「次世代PHS」――来年スタートの高速PHSを再確認する:デジモノ家電を読み解くキーワード
携帯電話は3.5Gへの移行が本格化しているが、基地局の不足も指摘されている。だが近い未来に目をやれば、そこには「次世代PHS」という有望な選択肢もある。
次世代PHSシステム「WILLCOM CORE」
次世代PHSとは、「PHS MoUグループ」が策定を進めている、次世代PHS規格書に準拠したPHSサービスを指す。しかし、現在の日本で一般消費者向けPHSサービスを提供する企業はウィルコムだけであることから、実質的には「ウィルコムが計画中の新しいPHSサービス」を指す言葉として用いられている。
「WILLCOM CORE」と名付けられたその新サービスは、2009年4月の試験運用開始、10月の本運用開始が計画されている。いまだ規格策定段階であり、本運用開始までに規格の変更が行われる可能性もあるが、ここではほぼ確定段階にある機能でその特徴を説明してみよう。
開始時の速度は20Mbps以上、しかも安定
WILLCOM CORE最大の特徴は、上り下り20Mbps以上という通信速度。2.5GHzの周波数帯を使用し、変調方式に直交周波数分割多元接続(OFDMA)を採用したことがポイントだ。高速/広帯域を必要とするデータを低速/狭帯域な信号に分割、伝送特性のよいサブキャリアとして伝送することにより、帯域を有効活用するしくみだ。
複数のアンテナを利用して擬似的に広帯域を実現する技術「MIMO」(Multiple Input Multiple Output)によってデータ通信の高速化も図られている。現行のHSDPAが下り最大7.2Mbps(フルスペックは14.4Mbps)という現状からすると、その注目度は高い。
既存設備を活用できることも、大きな特徴といえる。現行PHSで実績があるマイクロセル方式は、すでに16万以上の基地局が設置済なうえ、周波数利用効率が高く通信品質も安定している。1つの基地局がカバーするエリアは携帯電話のマイクロセル方式に比べると狭いが、多数の基地局でユーザを分散するため、1人あたりのスループットを高く保てるという利点もある。
新幹線から高速通信が可能に
時速300キロ以上で高速データ通信が可能なことも、WILLCOM COREで注目される点の1つ。あくまでウィルコムが実施したフェージングシミュレータ上での評価だが、サービスが開始されれば自動車はもちろん新幹線で移動中も高速通信が可能ということになる。ビジネス用途での需要も見込まれるところだ。
関連記事
- ワイヤレスジャパン2008:「WILLCOM CORE」は、現行PHSとのデュアル端末でスタート――ウィルコム
試験サービス開始まで1年を切ったウィルコムの次世代PHSサービス「WILLCOM CORE」。同社 次世代事業推進室の上村治室長が、ワイヤレスジャパン2008で講演を行い、サービス開始までの展望を語った。 - 次世代PHSのサービス名は「WILLCOM CORE」──新幹線内でもブロードバンドを実現
ウィルコムは5月26日、2009年のサービス開始を目指している、2.5GHz帯を利用した次世代PHSのサービスブランド名を「WILLCOM CORE」に決定したと発表した。 - ワイヤレスジャパン2008 キーパーソンインタビュー:「電話」以外の提案力で携帯キャリアに差をつける――ウィルコム 土橋匡氏
音声定額やデータ定額をいち早く導入し、法人市場を牽引してきたウィルコム。しかし携帯キャリアも相次いで定額を導入し始めたことから、苦しい戦いを強いられている。次世代PHS「WILLCOM CORE」の導入を目前に控えた今、ウィルコムはどのような戦略で法人顧客をつなぎ止めようとしているのか。同社副社長の土橋匡氏に聞いた。 - ウィルコムフォーラムリポート:ちょっと先行く最新PHSのビジネス利用法
ウィルコムの年次イベント「WILLCOM FORUM」では、最新の端末を活用する多彩なビジネスソリューションが紹介された。その中からユニークなものをリポートしよう。 - 「ウィルコムはガラパゴスを目指さない」──「03」「CORE」発表
シリーズの集大成という「WILLCOM 03」や次世代PHS「WILLCOM CORE」を発表したウィルコムの喜久川社長。「ガラパゴスケータイは目指さない」と国内事業者と一線を画す姿勢を明確に。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.