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画面の切り欠きは「意外と気にならない」 シャープがAQUOS R compactに施した工夫開発陣に聞く「AQUOS R compact」(前編)(1/2 ページ)

シャープの「AQUOS R compact」は、3辺狭額縁の丸みを帯びたボディーが特徴。なぜこの形状を採用したのか。インカメラをディスプレイの中に搭載した理由は?

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 シャープの「AQUOS R compact」は、丸みを帯びたボディーに3辺狭額縁の「EDGEST fit」ディスプレイを採用したスマートフォン。3辺の縁をギリギリまで狭めた結果、幅66mmのボディーに4.9型ディスプレイを搭載することに成功した。2017年夏に発売した新しいフラグシップモデル「AQUOS R」の特徴を受け継ぎつつ、新デザインを採用した小型スマホとして注目のモデルだ。

 既にauとソフトバンクから発売された他、1月下旬にはSIMロックフリー版も発売される予定。AQUOS R compactはどのような経緯で開発され、どんなところを工夫したのか。シャープの開発陣に話を聞いた。前編ではデザインやディスプレイの切り欠きにまつわる話をお届けする。

AQUOS R compact
「AQUOS R compact」
AQUOS R compact
シャープの開発陣

あえてコンパクトを選ぶ人は何かしら理由を持っている

AQUOS R compact
小林繁氏

 2017年に発売したAQUOS Rは好調に売れており、2016年夏のフラグシップ機種と比べて、146%の出荷台数を記録した。通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長の小林繁氏は「SNSでのフィードバックも好意的な反応が返ってきていて、満足度のポイントがかなり上昇しています」と手応えを話す。

 AQUOS RがスマートフォンAQUOSのブランド認知や好感度の上昇に寄与した――。そんな中で開発がスタートしたAQUOS R compactでは、デザインとサイズをもう一歩突き詰めた。小林氏はAQUOS R compactの想定ユーザーについて「あえてコンパクトな物(スマートフォン)を買うのは、自分の使い方を持っている方。スマホの接触頻度や情報感度が高い方をターゲットにしています」と話す。

 開発にあたり、ただサイズを小さくするのではなく、どのような形状かベストなのかを慎重に考えた。その一環でユーザー調査を行ったところ、「ポケットからさっと取り出してすぐに使うことを重視している人が多い」ことが分かった――と通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部の中野伶香氏は話す。「20〜40代で、SNSやニュースを小まめにチェックしたい人が当てはまる」ため、「持ちやすいサイズと形状」と「ストレスない使い勝手、操作感」を重要視した。

 携帯ショップにもヒアリングをした。「実際にコンパクトモデルを買う人は、どうやって端末を選んでいるのかを聞きました。出てきた声として驚いたのが、まずスペックを確認するのではなく、実機を手に取るということ。胸ポケットに入れたり、カバンのサイドポケットに入るかを試したりする人が多い。やっぱり形やサイズが重要だと思いました」と通信事業本部 パーソナル通信事業部 商品企画部 課長の楠田晃嗣氏は話す。デザインありきで端末の開発が進んだが、「従来とプロセスが逆転したので、開発は大変なことが多かった」と同氏は振り返る。

AQUOS R compactAQUOS R compact 中野伶香氏(写真=左)と楠田晃嗣氏(写真=右)
AQUOS R compact
デバイスありきではなく、デザインありきで開発がスタート

 一方、過去のEDGEST(3辺狭額縁)対応スマートフォンのデザインは角張っており、「長時間持つと手が痛い」という意見もあった。さらに、インカメラがディスプレイの下にあるので、自撮りをしにくいという不満の声も挙がっていた。そこで白羽の矢が立ったのが、シャープの「フリーフォームディスプレイ」。自由な形状のディスプレイを開発できるため、ラウンド形状と狭額縁の両立に成功。インカメラをディスプレイ上部をくりぬく形で搭載した。

 シャープはこの新しい狭額縁設計を「EDGEST fit」と呼んでいるが、この名称を決めるのは「相当悩みました」と楠田氏は振り返る。「EDGESTの名前は継続したい。それに加え、片手にフィットすること、ディスプレイとデザインが一体となってフィットすること、手とディスプレイがフィットすることを考えて、EDGEST fitとしました」(同氏)

AQUOS R compact
従来のEDGEST端末とは異なり、丸みを帯びた形状になった

画面の中にあるインカメラは気にならない?

 外観で目立つのは、ディスプレイをくりぬいてインカメラを入れたこと。自撮りをしやすくするための措置だが、ディスプレイへの“浸食”を極力減らすべく、カメラモジュールの先端を「富士山のような形」になるよう細くしている。もちろんレンズのサイズはAQUOS Rと同じだが、そのレンズが入る箱を小さくしたというわけだ。これはカメラモジュールを内製しているシャープだからこそできた芸当だといえる。

AQUOS R compact
インカメラがディスプレイに入り込んでいる
AQUOS R compact
左が従来機、右がAQUOS R compactのカメラモジュール

 それでも、ディスプレイの中にカメラがあるのはどうなのか……と感じるユーザーもいるだろう。楠田氏が「画面の中にカメラが入っているのは気持ち悪くない? という意見もけっこうあり、われわれも懐疑的だった」と話すように、シャープもこの点は懸念していた。

 そこで、従来のスマートフォンAQUOSのディスプレイ上部が疑似的に欠ける表示にして、社内のスタッフに使ってもらった。感想を聞いたところ「意外と気にならなかった」という声が多かったそうだ。Androidアプリは通知エリア用に上部を空けているものが多く、その上部の中央が欠けていても、操作性に影響が出ないためだ。「実はもともとあまり使っていない場所が削られているので、何の問題もなかったんです」と小林氏。

AQUOS R compact
AQUOS R compact
疑似的にディスプレイにインカメラが欠けた既存モデルを社内で試した

 ただし写真を全画面で表示すると、当然カメラの部分は欠けて表示されるので、この点は割り切りが必要だ。

AQUOS R compact
写真を全画面表示にすると欠けてしまう

 インカメラをディスプレイ内に入れたことで、自分撮りをする際に目線を合わせやすくなるというメリットも生まれる。「20〜40代が自撮りをするシーンが増えてきていますが、集合写真を撮る際にディスプレイを見るので視線がずれてしまいます。そこで、カメラに注意を向けさせる独自UIを設けました。AQUOS R compactは片手で持ちやすいので、(ハードとしても)自撮りの相性がいい端末だと思います」(中野氏)

AQUOS R compact
AQUOS R compactのインカメラは、セルフタイマーで撮影をすると、視線を誘導する表示になる(右)ので、目線ありの写真が撮りやすくなる
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