豪華な材料がズラリと並ぶ「Xperia Z4」 コストの増減を分解リポート:バラして見ずにはいられない(3/4 ページ)
先代の「Xperia Z3」と見分けが付かないほど、限定的なモデルチェンジだった「Xperia Z4」。しかし使われている部品や製造コストにはかなり差があるようだ。
コスト高の部分その1:特大サイズのフレキシブルプリント基板
フレキシブルプリント基板は略して「FPC」とも呼ばれる。主に基板同士を接続する延長コードのような役割を果たす。スマホで使われているFPCは通常、バッテリーを真ん中に配置して上下の基板を接続する細いものである場合が多い。
ソニーは伝統的に特大サイズのFPCを2枚使っている。また大きく長いだけでなく、複雑な形状をしているのも特徴だ。FPCは1枚の原板から切り出して製造されるが、少しでも枚数を稼ぐため、デザインブランド「Fendi」のロゴのように上下を入れ違えるなどして無駄なスペースを節約している。しかし業界関係者によれば、Z4のFPCは余りに形状が複雑なので、この手法は使われていない。これはコストアップ要因になる。
また通常のFPCは延長コードの役割だけなので電子部品を搭載する事は少ないのだが、Xperiaでは操作ボタン、センサ、外部接続端子を装備するなど多くの電子部品を搭載しており、これらFPCへの搭載部品もコストアップの要因だ。
Z4のFPCは日本メーカー製と思われ、その片側には一面に黒いコーティングが施されている。これがノイズ対策フィルムである。スマホの中ではさまざまな信号が飛び交っており、基板から基板へ信号を伝送するFPCはその影響を受けないようにしなくてはならない。このフィルムメーカーは100年以上インクビジネスを手掛けている日本の老舗だ。ITとは関係ないようなインクや塗装の技術が、電子部品に応用されているのが興味深い。
コスト高の部品その2:膨大な数のコネクタ
安く作る端末の場合、電子部品は極力基板に積み、どうしても収まらないものだけをコネクタで接続する。このためコネクタ数は2〜4個程度になる。しかしZ4のコネクタ数は14。環境センサーやカメラ、ヘッドフォン端子などはすべてコネクタ接続である。コストアップにはなるが、利点としては任意の場所にこれらの部品を配置でき、仕向地に合わせて部品を選択できるなど、拡張性に富む点が挙げられる。
コスト高の部品その3:熱処理機構
前述のとおり、Z4が採用するQualcomm製MSM8994プロセッサは発熱問題を抱えている。そのためPC顔負け、手作り感満載の方法で熱処理を実施している。
さすがにスマホで冷却ファンを回すゆとりはないが、筺体上部にあるプロセッサの直上に胴のパネルを設置し、同じく胴の熱伝導パイプを筐体の端から下まで伸ばしている。パイプが接しているパネル全体に素早く熱を拡散させ、一カ所だけが熱くなるのを防いでいるのだろう。
先代のZ3にも同じ機構が採用されていたが、Z4の方がパイプの太さが大きくなっているように見える。このような機構を採用しているスマホは多くないため原価は不明だが、銅の材料費、成型コスト、実装費などを考えると、安くはないだろう。
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