日本ケータイの世界再進出をサポート――Symbian Foundationのウィリアムズ氏:神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)
携帯電話向けプラットフォームの覇権争いが激化する中、Foundationを設立し、オープンソース化の道を選んだSymbian。新たな体制下でリリースされるSymbian OSは、日本の端末メーカーにどのような利益をもたらすのか。初代エグゼクティブ・ディレクターのリー・ウィリアムズ氏に聞いた。
多彩なハードウェア上での高いパフォーマンス実現を目指す
── Appleの「iPhone 3G」ではハードウェアとOSを垂直統合的に開発して反応速度の速さを実現し、使いやすいスマートフォンとして人気を集めています。一方、Symbian Foundationのスキームでは、OSと端末(ハードウェア)の開発が水平分業となり、さらに複数メーカーの端末をサポートすることになります。こういった体制で、iPhone 3Gに負けない反応速度や一貫性のある使いやすさを実現できるのでしょうか。
ウィリアムズ氏 iPhone 3Gとの比較ということですが、(iPhone 3Gという)『1つのハードウェア、1つの構成・仕様』のみでパフォーマンスを出せるというだけでは、(OSとして)十分ではないと我々は考えています。ソフトウェアプラットフォームというのは、幅広いハードウェア上で良いパフォーマンスを出す必要があるでしょう。
例えば端末によって、グラフィックアクセラレーターのチップ性能が高いものもあれば、低いものもある。しかし、そういった端末構成の差があったとしてもきちんとサポートし、パフォーマンスを出していかなければなりません。Symbian Foundationとしては今後も、多くの構成・仕様の端末をサポートし、それぞれにおいて高いパフォーマンスを実現していきたいと考えています。
ただ、その一方で、iPhone 3Gが『うまくやっているな』と感じる部分もあります。例えばアプリケーションやタスクの切り替えで発生する待ち時間において、あたかもパフォーマンスが出ているように(アニメーションなどで)演出している。そういったユーザーエクスペリエンスにつながる部分は、Symbian Foundationのエコシステムでも吸収していきたいと考えています。
── 今後のエコシステム競争では、学生や若い開発者の育成と獲得が重要になります。その点でAppleやMicrosoft、Googleなどは高い知名度を持ち、若い開発者を獲得しやすい環境にあります。一方でSymbian OSは、それらと比べるとブランド力でやや劣るという印象があります。今後、モバイル向けOSのエコシステムが重要になる中で、一般層も含めて広くブランド力が重要になるわけですが、Symbian Foundationとしてどのようなブランド戦略を考えているのかお聞かせください。
ウィリアムズ氏 Symbian OSのこれまでのブランド戦略はAppleやMicrosoftとは違います。中身のブランド戦略とでも言いましょうか、ただ単にブランドの知名度をだけではありません。今後のSymbian Foundationのマーケティング戦略では、エコシステム全体で利用するブランドガイドラインを用意し、(参加する企業全体で)ブランドを訴求していきます。さらに消費者やデベロッパーに共鳴するようなブランド戦略をとっていきます。
オープンソース化で、家電やPND、ビジネス機器も視野に
── 2010年以降、モバイル機器向けOSのエコシステム競争の中で、Symbian Foundationはどのようなポジションを取っていると考えていらっしゃるのでしょうか。
ウィリアムズ氏 将来のことは推測するしかないわけですけれども、2009年上期にSymbian Foundationのメンバーが技術仕様にアクセスできるようになります。その後、2010年には(Symbian Foundationの)技術仕様が公開されます。これによりプラットフォームはオープンなものになり、その資産は(モバイル業界の)デファクトスタンダードになるでしょう。
これらSymbian Foundationのプラットフォームの対象は、まずは携帯電話やスマートフォンすが、もっと大胆な予想をすれば、(その対象は)ほかのデジタル機器やエンタテイメント機器にも展開していくのではないかと考えています。
── それはつまり、ポータブルメディアプレーヤーやゲーム機、PNDなどもSymbian Foundationのターゲットとして見ているということでしょうか。
ウィリアムズ氏 いや、それよりももっと対象は広いですね (笑)。大胆なビジョンでいえば、世界ではインターネットに接続されたPCが数多くありますが、これはまだ(ネットの広がりという点では)表面をなぞらえたに過ぎないと考えています。
モバイルという観点では、もっと大きく人々の生活を変えていけるはずですし、それを向上していけるはずです。想像力を広げれば、あらゆる家電やビジネス機器、エンタテインメントに関わる端末など、すべてがSymbian Foundationの技術の対象になると考えられます。
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