動画の撮影と再生、バッテリーを多く消費するのはどっち?――開発者用測定ツール「TRYGLE POWER BENCH」で分かること(1/2 ページ)
なにかと“バッテリーの持ち”が取り沙汰されるスマートフォン。トライグルが開発した測定ツール「TRYGLE POWER BENCH」を使って、普段の操作でどのように電力が使われているのかを計測してみた。
トライグルが開発したスマートフォン向け消費電力測定ツール「TRYGLE POWER BENCH」。前回はその概要と、開発のきっかけにもなったスマートフォンのバッテリー消費の実情について、トライグル代表取締役社長の冨森健史氏に話を聞いた。
今回は、スマートフォンでどんな操作をするとどのようにバッテリーが消費されるのか、実際にTRYGLE POWER BENCHで測定しながら説明してもらった。まず最初はディスプレイについてだ。前回も触れた通り、スマートフォンの消費電力はディスプレイの大きさに比例して増えてきた。では具体的にどれくらいの電流が流れているのか、有機ELを搭載したAndroidスマートフォンで測定してみた。
ディスプレイ点灯で消費電力は段階的に増加
ディスプレイオフの状態でしばらく放置→ディスプレイオン→メニューからブラウザ立ち上げ→ブラウザ操作(ネット接続、静止して閲覧、スクロール等)→ブラウザ終了→ディスプレイOFF→しばらく放置 という操作を行った場合の電流
このグラフの青い線は、スマートフォン全体が消費している電流のレベルだ。ディスプレイを点灯せず何も操作しない待受状態の消費電流はわずかだが、それでも定期的に最大200mAから400mAのピークが発生しているのが分かる。ちなみに、この定期的なピークの発生パターンはメーカーや機種によって違っているという。
「起動状態のスマートフォンにはデバイスを駆動させるためのベース電流が常に流れていて、さらに待受状態では通信とCPUの処理が定期的に発生しています。通信は基地局との接続状態を確認するための制御信号のやりとり、CPUの処理はOS(Android)自体やアプリのバックグラウンド処理などです」(冨森氏)
そしてディスプレイをオンにすれば消費電流は200mA台へ底上げされ、タッチパネルを操作するとその分だけ一時的に電流量が800mAから1000mAまで増えている。ディスプレイを点灯させるための電力に加え、タッチパネル入力とユーザーインタフェースを描画するための処理に電力が必要なためだ。
「スマートフォンの操作はタッチパネルがメインですから、ディスプレイが点灯すれば入力操作とユーザーインタフェースを描画するための処理が発生します。さらにブラウジングならネット通信が必要ですし、カメラを使うなら撮像素子などハードウェア用の電力が必要になる。こうして段階的に消費電流が増えていきます」(冨森氏)
例えば端末内の画像を表示するだけなど、通信やUIの描画処理が発生しない場合は、その分の消費電流が少なくて済むという。ではディスプレイの明るさについてはどうだろうか。こちらもユーザーがイメージしている通り、明るくすればするほど消費電流が増えていく。
「このグラフはディスプレイの輝度設定を3段階で計測した値です。この機種では明るさ(brightness)が10%の場合に160mAの電流が流れています。50%なら240mA、最大輝度の100%なら360mAと倍近い電流になりました。輝度を上げれば消費電力は増えますが、『明るさが半分なら消費電力も半分』というわけではありません」(冨森氏)
計測は有機ELディスプレイの背景を白1色(RGBの全LEDがすべて点灯している状態)にして行った。表示方式が違う液晶ディスプレイの場合も明るさについては同様の傾向を示すという。ただし、表示する色によって有機ELと液晶で違いが大きくなる。有機ELで背景を黒一色(RGBの全LEDが点灯していない状態)にした場合は、輝度を変えても消費電流にあまり違いは見られなくなるそうだ。
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