「取説を不要にしろ」と、孫社長は言った──ソフトバンクモバイルのUI戦略:神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)
ボーダフォンからソフトバンクへのブランド変更以降、ソフトバンクモバイルの端末ラインアップは単にバリエーションが増えただけでなく、新たな取り組みにも積極的な姿勢が伺える。そんな同社のユーザーインタフェース戦略を聞いた。
次世代UIでは「タッチパネル移行」を重視
初期設定メニューの改善で直感的なUIを作りつつ、ソフトバンクモバイルが抜本的な操作性向上の鍵になると見るのが、iPhoneで一躍脚光を浴びた「タッチパネル」だ。
「今後のUIの進化を考えていくと、“画面の大型化”と“タッチパネル”がデバイス面での鍵になると考えています。段階的にですけれども、この2つの掛け合わせで、お客様に新しい価値を提供していきます。
また、(Windows Mobileなど)オープンOS系の端末にしても、タッチパネルなどを積極的に取り入れた商品を、我々も積極的に調達したいと考えています」(安東氏)
ソフトバンクモバイルは早期から、キャリアが開発に携わる従来型の携帯電話ラインアップと、同社がXシリーズと呼ぶWindows MobileやSymbianを採用したオープンOS系ラインアップの2軸体制を敷いているが、タッチパネルの採用と移行は「どちらのラインアップでも進めていく」(安東氏)というスタンスだ。
「現在、主流のラインアップにおいても、お客様の声を聞きながら、順次タッチパネルの採用に切り替えていきたいと考えています。もちろん、最初の移行期間においては、すべての操作でタッチパネルを使うのではなく、段階的な利用になるでしょう。
具体的には、カーソルキーなど“操作”に関わる部分をタッチパネルに置き換えていく方向で考えています。一方、ダイヤルキーを使った“文字入力”の部分は、すぐにタッチ操作に移行できるとは考えていません。日本語入力はボタンを押す回数が多く、漢字変換作業もあるので、そのあたりは欧米市場と異なるアプローチが必要でしょうね」(安東氏)
このようにソフトバンクモバイルでは、次のUIデバイスとしてタッチパネルを重視しているが、iPhoneのようにドラスティックな移行や変革を目指すという考えでもない。ダイヤルキーはもちろん、物理的なフルキーボードの導入にも取り組みつつ、緩やかにタッチパネルによる操作性改善を図っていく考えだ。
「使いやすいよね」と言われたい
ここ最近のソフトバンクモバイルは、多様な端末ラインアップを用意しており、UIの面でも注目の端末を投入している。例えば、春商戦向けモデルでは、「FULLFACE 2 921SH」で部分的なタッチパネル操作とモーションセンサーのUI活用を実現。「インターネットマシン 922SH」ではXシリーズ以外の主流モデルとして、QWERTY方式のフルキーボードを導入した。安東氏が話す「段階的なUIの改善」は、毎商戦期の新商品でしっかりと階段を上っている。
「我々の目標は『ソフトバンクのケータイって、使いやすいよね』と言われることだと思っています。ですから、タッチパネルのような先進的なデバイスの活用に取り組みつつも、(メールなどで文字入力がしやすいように)現在のダイヤルキーの押しやすさといった部分の開発にも力を入れています。(総合的に)ソフトバンクの端末は使い勝手がいいと言われるようになりたい。
振り返ると、ボーダフォン時代のUIではお客様のニーズに反してしまったのですが、2007年後半には(UIの失敗を帳消しにして)これをプラスにすることができた。社内でもUIに対する関心は高くなっていますので、この分野での取り組みはさらに重要かつ積極的になっていきます」(安東氏)
その背景には、ソフトバンクモバイル時代になってから、端末のデザインが重視されるようになり、その中でUIの重要性が増しているという理由がある。また、今後の同社にとって重要な「ARPUの向上という点でも、サービスを使いやすくするUIはとても重要な位置づけになる」(安東氏)
「使いやすさはベーシックな部分として追求していく。そして、その先に“楽しさ”も追い求めたい。使って楽しい、もういちど使いたいと感じてもらえる携帯電話を作りたいのです。これが本当の意味で、UIのゴールだと思うんですよね。例えば、画面のフォント1つでも作り手の想いが感じられる端末を作りたい」(安東氏)
ソフトバンクモバイルにとって、2007年度はボーダフォン時代の“負のUI”からプラスに転じる時期だった。そして、次の2008年度は飛躍の年と位置づけられているという。
「来年度以降、ソフトバンクモバイルの新しいポリシーを反映した製品を出していきます。ぜひ、ご期待ください」(安東氏)
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