変革期に入る“ケータイ”。それを感じた2008年:ITmediaスタッフが選ぶ、2008年の“注目ケータイ”(ライター神尾編)(2/2 ページ)
iモード登場から10年。日本の「ケータイ」は成熟を極め、進化の袋小路に入りつつある。iPhoneやWindows Mobile端末など、異文化的なスマートフォンとの共存共栄が進めば、新たなケータイ像が見えてくるだろう。
デザイン、テクノロジー、商品企画の部門賞は?
さて、ここからは特定の分野に秀でていたモデルを部門別にノミネートしていきたい。総合ベスト3には入らなかったものの、どれも魅力的な端末である。
デザイン賞:「P-01A」(パナソニック モバイルコミュニケーションズ)
いわゆるデザイナーズモデルではないが、コンパクトでバランスのよい折りたたみボディと、横画面でワンセグやゲームを楽しむことを両立させた「Wオープンスタイル」を評価したい。縦横両開きは「P905i」から始まったが、最新の「P-01A」はWオープンスタイルに合わせてキー配列を変えるギミックを搭載した。ユニークなデザインで、ケータイのフォルムの新しい可能性を見せてくれた。
商品企画賞:「Sportio」(東芝)
筆者が今年最もすばらしい商品企画と感じたのが、auの「au Smart Sports」と、それに合わせて作られた「Sportio」だ。スポーツをする人のために作られた斬新なデザインと、目的に沿って機能を絞り込むという手法は、久々にauの優れた商品企画力を感じた。SportioはAppleのiPod shuffleに匹敵するアイデア勝ちの企画だと思う。
残念ながら販売面ではふるわなかったが、auの魅力はセンスのよいコンテンツサービスの企画開発力と、それに合わせた端末作りにあることを再確認させられた。KDDIには今後も、Sportioのような端末を誇りと意欲を持って投入してもらいたい。
テクノロジー賞:「SH-03A」(シャープ)
シャープが満を持して投入したカメラケータイの1つが、「SH-03A」である。デザインはオーソドックスな折りたたみ型ながら、800万画素CCDカメラとタッチパネルを搭載している。さらにQRコードと名刺を自動判別して読み取る機能など、スペック面では申し分のないモデルだ。ここまで高性能で多機能なモデルは、海外のスマートフォンまで見渡しても、それほどはないだろう。それでいて全体的に使いやすいのもシャープ製モデルの特徴で、全般的に優秀なモデルとなっている。
一方でテクノロジーを重視したせいか、SH-03Aのデザインやサイズのバランスは先々代の「SH905i」よりも大きく後退してしまった。もう少しスリムで、デザイン面でも洗練と真価が見られれば、iPhone 3Gに正面から対抗する「2008年を代表する1台」になれたと思うと残念だ。来年は、高性能かつスリムで洗練されたデザインにまとめることにチャレンジしてほしい。
特別賞:「Touch Diamond」(HTC)
iPhone 3Gと並んで、今年、話題性のあったモデルといえば、HTCのWindows Mobile搭載スマートフォン「Touch Diamond」だろう。このモデルはイー・モバイルを筆頭に、ドコモやソフトバンクモバイルなどに広く展開されており、“グローバルなスマートフォン”がどのような端末ビジネスを展開するのかを見せてくれた。
端末単体でも、これまでのWindows Mobile搭載機よりも使いやすさが向上している。iPhone 3Gと比べるとUIの洗練で見劣りするが、日本のスマートフォン市場を活性化する意味で重要な1台だ。
来年以降は、日本でもWindows Mobileのエコシステムが急速に成長しそうだ。今後さらに、Windows Mobileが使いやすい環境になることにも期待し、Touch Diamondを特別賞として評価したい。
2009年は「変化の年」になるか
さて、こうして2008年に印象に残った端末を振り返ってみると、やはり今年は“潮目が変わり始めた”と感じる。iPhone 3Gはセンセーショナルな1台だったが、それ以外の端末を見ても、これまでの連続的なケータイの進化が成熟し、新たな段階を模索すべき時期に来ていることは明らかだ。
2009年は、次の10年に向けた重要な節目になる。端末メーカーを取り巻く市場環境は厳しいが、その中で、来年を「変化の年」にできるかどうか。ユーザーに新たな未来を提示できるかが、今後のメーカーの成否を分けそうだ。
関連キーワード
iPhone 3G | N-02A | EXILIMケータイ W63CA | au | Sportio | SH-03A | HTC Touch Diamond | P-01A | NTTドコモ | Windows Mobile | カシオ計算機 | ソフトバンクモバイル | Wオープンスタイル | HTC | 携帯電話 | au Smart Sports | イー・モバイル | 神尾寿 | FeliCa | フラッグシップ
関連記事
- 神尾寿のMobile+Views:本当にiPhone 3Gは“失敗した”のか
「失速」「敗戦」といった報道が続いている日本市場での「iPhone 3G」。しかし発売から3カ月ほどの販売状況で、従来の携帯電話端末と並列で比較し、その立ち上げが失敗だったと断じていいのだろうか。日本でiPhone 3Gが“離陸”する可能性を考察する。 - 「iPhone 3Gを持っている人は別人種」──絶対の自信を見せた孫正義社長
ソフトバンクは8月5日、2009年3月期第1四半期の決算を発表したが、その会見はさながら「iPhone 3G」の発表会だった。孫正義社長は自身が中国に出張した際に、iPhoneだけを使い、PCを一度も使わなかったエピソードを披露した。 - iPhone 3G」がもたらす“ケータイの未来”
「iPhone 3G」の国内発売が、いよいよ明日7月11日に迫った。すでに予約で買えることが確定した人がいる一方で、まだ購入の決断が下せない人、並びに行こうかどうか逡巡している人もいるに違いない。そんなiPhone 3Gが気になる多くの読者のために、“一足先に”iPhone 3Gを体験した神尾寿氏が、そのインプレッションを詳細に報告してくれた。 - 開発陣に聞く「N-02A」:スリムでも妥協しない、“iμ”3代目の集大成──「N-02A」
厚さ12.9ミリのスリムボディに、“いまどきのケータイ”に必要な機能を欠かさず搭載。NECの「N-02A」は、今までのスリムモデルに若干存在した「薄いから許して」という妥協をしない、デザイン+高機能を両立する端末に仕上がった。発売早々、好調に売れているというこの端末に込められた意図や開発の裏側をNECの開発チームに聞いた。 - 写真で解説する「N-02A」
高性能でスリムなワンセグケータイ「N906iμ」のコンセプトを引き継ぎながら、フルワイドVGAの3.2インチ液晶を搭載し、カメラを進化させた「N-02A」。ダイヤルキーが多彩なパターンで色鮮やかに光る「カラフルキーイルミネーション」も楽しい。 - STYLEシリーズ:高性能な“スリムワンセグケータイ”「N906iμ」が進化、カメラは5.2Mに――「N-02A」
NEC製の「N-02A」は、ハイスペックなスリムワンセグケータイとして人気を博した「N906iμ」がスペックアップしたモデルだ。厚さ12.9ミリを維持しながら、フルワイドVGAの3.2インチ液晶や520万画素カメラを備えた。 - 荻窪圭が聞く「EXILIMケータイ W63CA」:「EXILIMケータイ W63CA」のカメラ機能は“ここ”が進化した
2代目EXILIMケータイとして発売された「EXILIMケータイ W63CA」は、国内のケータイでは最高クラスとなる809万画素カメラや、世界初となるワイドVGAサイズの3.1インチ有機ELを搭載する。前モデルの「EXILIMケータイ W53CA」からカメラ機能はどこが進化したのか。カシオ日立モバイルコミュニケーションズの開発陣に話を聞いた。 - 荻窪圭の携帯カメラでこう遊べ:操作性やレスポンスが向上、8.1Mピクセルならではの描写力はさすが──「EXILIMケータイ W63CA」
待望の2代目“EXILIMケータイ”「EXILIMケータイ W63CA」が登場。国内携帯カメラ最高クラスの8.1MピクセルCMOSをはじめ、顔認識AFや逆光補正機能など、デジカメのトレンドもしっかり取り入れて大きく進化した。今度もどれだけ“EXILIM”しているのか、早速その画質と使い勝手をじっくりチェックしていこう。 - 8.1MカメラにWVGA有機EL、ワンセグも搭載する“全部入り”──「EXILIMケータイ W63CA」
カシオ計算機のデジカメブランド“EXILIM”を冠したデジカメケータイが、さらなる進化を遂げて登場。カメラの画素数は8.1Mピクセルになり、3.1インチのVisual WVGA有機ELを搭載。EXILIMケータイW53CAにはなかったワンセグも備えた。 - PRIMEシリーズ:横に開くと表示が変わる“2WAYダイヤルキー”、横向き進化のWオープンスタイル──「P-01A」
パナソニックモバイル製の「P-01A」は、前モデルのP906iがさらに進化したWオープンスタイルのハイエンドモデル。縦開きと横開きでダイヤルキーの表示や配列が変わる“2WAYキー”を新たに備え、横開き時もそのまま文字の入力が可能になった。キングダムハーツやレイトン教授といった人気ゲームもプリインストールする。 - カジュアルにスポーツを楽しむ、超小型・軽量のストレートデザイン──「Sportio」
“au Smart Sportsを楽しむため”に誕生した、小型・軽量のストレート端末が東芝製の「Sportio」。鮮やかなカラーリングとカジュアルなデザインで日常の運動を楽しめるRun&Walk連携に加え、動画配信サービス、ワイヤレス音楽再生などの最新サービスにも対応する。 - PRIMEシリーズ:800万画素CCDカメラをタッチパネルで快適操作、光TOUCH CRUISERも搭載――「SH-03A」
シャープ製の「SH-03A」は、タッチパネルの搭載で注目を集めた「SH906i」の後継機種。タッチパネルと光TOUCH CRUISERを継承するほか、カメラが800万画素CCDに大きく進化した。
関連リンク
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.