勝ち負けがはっきり分かれた端末メーカー──iPhoneショック、共通プラットフォームの動向:2007年の携帯業界を振り返る(3)(4/4 ページ)
ジャーナリストの神尾寿氏と石川温氏を迎え、2007年の携帯業界を振り返る、年末の特別対談企画。第3回目は2007年の「端末」がテーマ。躍進したメーカーと元気のなかったメーカー、iPhoneショック、そして共通プラットフォームについて、両氏が忌憚のない発言を繰り出す。
共通プラットフォームはどうなっていくのか
ITmedia 端末の関連の話ですと、プラットフォームの共通化も話題になりました。頓挫しかけているものもありますが、今年は全キャリアが、やりますと表明しましたし、今後も進んでいくと思います。一方で、弊害もあるという意見がありますが、いかがでしょう。
石川 KCP+は弊害が最初にドカッときちゃったかな、という感じです。1社がコケると、みんなコケてしまうので、その点は厳しいものがあると思います。確かにコスト削減や開発負担が下がるという面ではメリットが大きいでしょうが、生みの苦しみが非常に大きいなと思っています。ソフトバンクモバイルの「POP-i」にしても、旗振り役だった人がいなくなってしまったので、アレ? って感じですね。
神尾 あの後は誰もPOP-iの話はしていないですからね。
石川 端末メーカーもちょっと戸惑っているようなところが見られます。
神尾 今回のKCP+騒動を見て思うのですが、1キャリアが1個のプラットフォームに統一されるのは、やはりリスクが大きいですね。例えばauなら、主流ラインアップにせめて2ラインは用意すべきでしょう。ドコモは少なくともSymbian系とLinux系の2ラインがあって、どちらかの開発にトラブルがあっても、ラインアップの半分しか影響を受けないわけですよ。
石川 そうですよね。
神尾 まだ、まともに動くKCP+の端末を触っていないので、なんとも言えないですが、どこまで個性化できるかも注目ですね。単に、上っ面のスキンだけ変えました、というのはやめてほしい。今のユーザーは我々以上に目利きですから、小手先のごまかしなんか通用しませんよ。きちんと個性のあるモデルを用意しないと、今以上にauの端末ラインアップは魅力のないものになってしまう。
石川 プラットフォームはどうなの? という不安な気持ちにさせられる中、Googleの「Android」が出てきましたが、どう転がるか、というのが楽しみなところですね。
ITmedia ドコモとKDDIが名前を連ねていますね。
神尾 小野寺(正)社長の会見では「2ラインやる」みたいなことを言っていましたね。でも、AndroidとKCP+の2ラインというのはリスクが高いと思いますよ。対象となる市場が全然違いますから。Androidはオープン系の1ラインとして、コケてもいいと思うんです。コケてもいいというのは語弊があるけれど、多少発売時期がずれたり、製品ラインアップでコケたりしても、経営に対して大きな影響はない。でも、主流がKCP+のみというのは危険なんですよ。
石川 主力中の主力ですからね。
神尾 そうそう。コスト削減は大事だけど、ちょっとやりすぎですよね、auは。KCP+が本格稼働すれば大丈夫、(販売に影響するトラブルは)今回1回限りだ、と小野寺社長は言ってましたよね。確かに立ち上げは1回限りですけど、ずっと同じものを使うわけにはいかない。どこかでバージョンを上げていくわけじゃないですか。そのときに、KCP+に再びトラブルが起きないと、なぜ言い切れるのでしょうか。
石川 プラットフォームが成熟するまで相当年数がかかりますからね。そうすると後々まで尾を引くかも、とも思いますね。
神尾 逃げ道はほしいですね。せめて、あと1ラインはほしいところです。多くのユーザーを抱えて、販売チャネルに対しても影響の大きい立場なのですから、KDDIはもっと市場への責任感を持つべきですよ。それはKDDI一社のコスト削減、利益の拡大よりも大切なことです。
ITmedia ドコモのプラットフォーム(MOAP)は成熟期に入っているといえますか?
神尾 ドコモは、Linux系が成熟したという感が強いですね。Symbianは前から安定はしていたというか、まとまっていた。もうちょっと反応速度をよくしてほしいという不満はありますが。でも、まとまりのあるSymbian、成熟したLinuxということで、どちらも満足できる内容になったと感じています。
石川さんも、この1年でずいぶん進んだ気がしませんか?
石川 そうですね。それが良かったのかなと思います。つまり2社が競争環境にあるというか、LinuxとSymbianの手綱を、ドコモがうまく使い分けたのかな、と思いますね。
(第4回「2008年はモバイルWiMAX、3.9G、4Gへ向けた種まきが重要に」へ続く)
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