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端末に搭載可能な消費電力に──ドコモ、スーパー3G用MIMO信号分離LSIを試作
NTTドコモは9月13日、独自技術でMIMO多重信号の信号分離を行う低消費電力LSIを試作したと発表した。このLSIにより、スーパー3Gの高速なデータ通信が、端末に搭載可能な消費電力で行えるようになるという。
NTTドコモは9月13日、独自の技術を利用して、MIMO多重(複数のアンテナから、異なる信号を同時に同じ周波数を用いて送信する技術)信号の高性能な分離が行える低消費電力LSIの試作に成功したと発表した。
同社が試作したLSIは、4つのアンテナから送信された、20MHz幅のOFDM信号の復調およびMIMO信号分離処理を行う機能を持つが、200Mbpsで伝送される信号の分離を0.1W以下で実行でき、消費電力は端末に搭載可能なレベルに抑えられているという。LSIは回路の冗長な部分を省く最適化を施し、65ナノメートルプロセスを用いて製造した。
高性能でありながら低消費電力化ができた理由は、ドコモが4G向けに独自に開発していた信号分離技術を応用している点にある。MIMO多重された信号を、受信側でもっとも高精度に分離する技術としては、受信した信号と送信される可能性のあるすべての信号の比較を行い、もっとも確からしい信号を判定する「最尤(さいゆう)判定」と呼ばれる技術があるが、これは非常に大規模な演算処理が必要だ。一方ドコモが今回開発した分離技術は、最尤判定と同等の性能を維持しつつ、演算処理量を大幅に低減している。
ドコモでは、ここで培った技術が、スーパー3Gや4G向けのシステム開発に活用できるとしており、引き続きスーパー3Gや4Gの研究開発を推進し、国際標準化にも積極的に協力していくという。
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