手のひらに世界初の「BRAVIA」を――“BRAVIAケータイ”「SO903iTV」が生まれるまで:開発陣に聞く「SO903iTV」(3/3 ページ)
ソニー・エリクソン製の「SO903iTV」は、BRAVIAブランドを冠した初の携帯電話だ。なぜ“BRAVIA”なのか、他社のワンセグケータイとの違いはどこにあるのかを開発陣に聞いた。
“軸ずらし”が生まれた瞬間
ワンセグやフルブラウザの普及で、携帯電話でも横向き画面のニーズが増えている。回転2軸ボディを採用する端末では、卓上ホルダを横置き用のスタンドにしているものも多い。また、AQUOSケータイのようにサ、イクロイド機構により画面のみを横向きにする端末も存在する。
六角形のフォルムを持つSO903iTVは、独自の形状を生かして単体でも安定して横置きできる回転2軸スタイルを採用した。ディスプレイを回転させる軸がわずかに左側(横向きにした場合の下側)にずらしてセットされており、ディスプレイを表にすると六角形を構成する2辺が平坦になる(1月29日の記事参照)。
この機構により、ディスプレイを開いて横置きにした際、端末を斜めに置けるようになっている。この軸ずらし機構はどのような経緯で生まれたものだろうか。
「どうすれば横長画面のワンセグを快適に見てもらえるのか。実は、単体でもしっかりと横画面にできるサイクロイド機構も検討しました。でも横向きになるのは画面のみで、ダイヤルキーは縦のまま。携帯電話としての“顔”が残るんですね。BRAVIAケータイとしてワンセグを全面に押し出すなら、ディスプレイのみが表に出る回転2軸がベストと判断しました」(平野氏)
回転2軸ボディを使い、いかに安定して横置きさせるか。開発陣による会議中、ある機構設計の担当者がホワイトボードの前に立ち、この軸ずらしを説明し始めたという。
「皆でどうしようかと会議していると、エンジニアの1人が『こんなのがあるんですけどね』って説明を始めたんですよ。構造はシンプルだし、特別な機構や操作もいらない。このアイディア自体は前々から頭の中にあったようですが、使う場面がなくて、今回初めて日の目を見ました」(平野氏)
リビングにBRAVIA、手のひらにもBRAVIA
六角形のフォルムでエッジを強調したデザインのSO903iTV。BRAVIAケータイではあるが、BRAVIAと共通するデザインというわけではない。意外にも平野氏は「BRAVIAとは違ったデザインにした」と話す。「一番の理由は大きさです。BRAVIAはリビングにあるもので、BRAVIAケータイは手のひらにあるもの。おのずと目指すデザインが違ってきます」
またBRAVIAブランドの製品として、リビング向け製品に似せることのデメリットも考えたという。「例えば、BRAVIAの外観そっくりなデザインにすると、ミニチュアのような感じになってしまう。“本物のBRAVIA”と“小さいBRAVIA”という分け方は避けたいと思いました。同じブランドだけど単独の製品としてきっちり個性を出したかったのです」(平野氏)
ただし、デザインの根底にあるコンセプトは共通だという。「BRAVIAのデザインといえば、画面だけが浮いているようなフローティングデザインが特徴です。SO903iTVでもこうしたコンセプトは継承していて、液晶パネルのフチを黒くスッキリと仕上げています。また、卓上ホルダーも透明な素材を使っていて、端末が浮いているように装着できます」(平野氏)
BRAVIAらしさは内面にも
SO903iTVのカラーバリエーションはブリリアントレッド、メタルブラック、ピュアホワイトの3色。ブリリアントレッドは、BRAVIAのイメージカラーを意識したもので、メタルブラックとピュアホワイトは、AV家電のイメージを持たせたソリッドカラーだ。こうしたBRAVIAらしさは、端末内のユーザーインタフェース(UI)にも現れている。
「BRAVIAのイメージカラーは赤。そのイメージはUIでも引き継いでいます。デフォルトのメニュー画面に赤系統の色を使っていて、ほかの着せかえメニューでも赤を効果的に使っています」(松澤氏)
松澤氏は、この赤を多用したUIは一種の冒険だったと話す。「ここまで“赤いUI”は、ソニー・エリクソンとして初めてなんですよ。待受画面の壁紙はともかく、メニュー画面などは見やすさが第一。あまり刺激の強い色は避けた方が無難ですから」(松澤氏)
SO903iTVのメインカラーはブリリアントレッド、さらにワンセグ起動時には“BRAVIA”の赤いスプラッシュ画面が浮かび上がる。松澤氏は色調を微妙に変えた赤を使うことで、メニュー画面として高い視認性を持たせた、真っ赤なメニューを完成させた。
「BRAVIAというブランドを背負った端末はSO903iTVが世界初。ワンセグの映像美と端末の機能美とを両立させ、BRAVIAらしさを大いに盛り込みました。ただBRAVIAに似せるだけでなく、外観デザインのように、ソニー・エリクソンの携帯電話らしさも持たせています。ちょっと特別なワンセグ携帯を求める方や、ワンセグを見る時間を特別なものにしたい方にSO903iTVをお勧めしたいですね」(西村氏)
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