「URBANO」はオトナにちょうどいいケータイ――auのエルダー向け新戦略
若者向けケータイほど多機能である必要はないが、シニア向けケータイを持つにはまだ早い――。auが想定する「URBANO」のユーザー層とは、こんなオトナの世代。KDDIが仕掛けたエルダー向け戦略とは。
KDDIが8月28日に発表したシャープ製のau端末「URBANO」(アルバーノ)は、“アクティブな大人”をターゲットにした新セグメントのモデルだ。
すでにKDDIは、シニア層をターゲットにした「簡単ケータイ」シリーズをラインアップするが、今回発表されたURBANOはもう少し若い50歳以上のユーザーを強く意識。若者向けケータイほど多機能である必要はないが、シニア向けケータイを持つにはまだ早い――と考える世代の取り込みを狙っている。NTTドコモも、同じユーザー層をターゲットとした「706ie」シリーズを4機種発売しており、世代やライフスタイルに合わせたケータイ市場の細分化が一層進みそうだ。
50歳以上のケータイ普及率を上げたい
URBANOの発表会では、KDDIのコンシューマ事業統括本部コンシューマ商品企画本部長 長島孝志氏が新しい事業戦略を発表した。
「現在ほとんどの人が使っている携帯電話は、80年代に売り切り制度の導入、キャリアの新規参入などで一般化し、90年代に入って、若年層をターゲットにした多機能化とパーソナル化により普及が加速した。ケータイがただの電話から情報端末へと進化した期間に、世の中は高齢化し、公衆電話が減少するといった社会現象が起きている」(長島氏)
携帯電話の普及率は20代から40代はすでに90%を超え、ほとんどの人がケータイを持っている状況だ。高齢層も年々所有率が上がり、50代は80%以上、60代以上も60%以上が携帯電話を所有しているという。長島氏は今後、若者とシニア層の間にある、“アクティブな大人”世代のための製品を充実させたいと話す。
「こうした大人たちにとって、今のケータイは両極端に映っているのではないか。選択肢は、マルチメディア機能を多数搭載した若年向けの端末を“無理をして”使うか、使いやすさを追求したシンプルなシニア向け端末を“あきらめて”使うかの2つしかなかった。URBANOなら、若者向けでもシニア向けでもない新しいケータイとして選んでいただける」(長島氏)
また長島氏は、高年齢層におけるauのシェアが、若年層のそれと比べて低いことを認めた上で「auといえば若者向けというイメージが強いが、auだから今回のような取り組みが遅れたとは思わない」と述べ、若年層向けの機能とサービスが充実した結果、各キャリアが同じタイミングで新セグメントへのアプローチを開始していると話した。また、さらに低い年齢へのアプローチも検討中だという。
「URBANOは50代以上がターゲットだが、その下の層に買ってもらえればそれもうれしい。実は30代後半から40代を想定した商品企画も進めている。今は多くを話せないが、次回の新端末発表会で紹介できるだろう」(長島氏)
みんなで“ちょいワルおやじ”に
シニア未満の大人世代を狙うURBANOのセールスポイントが、ワンランク上の携帯電話と思われる上質感と機能、大人にふさわしい専用サービスの組み合わせだ。
KDDI コンシューマ事業統括本部コンシューマ商品企画au市場開発部長の村井義昭氏は「URBANOは『自分にあったケータイがない』という大人のためのケータイ。いかにもシニア向けに見えるデザインは避け、上質感のあるものを目指した。背面パネルと1.3インチの大型サブディスプレイは高級腕時計をイメージし、十字キー回りはしっとりとした質感を持たせるなど、“自分の持ち物”として長年扱えるように仕上げた。ドコモの706ieシリーズと比べて、デザインで勝とうと意気込んでいる」と説明した。
機能面では、ワイドQVGA(240×400ピクセル)の3インチディスプレイ、ワンセグ、おサイフケータイといったトレンドのスペックを押さえた。また、3軸加速度センサーを使った歩数計で消費カロリーや脂肪燃焼量なども確認できる。カメラはAF付きの有効約203万画素CMOSで、カメラルーペ、ゴルフスコープ、名刺リーダーといった実用機能を充実させた。
当然ながら端末の使いやすさにも配慮し、1つ1つのキーが独立したダイヤルキーや画面内の文字拡大機能、声が聞き取りやすい大きめの通話音量と、最大92デシベル(スピーカーから10センチの距離)と音量の大きな着信音を採用した。
auのサービスではLSIMOやau Smart Sports「Run&Walk」に対応するほか、URBANOの発売に合わせて大人向けにカスタマイズしたau oneポータルも提供する予定だ。この専用ポータルで、協業先と連携して音楽や健康など、大人に興味を持ってもらえるコンテンツを充実させる。
「実用系の機能はさらに使いやすく。趣味系のサービスも充実させた。もちろん使い勝手もよくしており、メニュー画面などUIもきめ細かにしている。特にキーが独立したダイヤルキーは自信作で、今までのダイヤルキーが使いにくいと感じてしまうほどだ」(村井氏)
URBANOの発売は9月中旬以降。発表会にパンツェッタ・ジローラモさんが登場したことで「富裕層向けの端末か」という質問が出たが、そうではないという。
「URBANOは決して富裕層向けの端末ではない。オープン価格のため販売価格は小売店が決めることだが、それほど高いものにはならない」(長島氏)
発売時には、各キャリアショップにターゲット層にあった分かりやすい展示コーナーを設置し、URBANOの訴求を図る考えだ。
「ぜひ皆さんにこのケータイを持っていただいて、“ちょいワルおやじ”になってほしい」(村井氏)
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