになってしまったのがとても残念だ。ただFeliCaやBluetoothなどは搭載しており、日常の利用にはそれほど不自由を感じない。
正直なところ、911SHにGPSが入り、国際ローミングに対応していたら、文句なく2006年のベスト端末に選んでいたと思う。2007年には、904SHと911SHを融合したような、真のハイエンド端末の登場を期待したい。
番外編:デザイン面で気になった端末
- 美しきマジョーラ──「W43H」
日立製作所製のWIN端末「W43H」は、ベスト3には挙げなかったものの、やはりワンセグやGPS、FeliCaなど、欲しい機能を幅広く搭載しており、気になった端末の1つだ。また、その機能もさることながら、デザイン面にも目を引かれた。見る角度や光の加減によって表情を変える塗料「マジョーラ」を採用したミスティックバイオレットは、手にとって思わず見入ってしまったし、香水瓶のようなフロストガラス調のメローホワイトもとても美しいと感じた。センシアルブルーも透明感のあるコバルトブルーとマットなブラックボディのコントラストが映える。
- メタルの質感が好印象──「M702iS」
言わずと知れたスリムな携帯“MOTORAZR”こと「M702iS」は、まだ実物をじっくり使ったわけではないうえに、機能面ではかなり制限があるため番外編にとどめておくが、そのボディの質感はかなり気に入った。外装はほとんど樹脂製の携帯電話の中にあって、M702iSのメタルボディは、手に持ったときの感触がかなりいい。やはり金属には樹脂では実現できない“温度”というか手触りがあり、とても魅力的だ。ダイヤルキーもステンレス製で、金属好きにはたまらない端末だ。
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