“中国のGoogle”、「Baidu」のサービスはどう使われているのか(2/3 ページ)
中国の検索最大手「Baidu」(百度:バイドゥ)は単なる検索サイトという規模を超え、次から次へと新サービスを打ち出して利用者を増やしている。「中国のGoogle」ともいわれるBaiduには、どんなサービスがあるのだろうか。
スマートフォンの普及で脱広告、O2O強化へ
Baiduの主力サービスは今も検索を中心したWebサービスで、収益の柱はオンライン広告だ。しかしスマートフォンの利用者が拡大し、検索サービスの利用者はスマートフォンやタブレットなどのモバイル機器がPCを上回っている。Baiduとしても今後はモバイルユーザーをターゲットにした事業を強化していく考えだ。
Baiduの2015年第3四半期の決算報告書にも、モバイル端末からの利用データが強調して記載されている。検索サービスのうちモバイル機器からの月間アクティブ利用数数は9月時点で6億4300万人、前年比26%増だったとのこと。またモバイル地図サービス利用者数は3億2600万人で、こちらは前年比34%増だった。
実際にスマートフォンでBaiduのWebサイトを開くと、PC版とは異なるユーザーインタフェースとなっている。スマートフォンでは検索窓だけではなく同社のサービスアイコンやニュースを表示しポータルとしての役割も果たす。スマートフォンの小さい画面から目的のサービスへアクセスしやすくしている分けだ。また「百度地図」のアプリはブラウザを利用するよりもデータ量を最大90%も削減し、少ないデータ利用量かつ低速な回線でもスムースに利用できるようにしている。しかも百度地図には「Uber」の機能が組み込まれており、地図を検索したら即座に車の配車を手配することも可能だ。
このようにスマートフォンからの使い勝手を高めるだけではなく、同社の事業モデルそのものをスマートフォン時代に合わせたものへと転換する動きも見せている。それは広告に頼っていた収益構造の多角化だ。QunarのようなB2CやIqiyiのような月額サブスクリプションサービスを増やしていくのはもちろんのこと、O2O、すなわちOnline to Offlineサービスの強化も進めている。
スマートフォンで検索して割引券を受け取り、店に行って商品を購入、支払いはスマートフォンを使い現金は不要、そのようなオンラインと実生活を結び付けたサービスへの投資をBaiduは進めている。2015年6月には「向う3年間でO2Oサービスに200億元(約3878億円)の投資を行う」と発表しており、早速7月にはO2Oクリーニングサービスの「e袋洗」への出資を行なっている。
広告以外からの収入、すなわちユーザーから直接収入を得るには、Web上で現金の代わりに利用できるオンライン決済サービスの構築が必要だ。現在、中国のオンライン決済サービスはAlibaba(阿里巴:アリババ)の「Alipay」(支付宝:アリペイ)が約8割と大きなシェアを握っている。Baiduは2014年に「Baifubao」(百付銭包:バイフバオ)の名称でサービスをリニューアルし、同社のサービスにBaifubaoを組み込みをはじめた。王者Alipayの壁は厚いものの、6億を抱えるモバイル利用者を引き込めばAlipayと並ぶメジャーサービスになる可能性は十分ありうるだろう。前述のQunarやIqiyiもBaifubaoでの支払いに対応している。なお2015年3四半期決算によるとBaifubaoの利用者数は4500万人となり、前年比520%増と急激に増えている。
Baiduはこのようにオンライン検索からWebサービス、そしてオフライン向けまで着々とサービスを広げている。今後もその手は弱めず、日常生活のあらゆる分野へと事業を拡大していくだろう。その背景にあるのはライバルのAlibabaと「Tencent」(騰訊:テンセント)の存在だ。
3社はそれぞれ、検索(Baidu)、EC(Alibaba)、ソーシャル(Tencent)と異なるサービスの出身だが、Webサービス、そしてスマートフォンの普及により3社が目指す方向は全く同じ「総合的な生活サービス」へと向かっている。
Googleが中国市場再参入を検討するなど外国企業も中国国内でのサービス展開を狙っているが、中国の消費者の細かい要求に迅速に応えるBAT=Baidu、Alibaba、Tencentの牙城を崩すのは難しい。検索という行為は「何かを知りたい、調べたい」という人間の基本的な欲求でもある。検索エンジンでシェアを押さえ、それを中心に複合的なサービスを提供しているBaiduは、中国の消費者にとってなくてはならないものになっているのである。
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