厳しいといわれる公式サイトで好調なのは“この”分野――ドコモの原田氏:mobidec 2007
勝手サイトや無料コンテンツの台頭で、影響力に陰りが見え始めたキャリアの公式コンテンツ。しかしドコモのiモードコンテンツは依然、月額iモード情報料収入が190億円/月規模という大きな市場だ。今、どんなコンテンツが成長しているのかをドコモのコンテンツ&カスタマ部でコンテンツ担当部長を務める原田由佳氏が説明した。
端末の高速化や高機能化、定額制の導入に伴い、インターネットのトレンドが押し寄せ始めた携帯コンテンツ市場。一般サイトが(勝手サイト)人気を博し、無料コンテンツがあふれるようになる中、公式サイトの課金モデルが厳しい立場に追い込まれるのではないかという見方がある。
NTTドコモのコンテンツ&カスタマ部でコンテンツ担当部長を務める原田由佳氏がmibidec 2007の基調講演で、公式コンテンツの現状と今後の注力分野について説明した。
3Gへの移行が順調に進んでいるドコモは、2007年9月末にはFOMAの契約数が4000万を突破し、2007年度末には8割を超える見込み。ネットワーク面でも「2008年のこの時期に出る端末でダウンロードもアップロードも倍の速度になり、その次の年には今のPC並みの通信が可能なスーパー3Gが控えている」(原田氏)など、次世代高速通信の導入に向け、準備が進んでいるという。
原田氏はこうしたロードマップを背景に、今後のサービスのキーワードとして(1)定額制ビジネスの拡大(2)iDを含めた決済、クレジットの本格展開(3)映像、映画、テレビを含めた動画コンテンツの展開(4)海外での利用シーン拡大 を挙げている。
また、コンテンツビジネスについては、「FOMAになってパケ・ホーダイが広がり始めてからユーザーのアクセスが断然変わってきて、コンテンツの利用が増えてきた」とし、サービスメニューの充実でパケ・ホーダイの加入者が増え、それがコンテンツの充実につながるというフェーズに変化してきているという見方を示した。「端末の高機能化、通信速度の高速化、パケ・ホーダイの拡大の3つがうまく回り出すという変化が起きている」(原田氏)
ゲーム、音楽、デコメールの市場規模は横ばい
今や参入プロバイダが3000に迫り、1万を超える公式サイトを擁するiモードだが、市場にさまざまな変化が起こる中でiモードの契約者数やiモード情報料の収入はどのように推移にしているのか。原田氏はiモードの契約数は横ばいながら、1人あたりの単価やサイト登録数が増えていることから、月額情報料の収入は伸びているという。
この伸びは、通信の高速化やパケ・ホーダイの普及とも関連している。ムーバ時代に25%だった有料マイメニューの登録率はFOMAで51%となり、パケ・ホーダイの契約者では77%にのぼる。パケ・ホーダイユーザーのアクティブな利用がコンテンツ市場の活性化を支えている格好だ。
ジャンル別に見るとゲームの市場規模は、登録数は伸びているものの市場規模はほぼ横ばいで推移している。市場規模が拡大した時期には単価が高いロールプレイングゲームが顕著な伸びを見せていたが、ニンテンドーDSの“脳トレ”ブームをきっかけに携帯でも単価の安いミニゲームが人気となり、ロールプレイングゲームからのシフトとの相殺で現状維持になっていると原田氏は見ている。
ゲーム市場では、「逆転裁判」などが人気のアドベンチャー/ノベル分野や、アーケード/PC連携分野が右肩上がりで推移しているほか、今までになかった女性向けコンテンツが人気のシミュレーション分野が伸びており、直感ゲームも10代後半から20代後半を中心に人気が高まっているなど、コアユーザーといわれる20代から30代のユーザー以外の年齢層の利用が進んでいるという。
音楽市場は、着メロの落ち込み分を着うたフルが補う形でやはり横ばいに推移する中、メロディコールが1000万契約に到達するなど順調に伸びている。ただ、契約していながら設定していないユーザーもいることから、設定をしやすくしたり、自動で曲を更新できるサイトの利用をアピールするといった施策を強化する考えだ。また、905iシリーズが全機種FOMAハイスピード(HSDPA)に対応したことから、プッシュ型のMusic & Videoチャネルやプル型の10Mバイトiモーションの伸びも期待できるとしている。
デコメールも送信数は伸びているものの有料サイトの登録数は横ばいで、「マイメニューの有料は厳しい」と原田氏。ただ、無料コンテンツの登場などでイラスト系のジャンルが伸び悩む一方で、キャラクター系ジャンルのアクセスは好調に推移しており、バラエティやお笑い、ゲーム系のデコメールサイトが会員数を増やしているという。
伸びを見せる電子書籍、ショッピング、旅行、ナビ分野
従来型のコンテンツが横ばいで推移する中、原田氏が大きな伸びを見せている例として挙げたのが、電子書籍、ショッピング、地図/ナビゲーション、旅行などの分野だ。
電子書籍はケータイ小説そのものが人気を博していることに加え、それが映画化、書籍化されるなど、他メディアを巻き込むクロスメディア戦略に広がっている。「携帯から生まれて書籍化さた小説が100万部を突破し、携帯小説の単行本市場だけで数十億伸びているといわれている」(原田氏)。ケータイコミックも女性を中心に利用が多く、今後の成長株といえそうだ。
ショッピングは、ネット通販やカタログ通販がツールとして携帯を利用し始めたことなどから、前年度比約38%の伸びを見せるなど好調に推移している。モバイル専業の通販企業も、ファッションショーやリアルショップとの連携、音楽やSNSと絡めたショッピングなどの新しい取り組みを始めており、原田氏が「カタログ通販のノウハウとモバイル通販のノウハウを組み合わせることで、今後の伸びが期待できる」と注目する分野だ。
ホテルや宿、ツアー予約などの旅行分野は、画像の効果的な利用や予約のしやすさに配慮したサイトが対前年比で流通金額を23.8倍に伸ばした事例を挙げ、FOMAの高機能化と定額を生かせる分野がショッピングだけにとどまらないことをアピールした。
原田氏は「コンテンツ市場は厳しいと言われているが、無料も有料もまだ伸びる余地がある」とし、ドコモも端末やテレビCM、ポータル(iメニュー)など、さまざまな角度からの支援を約束した。
ジャンル | 市場規模 |
---|---|
月額iモード情報料収入 | 約190億円/月 |
ゲーム | 約40億円/月 |
着メロ | 約30億円/月 |
着うた/着モーション | 約25億円/月 |
着うたフル | 約15億円/月 |
デコメール | 約7億円/月 |
コミック/書籍 | 約11億円/月 |
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