成人した娘とその父が、(娘が)思春期だったころを回想しつつ本音で語り合う連載「育児の答え合わせ」。脳内で考えてはいたけどいえなかったあんなこと、つい口を滑らせて誤解された余計なひとこと、恥ずかしくていえなかった言葉を、少し照れながらも赤裸々に語り尽くします。
- そもそものきっかけ:育児の答え合わせ 〜どうして我が家はこうなった?〜
今回のテーマは「育児ポリシー」。過去数回で、職業観や結婚観に大きなズレがあることを確認しあった鈴木親子。価値観がやや異なるお父様の育児で育った娘さんが、実際に親の立場になったとき、どんなポリシーで育児をしようと思うのか?
真逆の考え方で育てるのか、それとも意外に似たような考え方が根底にあるのか……を探るお話です。
父(60歳)
宇都宮在住で都内に勤務する実直な公務員。勤続42年で3週間後に定年退職を迎える。娘とは高校生のころからほぼ会話がない。
娘(25歳)
都内のIT系企業で働く社会人3年目のビジネスウーマン。高校3年時のある事件をキッカケに、父と会話が途絶えて今に至る。
小学5年生で携帯電話
――自分が親になったときを想像してみて、どんな育児ポリシーで子供を育てようと思いますか?
娘 子供が求める環境は用意してあげたいけれど、親のエゴを強制はしたくはない。両親は私に押しつけをすることなく育ててくれたし、それについては感謝しているので、自分も我が子を見守りながら育ててあげたいと思う。
――親の夢を背負わせるようなことはしない?
娘 自分勝手な価値観なのは分かっているけど、英語ができるように育ててあげたいかな。英語ができれば、公私にわたって有利だって今まさに自分が感じてるところなので、特に。私は英語教育をちゃんと受けさせてもらっていたのに、全然身に着けることができなくて今思うと申し訳なかったなって感じてる。
父 英語は母さんの希望で習わせたんだったな……。父さんはべつにそうさせたかったわけじゃない。ただ見守ってただけだ。
娘 一人暮らしは許してくれなかったけど、携帯電話はわりと早く与えてくれたっけ。
父 ずいぶん一人暮らしのことを根に持っているんだな……(苦笑)。携帯電話は、プリペイド式で毎月1000円って上限を決めて、買ってあげたのは覚えている。
娘 小5で持たせてもらった。メール1通10円とかって時代だった気がする。
父 そんなに早かったか?
娘 そうだよ。学校や習い事の場所が家から遠かったせいだと思うよ。
父 母さんとお前で決めて買ったんだろ。
娘 そう。
父 持ってたのは知ってたけど、買った理由と経緯は知らなかった。まあ、生活上必要なものだし、べつになんの問題もなかったけど。
娘 中1でガラケーに買い換えてもらったんだ。当時(12年前)からしたら早いほうだったと思うけど、どうして持たせてもらえたのかな?
父 母さんに理解があったんだろ。父さんは支払い担当だっただけで、詳しくは知らないよ(笑)。
娘 そういえば、パパにはメールも電話もほぼしたことなかったよ。
父 「(迎えに)来て」って業務連絡しか受けた記憶がないよ。
――自分から(習い事等の)環境を要求したことはありますか?
娘 公文とかヤマハとか習い事が多すぎて、むしろ「やめたい」って文句を言ったことはある。しかも小学校が家から徒歩で30分以上かかって、移動時間だけでも大変だった。
父 そうだったんだ。
娘 時間がなくて友達と全然遊べなくて、習い事をするか、一人で本を読むしかできなかった。小学3年生のころはつらくて毎晩泣いてたけど、ママに「将来、役に立つから……」って説得されてしぶしぶ続けてた。パパは何も言わなかったね。
父 教育に関しては口出ししなかったな。父さん自身が勉強の仕方が分からないんだから、偉そうに命令はできないって思ってね。
寝る前に読み聞かせしてくれた思い出
娘 この数年はパパと私は会話がなかったけど、小学生のころは布団で読み聞かせしてくれたよね。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.