スマートフォンは太いものに巻かれていく:ITmediaスタッフが選ぶ、2013年の“注目端末&トピック”(編集部長浜編)
スマートフォン市場は、ボードゲームのモノポリーみたいだ。最後に青マスの2つ目を踏むのはどこだ。
大画面スマートフォンの可能性を広げる挑戦「GALAXY Note 3」
2013年に登場したスマートフォンで、超私的に注目したいのが「GALAXY Note 3」だ。ハイエンドモデルの大画面化が進むAndoridスマートフォンで、ある意味最も先鋭化しているのがこの機種といえる。特に、手書き入力した文字を対応するアプリのテキストデータとして利用できる「アクションメモ」は、ペン入力がデジタルデバイスで有効な入力方法としてようやく使えそうな可能性を示している。
ただ、GALAXY Note 3も、テキストデータとして利用できるのは、実質的に検索キーワードとメッセージの送信先アドレスとタスクリストの項目だけなので、ペン入力が活用できる範囲は依然として限られる。手書き入力した文字をプレーンなテキストデータにしてペーストできるテキストエディタがあるだけでも、ペン入力の可能性はかなり広がるはずだ。
キラールータが決めるWiMAX 2+の運命
10月31日から正式運用が始まったWiMAX 2+は、現時点で下り最大110Mbpsという高速なテータ通信速度をUQコミュニケーションはアピールする。しかし、WiMAX 2+に対応した現時点で唯一のデバイス「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ HWD14」を使って無線LANでデバイスと接続した場合、最大でも40Mbps台、平均すると20Mbps台とLTEとあまり差がない速度にとどまっている。UQコミュニケーションの見解では、無線LAN接続で20〜40Mbps以上の通信速度は難しいとしている。
となると、WiMAX 2+でも最大のメリットは「容量無制限」ということになる。現在は、2年間の“暫定措置”となっているWiMAX 2+の容量無制限だが、2年経っても継続を希望するユーザーは多いはずだ(容量無制限だからWiMAX/WiMAX 2+を選択するユーザーが大多数だろう)。オンラインストレージが普及して、モバイルデバイスでも撮影した画像のバックアップを日常的にするようになると“7Gバイトの壁”も安心ではない。さらに、フルWindowsが動くモバイルデバイスの登場と普及でいとも簡単に超えてしまうだろう。こうなると、モバイルネットワークのインフラとして容量無制限のWiMAX 2+以外に選択は難しい。
先に述べたように、WiMAX 2+が使えるデバイスは、現時点で「Wi-Fi WALKER WiMAX2+ HWD14」しかない。WiMAX 2+とLTEを自動で切り替えるハイスピードプラスエリアの対応は、WiMAXの弱点をカバーするいい仕組みではあるが、それはそれとして、重視するポイントがそれぞれ異なる(それは重さであったりバッテリー駆動時間であったり受信感度であったり)多彩なモバイルルータをユーザーが選べる自由も必要だ。世界でWiMAXが成功したのはほぼ日本だけという状況だが、これは、WiMAXの立ち上げで多くの企業が力を貸したこととUQコミュニケーションがエリアを拡大する努力をしてきたことに加えて、使いやすいモバイルルータが存在したことの影響は大きい。
WiMAX 2+でも、そのような「キラーデバイス」が普及に大きく貢献するはずだ。
G'z Oneシリーズが終わってしまった
NECカシオモバイルとパナソニックがコンシューマー向けスマートフォンから撤退した。防水防塵耐衝撃性能を備えたタフネススマートフォン「G'z One」シリーズも消滅する。G'z Oneシリーズは「売り上げ第一位」となる性質のモデルではないが、アウトドア利用では絶対の信頼があるG'z Oneシリーズは、特定目的ではあるが高い評価を得ていた。
いまのスマートフォンでは、こういう「個性的なモデル」が存在できない。グローバル規模のスケールメリットがものをいう価格競争力がすべてを決めてしまうため、作るほうも売るほうも多くのユーザーに支持してもらえるモデルのスペックにあわせるしかない。ハードウェア選択の自由が狭くなっていくことは、ユーザーにとってもいいことではないと思うが、携帯電話の販売ランキングを見ると、ユーザーはそう考えていないことを示している。
Windows8.1導入8インチディスプレイタブレット
2012年は7インチディスプレイを搭載したAndroidタブレットが主流になったが、2013年は8インチディスプレイを搭載した「Windows 8.1」タブレットが普及する兆しを見せている。日本だけの特殊事情と思いきや、全世界で同じ状況ということで、とあるブラウザゲームだけがブームの理由ではないようだ。
8インチディスプレイWindowsタブレットを多くのユーザーが支持しているのは、決して「Windows 8.1のタブレットを重視した操作性」を評価したのではなく、Bay Trail世代Atomの採用で「実用的な処理速度」を実現したことと、「手で持って普通に使えるサイズと重さ」を実現したからだ。
これまでのWindowsタブレットは、軽くても600〜800グラム、コンバーチブルタイプのUltrabookになると1キロを超えていたりする。このハードウェアで「片手で本体を持ってタッチ操作」というのは非現実だ。一方でAndroidタブレットでは、7インチディスプレイを搭載した300グラム台のデバイスが主流になっている。
ユーザーは、OSがAndroidだろうとWindowsだろうと、片手で持って使うタブレットは重さが300グラム台というのが基準になっている。Windowsが動くからタブレットは重くてもいいということにはならない。片手で使えるタブレットは300グラム台でなければならず、それでいて、フルWindowsが実用的な処理能力がなければならず、かつ、長時間バッテリー駆動ができなければならない。2013年の年末になって登場した8インチディスプレイ搭載Windowsタブレットは、その難しい要求をインテルの最新“Bay Trail”世代のAtomによって可能にした。
パフォーマンスの進化はもう必要ない、という声は(特にモバイル関係では)少なくないが、やはり、ハードウェアの進化は、ユーザーに新しい世界を開いてくれる。その意味で、ハードウェアの進化はこれからもさらに求められることになるだろう。
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