3Gの発展はまだまだ続く──HSPA+、DO Advancedを提供するクアルコム(2/2 ページ)
LTEやUMBといった、広い帯域とOFDMAを活用して高速なデータ通信を可能にするモバイルブロードバンド技術の標準化が進む一方で、既存の3Gネットワークをいかに効率化し高速化していくか、という研究も進んでいる。
EV-DOはDO Advancedで下り最大34.4Mbpsへ
日本ではKDDIが導入し、一時期はドコモに対して大きなアドバンテージを獲得したCDMA2000 1x EV-DOも、さらなるデータ転送速度の向上が予定されている。KDDIは現在下り最大3.1Mbps、上り最大1.8MbpsのEV-DO Rev.Aのサービスを開始しているが、これがEV-DO Rev.Bになると、下りは最大9.3Mbps、上りも最大5.4Mbpsへと高速化する。
この高速化を実現するのが、HSPA+の項でも触れたマルチキャリアである。EV-DO Rev.Bは、EV-DO Rev.Aのキャリアを3本束ねて通信を行い、スループットを3倍に向上させる。端末側はEV-DO Rev.Bに対応した新しいチップセットが必要になるが、基地局側はソフトウェアのアップグレードを行うだけで対応できるのがポイントだ。QUALCOMMは2007年4月からアップグレード用のソフトウェアを提供しており、2008年後半には商用サービスがスタートするといわれている。
なおEV-DO Rev.Bは、サービスエリア内のすべての基地局を一気にRev.Bに更新する必要はない。トラフィックが集中し、混雑していてより多くのキャパシティが必要なエリアだけをRev.B化して、それほどユーザーが多くない地域はRev.Aにとどめておくということが可能だ。端末はRev.BのエリアとRev.Aのエリアでシームレスにハンドオーバーができるため、スループットは変わるが通信は維持される。通信キャリアは無駄なくパフォーマンスとキャパシティを向上させられるわけだ。ちなみにKDDIはまだEV-DO Rev.Bの導入について特にコメントをしていない。
さて、2010年ころには、EV-DO Rev.BはPhase IIに移行する。Phase IIでは、変調方式を64QAMにすることで、1キャリアあたりのデータ転送速度が3.1Mbpsから4.9Mbpsに向上するため、下りの最大テータ転送速度が14.7Mbpsになる。
その先に予定されているDO Advancedでは、4つのEV-DO Rev.Aキャリアを使い、さらにMIMOを組み合わせることで、下りのデータ転送速度は最大34.4Mbpsに達する。上りも13.4Mbpsと、HSPA+ほどではないものの、明確な高速化のロードマップが用意されている。
興味深いのは、CDMA2000 1x にも1x Advancedという拡張が予定されていることだ。1x Advancedでは、1xの音声キャパシティを2倍にする。キャパシティが2倍になっても、ユーザー数が変わらなければ、必要な周波数は半分になる。すると、そこで余った周波数をEV-DO(データ通信)に回すといったことも技術的には可能で、周波数の有効利用につながるという。
干渉制御により上りのスループットを2倍に向上
ここまで見てきたような端末側の通信技術の進歩だけでなく、基地局側の処理によって上り回線のスループットを向上させる技術も、導入へ向けて研究が進められている。それが干渉制御(Interference Cancellation/IC)と呼ばれる技術だ。
干渉制御を利用すると、端末から基地局への上り回線の干渉が抑えられるため、トータルのスループットが上がる。例えば同じセクターの中に2人のユーザーがいて、一方が他方に干渉するような動作をしたときに、干渉を防ぐよううまく電波を制御することでスループットを向上させるわけだ。
干渉制御の導入に際して、端末側には一切改修が必要なく、基地局の基板をCSM6850を搭載したものに差し替える程度で済む。HSPAやHSPA+、EV-DO、1xなどさまざまな技術方式に適用可能で、導入するだけで目に見えて効果が出るという。例えばVoIPのようなアプリケーションでは、干渉制御によってスループットが向上し、安定的な会話が可能になる。FTPやHTTPによるファイルのダウンロードなども、快適にサービスが利用できるようになる。
このように、3Gの技術はまだ発展の途上にあり、今後も性能の大幅な向上が予定されている。QUALCOMMは、今後も強力な無線システムとして、W-CDMAとCDMA2000の拡張を継続していく。
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