元気な“ミツバチ”と大人な“5代目京ぽん”――「HONEY BEE」「WX330K」に見る京セラの新デザイン戦略(後編):開発陣に聞く「HONEY BEE」と「WX330K」
ウィルコムの京セラ製PHS「HONEY BEE」と「WX330K」。開発陣インタビューの後編では、凝りに凝ったHONEY BEE用コンテンツや、ベースとなったWX330Kの開発経緯、デザインコンセプトを聞いた。
ウィルコムから発売された京セラ製の「HONEY BEE」と「WX330K」は、内蔵アンテナやデコラティブメールに対応した初の京セラ製PHSだ。
開発陣インタビューの前編では、カジュアルさを武器に2台目需要をターゲットにしたHONEY BEEのコンセプトと端末デザインについて聞いた。後編も引き続き、京セラ通信機器関連事業本部マーケティング部の田邊正昭氏と宮坂俊至氏、同マーケティング部デザイン課の漆畑睦氏と西本圭太氏に、HONEY BEEにプリセットされるデコラティブメール用テンプレートのこだわりとHONEY BEEのベースとなったWX330Kのデザインコンセプトや開発経緯について聞いた。
HONEY BEEのベースになったのは5代目京ぽん「WX330K」
HONEY BEEのベースになっているのは、5代目京ぽんとして登場したWX330Kだ。内蔵アンテナの搭載やデコラティブメール、Operaブラウザ、Operaサーバーサービスへの対応などが共通している。
「アンテナ内蔵については、感度が落ちないよう頑張りました。アンテナを出した場合と内蔵した合では、内蔵したほうが感度が良かったという計測結果もあります。薄型化、小型化をしたからといって、性能が落ちていることはありません」(田邊氏)
また、HONEY BEEというコンセプト重視の端末だけに、ユーザーインタフェース(UI)の作り込みも半端ではない。デザインは、5色あるカラーバリエーションのどれでも似合うことが最低条件だったという。それ以外はかなり“はじけた”内容だ。
「メニュー画面は3種類用意しています。そのうち2つはハチのキャラクターが出てきます。もう1つも植物をモチーフにするなど、ミツバチをイメージさせるデザインにしました。一番派手なメニューだと、アメリカンコミックのようなポップで元気なデザインですが、全体的にかわいらしい凝ったデザインにしています」(西本氏)
HONEY BEEもWX330Kも、端末の雰囲気に合わせたデコラティブメールのテンプレートをプリセットしている。さらに、京セラのモバイルサイト「サイトK」で無料・有料含めて1000点以上の素材を用意している。
なかでも、「端末に合わせて面白おかしいものを多数用意しました」と語るのが、宮坂氏だ。HONEY BEE向けデコラティブメールのほとんどを手がけ、かなりの時間を“ネタ作り”に費やしたという。
「特に、『仏の顔も三度までです』や『グッジョブだ!!』など、普通はテンプレートに入れないような例文が入っています。端末に盛り込めなかった分はサイトKで配信していますので、是非ダウンロードして下さい」(宮坂氏)
新世代デザインの京ぽん「WX330K」
WX330Kは、WX320Kの後継となる5代目の京ぽんだ。2台目需要に配慮したHONEY BEEとは違い、1台目のPHSとして正常進化させている。WX320Kと比べてディスプレイサイズが大きくなり、microSDスロットを追加。厚さも15.6ミリとかなりスリムになり、内蔵式アンテナのおかげですっきりとしたフォルムになっている。そのほかの機能は基本的にWX320Kをブラッシュアップしている。
WX330KとHONEY BEEはともに赤外線機能を搭載した初の京セラ製PHSだが、WX330KはIrSimple、HONEY BEEはIrDAと違いがある。これはなぜだろうか。
「WX330Kの場合は、携帯電話と比べて遜色のないインタフェースであることが求められました。カメラで撮った画像を赤外線通信で転送する場合にも、IrSimpleのほうが有利です。一方のHONEY BEEは、2台目需要を想定していることから、自分のもっている携帯からアドレスを転送することが多いと思います。その場合はIrDAでも十分と判断しました」(宮坂氏)
自らWX330Kのデザインを手がけた漆畑氏はWX330Kのデザインについて、「これまでの京ぽんは、どちらかというと男性に特化したデザインでした。どこかメカっぽさがあった。今回は少し中性的なデザインにしています」と話す。ユーザーニーズに即して、京ぽんの持つイメージを新しいものにしたかったようだ。
「1台目にウィルコムを選ぶのがどんな人か? をよく考えました。おそらく、経済概念がしっかりしていて、携帯電話と価格などを比較して選んでいるのではないでしょうか。こういったユーザーは男女どちらにも一定の割合でいると思います。『これじゃなきゃダメだ』でもないし『これでいいや』でもない。『これがちょうどいい』というポジションの製品を選ぶ層に受け入れられる。上質で、飾りすぎない存在感のあるデザインを求めました」(漆畑氏)
WX330KはHONEY BEEと異なり、落ち着いた雰囲気のPHS端末を作ろうというテーマで企画がスタートした。こちらも初期コンセプトがしっかりしていたため、モックアップや試作機のディティールは、かなり製品に近い。
「方向性が開発初期からしっかり決まり、スタッフで共有できました。それだけに細部のこだわりに時間をかけることができましたね。例えばメッキ部分ですが、ピンクは若干ゴールドを、ブラックにはブラウンがわずかに入っています。ダイヤルキーのフォントも、上質なデザイン家電のような品格あるフォントを選びました」(漆畑氏)
また、WX320Kの21ミリ、WX320KRの19.3ミリから大幅に薄くなった点も見逃せない。薄型化のポイントは強化プラスチックの採用で、金属製のフレームと組み合わせて強度を保ちながら薄く作ることができたという。これに加え、バッテリーなど個々の部品を小型化、薄型化して、15.6ミリという厚さを実現した。
「薄さがトレンドではあり、もっと薄くという要望もあります。しかし、使い勝手を考えると厚さ15ミリ前後が、ちょうどいいと思えるサイズではないでしょうか」(漆畑氏)
「ウィルコムの定額プランについて、すべてのメールが無料であることを知らない人が多い。今回の2機種はデコラティブメールに対応しており、いままで以上にパケット料金を気にせずメールを楽しめます。HONEY BEEもWX330KもOperaサーバーサービスが使え、PCとのデータのやり取りも可能です。通話、メール、ウェブという現在の基本的なモバイルコミュニケーションを、定額でしっかり楽しむには、ぴったりの端末だと思います」(田邊氏)
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