ワクワク感のある製品を開発するのが我々の役目──ソニー・エリクソン 高垣浩一氏:ワイヤレスジャパン2007 キーパーソンインタビュー(2/2 ページ)
BRAVIAケータイやウォークマンケータイなど、ソニーグループのブランドや技術を生かした端末を続々と投入するソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ。同社のこれからの端末開発を、常務取締役の高垣浩一氏に聞いた。
ソニーとEricsson、それぞれの強みを持つソニー・エリクソン
ITmedia ソニー・エリクソンとしては、ワールドワイドで非常に好調のようですが、ソニーの良さ、エリクソンの良さとはどういったところにあるのでしょうか。
高垣 2001年10月にジョイントベンチャーを設立してもうすぐ6年になります。今はお互いのいいところがうまく融合されてきているのだと思います。最初の頃は両社とも赤字で、こんな状態で長続きするのかとよく言われましたが、今の時点ではうまく回っていると思います。
ソニーはデザインやAV系の技術を持っており、Ericssonは高い通信技術を持っていました。また一緒になって分かったのですが、Ericssonはサプライチェーンを含めた全世界に展開するプロセスやシステムをしっかり持っていました。これらの要素がうまくかみ合い、いい商品をタイムリーに全世界で販売することができるようになっています。
製品開発にこだわり、できあがった端末を、100カ国以上に同時期に世界に届けられるのはSony Ericssonだからこそです。Ericssonが通信インフラを手がけていること強みですね。
ITmedia Ericssonの通信インフラにまつわる強みとはどんな点でしょうか?
高垣 各地域の法規制にとても強いという点があります。GSMやUMTSでちゃんとした基準を満たしているか、といったノウハウには長けています。ソニーではそれらの試験を行うのは大変で、Ericssonと組んだことで、そのあたりがすんなりと進むようになったのは大きいです。Ericssonは基地局を作っており、知識が豊富です。ソニー出身の人間からすると感心するところでもある。Ericssonは先々の通信方式についても詳しいし、通信事業者との太いパイプを持っているのも強みです。
ITmedia では、ソニー・エリクソンとして弱みはどんな部分でしょう。
高垣 国内ですと、まだまだ他社に見劣りしている部分はあると思います。商品力やコスト、発売時期など、まだまだ頑張らなくてはいけない部分は多いと感じています。
ITmedia ソニーのグループ力をさらに生かした端末は登場するでしょうか。
高垣 それは今後も継続してやっていくつもりです。ソニー系のデバイス、液晶やカメラなどのコラボレーションだけでなく、将来的には家庭内のネットワークとの融合などもテーマですね。
携帯電話で撮影した画像を、BRAVIAで見るといった世界。そのときに重要になってくるのが『簡単』というキーワードです。いまでもそういったことはできますが、普及するにはいかに簡単に使えて、ユーザーにとって魅力ある世界が描けるかが重要になってくると思います。
ITmedia 携帯電話を中心とした魅力ある世界はどれくらい先になるでしょうね。
高垣 意外と早いかもしれません。ただ、技術ができたからといて、すぐに携帯電話に載せても仕方がないと思っています。それを使って何をするかをユーザーに分かりやすく提示できなくてはいけません。Bluetoothを考えてみてください。海外ではハンズフリーシステムとして使われていますが、日本ではまだまだ普及していない。もう少し使い方を変えないと、普及していかないのではと思っています。
ITmedia 御社のBluetooth戦略は、どんな位置づけになっていますか。
高垣 頑張っていかなくてはいけないと思っています。海外ではハンズフリー用途で普及しています。しかし日本では音楽携帯に注力しているので、今後はBluetoothを活用したワイヤレスイヤフォンなどを手がけ、世界観を広げようと思っています。
共通プラットフォームは使う期間によって効果が変わってくる
ITmedia 端末の低コスト化への取り組みはどのようになっていくのでしょう。
高垣 製品作りの面では、1つの端末ですべての機能にこだわってしまうと大変なことになってしまいます。カメラにこだわった場合、別の機能はスタンダードな仕様にとどめるといったバランス感覚でコストを抑えることが重要になってきます。
もう1つは、Sony Ericssonとしての規模感によって、グローバルな部材調達を行うことも低コスト化には重要だと考えています。
あとはいかに開発費を下げるかが、設計部門の課題です。劇的にコストダウンできる部分はもうコストダウンが進んでいますから、あとは細かなところの積み重ねでコストを下げて行くしかありません。またキャリアが主導する共通プラットフォームも効果があると思います。
ITmedia 共通プラットフォームを採用することにより、本当にコスト削減はできるものなのでしょうか。
高垣 メーカーが個別に開発していくよりは開発コストは減っていくと思います。ただ、どれくらい減らせるかは、どういうプラットフォームをつくるかによって変わってくるでしょう。また、プラットフォームをどれくらいの期間使うかによっても効果が違ってくるはずです。1年なのか3年なのかで、大きな違いがあるはずです。
ITmedia 長期間同じプラットフォームを使うことが前提となると、メーカーとしては今まで以上に、ある程度の期間をみて、端末を開発していく必要があるのでしょうか?
高垣 そうですね。いかに先読みできるかがカギになっていきます。そのあたりは、さらに厳しくなっていくと思います。
カメラの画素数を強化しなくてはならなくなった場合、今ある部材を活用するのか、デバイスまでを含めて開発するかには違いがあります。2年後、3年後携帯端末がどうなるかをにらんで、今から仕込んでいかないといけませんから、そういった開発や投資は当然必要になってきます。3年後に出す端末が、そのときの需要に合っているかどうか。ある程度、先読みして投資していかなくてはなりません。
国内向け製品と海外向け製品の融合は?
ITmedia 現在、御社では海外向けと日本向けの製品がそれぞれ別にあるわけですが、日本の端末がを海外に展開したり、海外向けのすばらしい製品が日本に入ってくることはないのでしょうか。
高垣 今は海外向けと国内向けの端末は別々に開発しています。ただ、日本でヒットした端末をグローバルモデルとして展開するのはあり得ると思っています。高画素カメラやワイド液晶、モバイルテレビといったものがグローバルに広がる可能性は十分にあり得ます。そのため、日本が技術的にグローバルのリーダーにならなくてはいけないという自負はあります。
逆のケースも考えなくてはいけないのかなという意識はあります。海外向けのシンプルなものとか、スタイリッシュなものを将来的には日本に持って期待という希望はあります。ただ、通信方式や周波数、日本語UIもあり、すぐには持って来ることは難しい。採算の考慮した上で、検討しなくてはいけないと思っています。
ITmedia 最後に、読者に向けてメッセージをお願いします。
高垣 使いやすさなのか、デザインなのか、機能なのか、いずれにせよ、ワクワク感のある製品、“WOW!な製品”を出していくのが我々の役目だと思っています。
担当者すべてが面白い商品を出したいと考え、日々仕事をしています。この点は、ソニー・エリクソンの一番のモチベーションになっていると思います。これからも良い製品を作り、きちんとユーザーに伝えるということに邁進していこうと考えています。
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