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インタビュー

“魔法のフック”の半分は「安心」でできている──「P905i」、Wオープンスタイルの秘密開発陣に聞く「P905i」(前編)(2/3 ページ)

“ほぼ全部入り”の高いスペックが特徴のパナソニック モバイル製FOMA端末「VIERAケータイ P905i」。発表されるや、携帯に高い機能を求める層や“ギミック大好き”な層の心を一気に“グッ”と惹きつけた本端末はどのように開発されたのか。同社のP905i開発チームにその裏側を聞いた。

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妥協するか、“最強”を目指すか

photo 回転2軸ボディを採用した、同社のワンセグ2世代目端末「P903iTV」

 Wオープンスタイルは、縦は今まで通りのワンプッシュオープン、横に開くとワンセグやアプリ、フルブラウザなどを横向きで構えて利用できるという機構。外観における最も大きな特徴になっている。

 「じつは、回転2軸スタイルも考えていたんです」(商品企画担当の佐藤恭子氏 以下、佐藤氏)

 ワンセグの搭載で採用例も増えた回転2軸スタイル。同社もかつて、ワンセグ2世代目の「P903iTV」で採用した。しかし軸の構造上、カメラモジュールがその分押し出されてしまうといった厚みの増す不都合があることが分かった。いろいろ部品構成も工夫したが、どうしても背面に“出っ張って”厚くなってしまう、おそらくこの機構は他社も採用するところがあるだろうから目新しさも打ち出せない……。

 これで妥協するか、それとも“最強”を目指すか。同社は後者を選んだ。当初は、容易に実現可能な回転2軸と、開発途上にあったWオープンの両方を同時に検討しながら進行していたとプロジェクトマネージャーの福田氏は語る。

photo Wオープンスタイルで、ディスプレイを横に開き、机上に置いてワンセグや動画コンテンツ見るという自然なスタイルを実現した

 ディスプレイが横に開くスタイルは、2006年12月に登場したauの「W44S」(ソニー・エリクソン・モバイルコミュニケーションズ製)が記憶に新しい。この端末のデザインで注目されたのは、よくも悪くも“ヒンジ”。しかしP905iのそれはほとんど目立たない。

 「極力分からないように、でも実は──。そんな機構を目指しました。初めて見ると“横に開く”と分からない……人もいるかもしれませんね(笑)」(機構・設計担当の友部真治氏 以下、友部氏)

 同じ横開きスタイルながら、P905iのヒンジ構造は棒状フレームの片側で縦回転と横回転の双方をまかなうW44Sの構造とは大きく違うようだ。縦と横に回転する板状フレームを用い、これを縦開き用のワンプッシュオープン機構も含めて本体に内蔵できるほどのサイズにまとめた。ちなみに、これだけでおおむねのレベルに達する強度は保つという。

 そしてダイヤルキー部の右下に搭載する、もう1つの支点。横に開くと「魔法のフック」なるカギ状の部品が現れ、ディスプレイ側にある回転機構付きの凹状部品と磁力でかみ合う仕組みだ。この部品は縦に開くと本体の内側に引っ込むため、ほとんど目立たない。

photophotophoto ごく自然に操えるWオープンスタイルだが、機構全体をじっくり眺めると、この複雑な仕組みをよくこんなところに詰め込めたものだなと思えてくる

これの半分は……アレでできている

photo 同社の新端末説明会で見せてもらった「横に開いたP905iを両手で押して、くっと体重をかけても、ほら大丈夫でしょ」というデモ(もちろんマネしないほうがよいと思います)

 「強度は大丈夫?」第一印象でそう感じる人は少なくないと思うが、「この魔法のフックの半分は“安心”でできている(笑)」のだという。

 2点で支持することで数値的な強度がより向上するのはもちろんだが、ステンレス(SUS)鋼でできているというこの魔法のフックがあるおかげで、横開きで片手で持ちながらワンセグ視聴、あるいは直感ゲームで端末を振って遊ぶ場合も“あれ、何だか不安定だ”という不安は感じない。通常の縦スタイル使用時と同様に操作できる。

 「横に開いても、指で押しても“プラプラ”しない。この“魔法のフック”はそんな不安感をなくす心理的な効果も大きいです」(佐藤氏)

 強度試験は、今までの縦開き時に加えて“横開き”と“両方”も追加するやり方で、考えられるさまざまな利用シーンを想定して行った。工数とそれにかける時間も数倍を要したことだろう。ヒンジの強固な部品はもちろん、ヒンジ付近のベースも従来より強度のある樹脂素材を採用するとともに、(折りたたみ型の端末は総じてそうだが)ボディ全体がしなって衝撃を吸収するようになっている。

 「でも最初は、“魔法のフック”がぴこんと出っぱなしだったんです。このときは魔法でもなんでもないのですが、これではちょっと怖いですよね」(佐藤氏)

 「そこで磁力を利用して、横回転時のみかみ合う仕組みを開発しました。磁力が効いていない時、つまり縦に開くとフックが引っ込むようにしたわけです。できあがった試作版を見せたら“おぉー”とみんな驚いてくれましたね」(友部氏)

 「ちなみに“磁力が強くて、携帯の近くに置いたPCのHDDや、サイフの中にある磁気データに影響があるのでは”と心配される方の書き込みを拝見しました。もちろん大丈夫です。“安心”してください」(友部氏)

 飄々と語る友部氏だが、P905i開発にあたり最も苦労して努力した1人だと佐藤氏は語る。

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