CATVと連携した地域限定放送──JCN中野とKDDIのエリアワンセグ実験
10月11日と12日に開催された「中野まつり」の会場で、JCN中野、JCN、KDDI、そしてKDDI研究所が協力し、既存のCATVのインフラを活用したエリアワンセグ放送の実証実験を実施。来場者が手持ちのワンセグケータイで楽しめる地域限定放送を行った。
10月11日と12日の2日間、東京都中野区にあるJR中野駅の近隣で「中野まつり」が開催された。これに合わせて、地元のCATV事業者JCN中野とジャパンケーブルネット(JCN)、KDDI、KDDI研究所の4社が協力し、中野駅北側に位置するサンプラザ中野と中野区役所前の広場を中心としたエリアで地域限定ワンセグ放送(エリアワンセグ)の実証実験を実施。来場者が自分のワンセグケータイで、祭りの出し物などを視聴できる取り組みを行った。
今回のエリアワンセグの実験は、KDDI単独ではなく、JCNとJCN中野と協力していることからも分かるとおり、既存のCATVのインフラを組み合わせて放送を実現したのが特徴だ。KDDIがCEATEC JAPAN 2008のブースでデモしていた、IP網を利用して放送を配信する「IP/RF」方式とは異なり、番組のデータはJCN中野が保有するケーブルなどを活用して配信した。使用チャンネルは既存の放送に影響を与えないUHF帯の37チャンネルを用いており、中野まつりが実験の場に選ばれたのも、既存の放送との干渉がないという条件をクリアできたからだという
放送用のアンテナは、JCN中野の保有する、地上6.5メートルほどの高さにある伝送用のケーブルに、増幅器と特定のチャンネル(今回はUHF 37チャンネル)だけを取り出すフィルタを取り付けて設置した。コンパクトなアンテナを使っており、カバーエリアは半径約200〜300メートルほど。
今回の実験では、番組の編成などはJCN中野が普段使用している設備を利用したため、会場には中継などをサポートする簡単な設備だけを配備。映像は電波を使うのではなく、放送に使うCATV用のケーブルを活用して会場から放送局に送信していた。既存の設備を利用することから、コストもある程度抑えることができる。また今回の放送では中野まつりの中継のほか、スタジオと会場を適宜切り替えたり、実験で流しても問題ないCMだけを選別して流したりして放送したが、こうした番組編成を放送局側で簡単にコントロールできるのもポイントだという。
中野まつりの会場の一角では、JCN中野がブースを出し、実際の映像をテレビやワンセグケータイで紹介。ワンセグチューナーを付けたPSPや「DSテレビ」を装着したニンテンドーDSなども展示しており、リポーターや中継クルーが各所で撮影した映像をリアルタイムでワンセグで視聴できる様子や、JCN中野の地域向け放送なども視聴できることをアピールした。またJCN中野のコミュニティチャンネルで、中野まつりでエリアワンセグが視聴できることを告知をしたり、ブースにケータイを持ち込めば係員が設定してくれることなども案内したりしていたため、ケータイを持ち込む人も結構いたそうだ。
会場でのデモを見て、初めてワンセグに興味を持ったユーザーや「このケータイでも見られるのか」と手持ちの端末を持ってブースに来る来場者、「自分のDSでも見られるの?」と聞く子供などもいたという。エリアワンセグを視聴した人の反応はいずれも好意的で、中継で実際に自分の姿がワンセグケータイに映っている様子を見て喜んだりする人もいた。
ちなみに会場で案内されていた設定方法は、
- 1キーを押してNHK総合・東京(27チャンネル)を選局する
- 操作画面(データ放送が表示されていない画面)を表示する
- 十字キーの右を長押しする
- 放送波スキャンが28チャンネルから始まる
- 37チャンネルでJCN中野を検出する
というもの。機種によって若干の差異はあるものの、ほぼ共通の操作で設定できるとのことで、もちろんau以外の、NTTドコモやソフトバンクのワンセグケータイでも視聴可能だ。
エリアワンセグの課題の1つには、ユーザーにケータイのチャンネル設定を変更してもらう必要があることが挙げられる。NTTドコモでは、携帯サイトからワンセグの周波数を設定する「media to」機能を活用したエリアワンセグの実験を行ったことがあり、その際にはFeliCaの三者間通信を使って簡単に視聴できる仕組みを用意していたことに比べると、やや手間がかかる部分はある。しかし、ユーザーがすでに持っているワンセグケータイで地域限定のコンテンツを気軽に楽しめる取り組みとして、エリア限定ワンセグは非常に興味深い。今後もその動向には注目しておくべきだろう。
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