動画の撮影と再生、バッテリーを多く消費するのはどっち?――開発者用測定ツール「TRYGLE POWER BENCH」で分かること(2/2 ページ)
なにかと“バッテリーの持ち”が取り沙汰されるスマートフォン。トライグルが開発した測定ツール「TRYGLE POWER BENCH」を使って、普段の操作でどのように電力が使われているのかを計測してみた。
機内モードと動画撮影 ハードのオン/オフでどこまで違う?
ではディスプレイを使わない場合、つまり待受状態ではどうだろうか。次のグラフは、LTE圏内の待受状態(赤い線)と機内モード(青い線)の違いを計測したものだ。待受状態では4mAから11mAの小刻みな山が続き、数回おきにその山が20mAと倍程度に高くなる。これは「いつでも通信ができるよう、端末が常にウォーミングアップをしているため」と冨森氏は説明する。
そして、最大400mAと中央のひときわ大きな山が、LTEの通信が発生した際の消費電流。先に触れた通り、携帯電話やスマートフォンは待受状態であっても定期的に実際の通信が行われる。注目したいのは、その直後に3分の1くらいの山が発生している点。3Gスマートフォンの待受状態ではこうした通信が見られないそうで、LTE特有のグラフだという。また待受状態の通信は移動中や圏外で多くなり、その分消費電流も増える。これは端末が移動していることで基地局のハンドオーバーが起こったり、遠方の基地局を探すためだ。
携帯電話としての通信をすべてオフにする機内モードだが、通信に関連しないデバイスはオンの状態なため、操作していなくてもベース電流は流れている。また定期的に、プロセッサーが短時間だけなにかの処理をしているのが分かる。
次に、カメラで動画撮影をしている状態の測定を行ってもらった。カメラアプリを起動すると撮像素子などの専用ハードがオンになり、ディスプレイがファインダーになるため画面の描画処理が連続で発生する。その際の消費電流は600mAだが、録画が始まればメモリーへの書き込みなどで、700mAから800mAとさらに多くの電流が流れる。動画撮影は電力を消費する要素がいくつかも重なる、バッテリーには厳しい操作なことが裏打ちされた。
グラフでは録画中に2段階の山が発生しているが、冨森氏は「はっきりとした原因は詳しく調べないと分かりませんが、動画の手ブレ補正処理が影響しているかもしれません」と分析している。
撮った後の動画再生はどうだろうか。グラフを見ると、350mA程度と撮影時よりも半分程度の電流で済んでいるのが分かる。動画再生時はディスプレイが点灯状態になるが、撮像素子がオフになることや、カメラのファインダー画面を描画する処理もなくなること、メモリーの書き込みよりも読み込みのほうが電力が少なくて済むなど、録画時よりもバッテリーの消費が少ないようだ。
スマートフォンで動画を見る場合、端末に保存された動画ファイルだけでなく、Web上のストリーミングサービスを利用することも多いだろう。そこで、YouTubeを視聴している場合の電流も計測してみた。
グラフを見ると、動画(広告)の再生開始とともに動画をダウンロードするためのLTE通信が始まり、最大900mAの電流が流れ、その後500mA台で推移しているのが分かる。ただし、動画再生中でも所々に、電流値が下がる“谷”のような場所がみえる。これは動画ダウンロードのため通信のオン/オフが影響しているという。広告動画が終わって動画の本編が始まると、新たな通信が始まりまた500mAから900mAの電流が流れ始める。
「YouTubeはストリーミング形式で動画を配信していますが、途切れずスムーズに再生するようデータを先読みしてキャッシュしています。動画の再生中でもダウンロードが終わることがあり、通信が終われば消費電流はその分少なくなります」(冨森氏)
TRYGLE POWER BENCHで計測するスマートフォンの消費電流。今回はスマートフォンの基本的な操作でどのように電力が使われているのかを調べてみた。こうして見ると、端末のハードウェアはもちろんだが、アプリがどんなことをしているかで電力消費が大きく異なることが分かる。次回は代表的なアプリを使うことで、バッテリーがどのように減っていくのかをチェックする。
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