第4回 最初クッと動いて最後はスッ──au版ウォークマンケータイのルーツ「W31S」:昔のケータイの中身が見たい(2/2 ページ)
着うたフルやATRAC3の再生が可能な“音楽ケータイ”として当時の話題をさらったソニー・エリクソン製のスライド端末「W31S」。レールが見えないヒンジやオイルダンパーなど、さまざまな工夫が盛り込まれたこの端末の中身に迫った。
注意
- 携帯電話を改造して使用すると、電波法違反となります。
- 本企画で使用した端末は、分解後はリサイクルに出しています。
W31Sは、デザイナーが細部までこだわりを貫き通したのか、外部から明らかにネジがあると分かるような部位が少ない。一般的な端末は、下ケースを裏面側から4カ所、ネジで留めているものが多いが、W31Sはバッテリーカバーを外してもネジはなく、一見どこで留まっているのかよく分からない。慎重にはがれそうな部分を探していくと、2本のネジはマイク部分に表から取り付けられていることが分かった。残りの2つは、レンズシャッター部のカバーをはがした中にあった。
要となる4本のネジを外せば、ケース部分は容易にヒンジ部と分離する。メイン基板もすんなり現れ、カメラユニットやキーのスイッチが組み付けられた基板が丸ごと外れる。基板の下には、スライド機構の要となるヒンジとコイルバネがある。歯車状のオイルダンパーは基板の穴から顔を出していた。
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コイルバネだけでは勢いが強すぎるため、歯車状のオイルダンパーと衝撃吸収材を配してスムーズなスライドを実現したというW31S。確かにオイルダンパーなしでは一瞬で端末が開いてしまうくらい勢いがいい。オイルダンパーが入ることで、ほどよいブレーキがかかってスッと開く。ディスプレイの裏側が平らなソニエリ端末のヒンジは、シャシー全体をヒンジとして使うことで平面を実現していたことが分かった。
ディスプレイ側は、やはり4本のネジで固定されていた。端末上部の2本はすぐに見つかったが、残りの2本がなかなか見つからず、しばらく難儀したが、ふとダイヤルキーのシートをめくるとその下にネジが2本あった。このネジを外すと、ディスプレイ側のケースもすんなり開き、中の液晶ユニットが取り出せた。ディスプレイ側は意外なほどにシンプルで、液晶とフレーム、十字キーとソフトキーのスイッチ、それと裏側に下ケースと接続するフレキケーブルをつなぐための小さな基板がある程度。主なパーツはすべてしたケースに集約されているようだ。
メイン基板表側は、大部分がシールドを兼ねたダイヤルキーのスイッチでカバーされている。これを外すと、所狭しと並んでいるベースバンドチップやアプリケーションプロセッサなどが確認できる。ベースバンドチップはMSM6500で、「MPEG 4」のプリントが見えるチップは東芝製のAVデコーダ TC35280XBGだ。その右にあるチップはヤマハ製の音源チップ YMU783Bで、EPSONロゴの入ったチップはカメラインタフェース搭載のLCDコントローラ S1D13511(Mobile Graphics Engine)。ベースバンドチップの右にあるSpansion製のチップはフラッシュメモリーで、そのほかにも役割がよく分からないチップがいくつか見られる。SONYロゴのチップはメモリースティックのコントローラーだろうか。
メイン基板の裏側にはRFチップのQualcomm RFR6125、RFT6120、それにRFR6120と思われるチップが確認できる。表面に用意されている金色の2本の端子は、上部と下部にあるものがアンテナ用、中央に2つある斜めのものがスピーカー用だ。下部の大きな銀色の部品はメモリースティックDuoスロットである。バッテリーはこの上に乗る形になる。
ウォークマンケータイの先駆けとなったW31S。そこには、今につながるさまざまな工夫が込められていた。とくに「スコーン」でもなく「モワッとしてシュコーン」でもなく、「スッと動いてカン」でもない、絶妙のチューニングで実現したヒンジのスライド感は、いつまでも触っていたくなるような心地よい感覚だったのが印象深い。
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