2009年は“端末市場の縮小”が構造変化を促す──NTTドコモ 辻村清行副社長:神尾寿のMobile+Views(2/2 ページ)
オープンOSの世界を積極的に支援していくと話したNTTドコモ。そしてそのオープンOSの世界は既存のiモードのエコシステムとは並存していくという。では、その並存する世界をどう実現していくのか。端末販売市場が縮小する中で、ドコモが考えるスマートフォンの役割、そして販売会社のあるべき姿を聞いた。
── と、言いますと?
辻村氏 いろいろな構造変化のシナリオがあると思います。
1つにはメーカー同士で、プラットフォームを共有する。その提携にはいろいろな形があると思いますが、メーカー同士の連携は今後さらに重要になるでしょう。
また、もう1つ(日本)メーカーが重視しなければならないのが、「海外市場」です。世界には10億台の市場があるわけですから、メーカーはもっと海外進出を考えなければなりません。
── しかし、日本メーカーは海外進出に慎重です。
辻村氏 国内市場が縮小していますから、(日本メーカーは)「国内でも苦しいのに、海外市場に打って出る余力はない」とおっしゃるわけですけれども、それでも海外の10億のマーケットに出て行くことは重要です。ドコモとしては、現行の3Gや今後のスーパー3G(LTE)で海外市場との連動性を高めていきますので、それをメーカーはビジネスチャンスにしてほしい。
── 販売数の激減は、日本メーカーだけでなく、販売チャネルの経営環境にも大きな影響を与えています。2008年は携帯電話販売会社大手のテレパークとMSコミュニケーションズが合併してティーガイアが誕生するなど、販売チャネルにも業界再編の動きが出てきました。2009年以降、販売チャネルを取りまく環境はどのように変化していくのでしょうか。
辻村氏 これから販売チャネルも大きく変化していくと思いますよ。全体の販売市場が縮小することで、販売台数に応じた代理店手数料制度だけでは(ビジネスが)成立しなくなってきます。各販売会社が、新サービスの販売やアフターケアの部分で優位性を出していく必要があります。
また、もう1つ重要なのが「スマートフォン」です。スマートフォンはPCに近い商品ですので、これまでの携帯電話と同じようには売れません。販売からアフターケアまで、スマートフォンに適したお客様サポート体制が必要になります。
── 現行の(キャリアが実施している)販売スキル認定制度では、スマートフォンはサポートし切れていませんね。
辻村氏 そのとおりです。今の販売員スキル認定制度では、スマートフォン(で必要になるサポート能力)に追いつきません。しかし、逆にここは販売会社にとってビジネスチャンスでもあります。
今後、スマートフォンの普及を図っていった時に、お客様に対する手厚いサポートは必要になるわけです。当然ながら、スマートフォンユーザーの裾野が広がれば、ドコモショップなど販売店にお客様が(スマートフォンの)サポートを求めて来ます。今後は、販売会社ごとのサポート能力やコンサルティング能力が求められるようになってくるでしょう。
── しかし、規模の小さい販売会社では、スタッフのスキル向上に投資できるかが、経営上の課題になりそうです。
辻村氏 新しいビジネスモデルを構築する中で、(販売会社が)資本力を高める必要性は当然出てきます。そこでは合従連衡も含めた構造変化がでてくると思います。
── 国内の端末メーカーと同様に、販売会社も変化していかなければならない、と。
辻村氏 変化していかなければならないでしょうね。ビジネスモデルを一段高いレベルに上げなければなりません。我々ドコモとしても、販売店評価制度を大きく見直していきます。
今後はBlackBerry Boldをはじめスマートフォンのラインアップが増えますし、ドコモとしても将来的なマス市場への展開に取り組んでいきます。そこでスマートフォンがきちんと取り扱える販売会社と、そうでない販売会社は差が出てくるでしょう。しかし、これは販売会社にとってビジネスチャンスになりえると思いますよ。
(続く)
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