サービスが生きるか死ぬかは“使い勝手”にかかっている――KDDIの重野氏
端末の高機能化が進む日本市場では、“多機能ながら使いやすい”端末を求める声が高まっており、各キャリアがUIのあり方を再検証し始めている。こうしたトレンドを受けてauケータイの開発陣は、どのような視点でさらなる使いやすさに向けた取り組みを行っているのか。
「iPhone」の登場を契機ににわかに注目され始めたのが携帯電話のインタフェースデザインだ。直感的で洗練された操作感を持つiPhoneは、従来の携帯電話とは一線を画すUIが人気を博し、端末メーカーやキャリアがUIのあり方を再検証するきっかけになったといわれている。
こうしたトレンドに加え、端末の高機能化が進んだ日本では、“高機能ながら使いやすい”端末へのニーズが高まっており、各社ともその鍵を握るユーザーインタフェースの開発に余念がない(記事1、記事2参照)。
携帯電話のUIのあり方について見直しの機運が高まる中、auブランドの携帯電話は、使いやすさをどのように捉え、どんなアプローチで対応しようとしているのか。「ユーザーインタフェース新潮流」と題したセミナーに登場したKDDI コンシューマ商品企画本部 プロダクト企画部長の重野卓氏が同社のビジョンを説明した。
“使いやすさ”と“表現力”がUIの定義
「UIの定義は“使いやすさ”と“表現力”。グラフィカルな部分だけで(iPhoneと)似たものを作っても意味がなく、マニュアルレスで使える操作性のフィロソフィが重要」(重野氏)――これがauのUIに対する考え方だ。携帯電話を構成する要素はGUIやメニュー、サービス、ハードウェアなどさまざまで、「何をどう並べるか、サービスに誘導する導線をどうするかなどをハードウェアの操作性と合わせて考えなければならない」というわけだ。
そして使いやすさを実現する上で重要なポイントととして「リテラシーへの配慮」「機種間の操作性統一」「サービスの使い勝手を重視した設計」「美しく楽しめるグラフィック表現」の4点を挙げる。
最近のauケータイを見ると、こうした要素が反映されているのが分かる。ケータイ初心者や子供、他キャリアからの乗り換えユーザー向けに最適化したメニューを用意したり、十字キーとソフトキーの割り当てを統一したり、共通アプリの採用でサービスの使い勝手を統一したりといった施策は使いやすさに配慮した取り組みの一例だ。
さらに、機能の進化に伴う使い勝手の向上に向けた取り組みとして、重野氏はデータフォルダの機能強化にも言及する。「カメラの高画素化やゲームアプリの大容量化などデータフォルダの使い勝手が重要になる中、これまで機能ごとに分けていた保存領域を統合し、ユーザーが自由に使えるようにした」(重野氏)。外部メモリへのアクセスについても、メモリの低価格化で利用者が増えたことからUIを見直し、データフォルダ閲覧時の左上ソフトキーに外部メモリを割り当てることで、内部メモリと外部メモリの間を行き来しやすくしたという。
UIの表現力については、壁紙からメニューアイコン、ピクト行のアイコンにいたるまでカスタマイズできる「EZケータイアレンジ」で対応。新プラットフォームのKCP+端末は、アクロディアのUIミドルウェア「VIVID UI」を採用することで、3Dグラフィックスや動画を組み込んだグラフィカルなメニューに対応するとともに、ユーザーのニーズに合った柔軟な構成のメニューを提供できるようになっている。
さらに春モデル向けには、ユーザーが自分のライフスタイルに合ったメニューを選べる「ライフスタイルUI」を提供し、GUIの着せ替えレベルから一歩踏み込んだ、柔軟性のあるUIを導入した。標準メニューのほかに、「生活(女性向け)」「情報(ビジネスパーソン向け)」「音楽志向」「スポーツ志向」の4パターンがあり、それぞれのメニュー内に各ターゲットの嗜好に合った機能やサイトへのリンクをまとめることで、求める機能やサービスへのアクセスを容易にしている。
「本体のカラーごとに主力層を想定し、例えば女性寄りのボディカラーのピンクの端末には生活メニューをプリセットするなどの取り組みも始めている。これも試行錯誤の1つで、反応を見ながら対応していく」(重野氏)
サービスが生きるか死ぬかは“使い勝手”にかかっている
使いやすさの追求が大事なのはサービスについても同様で、au向けサービスについてもユーザーの要望に応えた改善の積み重ねで、ユーザビリティが磨かれてきたという。
その例として挙げられたのが、徒歩ナビサービスの「EZナビウォーク」だ。サービス開始当初は、機能重視で使い勝手への配慮が行き届かなかったことから、使いづらさを指摘する声が相次いだと重野氏。地図のスクロール方法の改善から始まった使いやすさへの取り組みは、歩きながら使うことに配慮した音声入力の導入やタブ表示への対応、第1階層へのメニューの集約、目的地までの残り距離の表示などを経て、サービスを洗練されたものへと進化させ、それが利用頻度の増加につながったと振り返る。
また、auらしい取り組みの一例としては、“1つのサービスを関連サービスにつなげる”LISMOのアプローチを紹介。“携帯を使った音楽再生”という基本機能からコミュニティや検索、CDの購入に導線を引くことで、“音楽を軸にシームレスにつながるLISMOの世界観”を醸成した。
さらに最新サービス「au Smart Sports」用の「Run&Walk」アプリでは、「いかに携帯でスポーツを楽しむための付加価値をもたせるか」を考えたといい、結果や過程を確認しやすいUIを採用するとともに、端末内の音楽プレーヤーへの導線を用意したり、SNS的に仲間とつながれるようにしたり、参加中のユーザーの人数を表示したりといった工夫を盛り込んだ。
カスタマイズのニーズに応え、楽しめるUIに取り組む
今後の取り組みについては、KCP+端末で導入した「au one ガジェット」の使い勝手を向上させることと、新しい発想に基づいたUIの開発を挙げる。
au one ガジェットは、ユーザーからの要望が多い“カスタマイズ”に対応する取り組みの1つとして導入した機能で、待受画面を有効に使ってカスタマイズの選択肢を広げるのが狙いだ。
「使い勝手がいいかというと、まだまだだと思っている。やるべきはau one ガジェットの使い勝手を向上させつつ、コンテンツプロバイダが参入しやすいようオープンにすること」(重野氏)。
新たなUIについては、“使っていること自体が楽しい”というコンセプトを提案しており、その例としてau design projectのコンセプトモデル「actface」を紹介した。「actfaceは操作に従って街が完成するUIを採用しており、使う人によって街がさまざまに発展するなど操作にゲーム性を持たせている。機能の差別化が難しくなる中では、異なる視点を入れることも必要」(同)
UIの分野については、「できたばかりで見えてこない部分も多い」と重野氏。さまざまな取り組みを積み重ねることでよりよいUIを目指したいとした。
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