電動レンズカバーとスライドボディが腕の見せどころ――「W61S」の作り方:開発陣に聞く「Cyber-shotケータイ W61S」(中編)
「Cyber-shotケータイ W61S」開発陣インタビューの第2回は、ソニー・エリクソンが得意とするスライドボディに隠された秘密と、国内端末では初という自動レンズカバーの開発背景に迫る。
国内向けCyber-Shotケータイとして、同じカメラ機能を持つ「W61S」と「SO905iCS」だが、デザインに関しては、W61Sならではのこだわりが随所に反映されている。注目なのは、“カメラ”であることを強調させた裏面だ。
本体デザインを担当したソニー・エリクソンの大倉氏は、「一般的なケータイの裏面は、いかにも裏面……いわゆるB面という感じの作りが多いのですが、W61Sはこの裏面がある意味A面です。『どうやってネジを隠すか』『カメラらしくするにはどうすればいいか』などを設計と相談しながらデザインを進めました。その結果、ネジ穴やつなぎ目をできるだけなくした裏面を作ることができました」と振り返る。
また、W61Sの全体的なデザインは、SO905iCSが“メタリックでメカメカしい”テイストであるのに対して、曲線を生かした丸みのあるフォルムだ。カメラを起動するとレンズカバーが自動的に開く機構も、手動でレンズカバーを開くSO905iCSとは異なる。
「アクティブな女性に訴求しつつも、フラッグシップモデルを求める男性層も取り込みたい。そこで、できるだけ曲面を多用して持ちやすくしながらもカメラらしさをアピールし、かつユーザーがワクワクするような面白いものを作ることになりました」(企画担当の冨岡氏)
「ターゲットによっては、SO905iCSのレンズカバーは男性っぽいととらえていたようです。それに対してW61Sは女性っぽいイメージを狙った端末。スライドカバーのようなギミックではなく、普通のカメラの表情だけど凝ったギミックが入っているものということで、電動レンズカバーを搭載しました」(大倉氏)
「このレンズカバーは金属製で、駆動用モーターで弧を描くように開閉させています。開くときに“カシャッ”という音が鳴りますが、『さぁ、これから写真を撮るぞ』と気持ちが高ぶりますね。この機構を載せたことで、落下強度の調整がものすごく大変になりました。普通のケータイは、内部に“動く金属盤”なんて入っていませんから」(機構設計担当の安西氏)
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斬新で高度な技術を採り入れた電動レンズカバーだが、金属盤や駆動用のモーターを搭載することで、部品点数が増えるというデメリットもある。SO905iCSのような手動レンズカバーのほうが薄くできるが、安西氏は「ある程度サイズが犠牲になろうとも、ワクワクするギミックの搭載を優先させた」と話す。
「全体的なこだわりでもあるんですけど、カメラを見せるときに大事なのは質感だと思います。デザイナーとしては金属を使ってカメラを表現したかった。設計側も薄くしつつも強度を持たせたい――こうした双方の要望が合致して、金属を生かすデザインになりました」(大倉氏)
そしてバッテリーカバーにもちょっとした工夫が盛り込まれた。一般的なケータイのバッテリーカバーは四角形にカットされているが、W61Sでは曲線が使われた。この曲線はレンズの同心円を描いており、カメラであることを強調している。さらに撮影補助用ライトやソニー・エリクソンのロゴも円形で、裏面は“円”が隠しテーマになっているという。
「カメラやギミックを盛り込んで大きくなってしまった分、できるだけ丸みを帯びたフォルムにして持ちやすくしました。W61Sを店頭で買われた女性の声を聞くと、『パッと“見てこんなの持てない”と思ったけど、握ってみるとほかの薄型ケータイよりも持ちやすい』といった反応が多かったですね」(冨岡氏)
高級感のあるシャッターボタンとフラットなディスプレイ
デザインのこだわりは裏面だけではない。フラットなディスプレイ面やカメラ起動キー、シャッターキーのデザインにも力が入っている。また、細かいパーツにもW61Sならではのこだわりが散りばめられた。
「シャッターキーは、『道具』として高い価値が見いだせるよう、カメラらしさにこだわった形状にしています。また、カメラレンズの裏にはディスプレイがあることを意識させたかったので、ディスプレイ面はあえてフラットにしました。弊社のスライド端末でディスプレイ面がフラットなのは、W61Sが初めてです」(大倉氏)
「デザイナーから『高級感のあるパーツを入れてほしい』という要望があったので、(レンズカバーの)リング部分にはメッキパーツを使ったり、Cyber-shotのロゴにはアルミを絞ったダイヤカットを用いています。ここはSO905iCSとは違った手法で頑張った部分ですね。シャッターキーも通常は蒸着塗装を施したものが多いですが、W61Sはアルミを削り出して、デザイナーからの要望でスピン目を入れています。その周りには亜鉛ダイキャストのパーツを、さらに外周のフレームは不連続蒸着塗装で仕上げて高級感を出しました」(安西氏)
メインカラーには、ケータイで日常生活をどんどん楽しみたいというアクティブなユーザーイメージから、スペクトラムピンクが選ばれた。「Cyber-shotの定番色はシルバーですが、Cyber-shotケータイとしての新しいイメージを映したかった」(冨岡氏)という。
「ピンクとはいっても、アルミ感があるピンクにしています。デジカメのボディはアルミでできていますので、W61Sにはアルマイト処理を施し今までのピンクとは違う、デジタルカメラらしい色をねらいました」(大倉)
「表面と裏面では質感が違います。表面はクリアパネルを使ったこともあり、つややかで奥行き感があります。一方で、裏面はマットな質感にしています」(安西氏)
またW61Sは、“スライドケータイ”としての作り込みも徹底された。スライド端末のディスプレイ面の裏にはスムーズに開閉するためのレールが敷かれているが、ソニー・エリクソン端末は、これが隠されている。もちろんW61Sでもこのレールは見えないように配慮されている。レールがないほうが形としては美しいが、「レールを省くことで難易度が1つ上がる」(安西氏)という。
「本体を閉じた状態の安定感は、ユニットの精度がものすごく高くないとキープできません。スライドのレールはデザイナーからも見せたくないという要望がありましたし、『ウォークマンケータイ W52S』もレールなしだったので、メカ設計としても譲れない部分でした。W52Sのユニットをベースにしていますが、そこから全体的に見直して、強度アップを図りました。開いたときの安定感はW52Sよりも高くなっています」(安西氏)
次回、W61S開発陣インタビュー後編では、楽しく写真を撮ることができるデコフォトや、撮った後も楽しいフォトビューアーやブログアップなど、カメラを活用するための機能について取り上げる予定だ。また、「KCP+」の採用で搭載が見送られた機能や、今後の端末開発についても話を聞く。
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