ソニー「Xperiaは開発、商品化スピードが他社に劣後している」――5G時代に向けて、逆転できるチャンスはあるのか:石川温のスマホ業界新聞
2018年度決算が好調な中、スマートフォン(携帯端末)事業の赤字が目立つソニー。事業責任者の石塚茂樹執行役は商品化スピードの遅さをその要因に挙げた。しかし、この事業を諦めるわけにはいかない。5G(第5世代移動体通信)の商用化が間近に迫っているからだ。
ソニーは5月22日、2018〜2020年度の中期経営方針を発表した。
エレクトロニクス、エンタテインメント、金融事業が好調のなか、唯一、赤字を垂れ流しているのがモバイル事業だ。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2018年5月26日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
吉田憲一郎社長は、モバイル事業について「今年度も赤字見込みであることは重く受け止め、総力戦で事業の安定化に取り組んでいる」とコメント。
Xperia事業について、ソニー 執行役EVPモバイル・コミュニケーション事業担当の石塚茂樹氏は「他社が狭額縁、ディスプレイサイズの拡大、複眼カメラなどを取り入れてきたが、それに対抗する商品を出せなかった。設計、開発、商品化のスピードが他社に劣後している。そのことをしっかり認識、改善することが必須だ」と敗因を認めている。
ソニーとしては、Xperia事業においては早急な回復は見込んでおらず、「集中と選択を行い、オールソニーでターンアラウンドを強化した上で、中期の時間軸でできるだけ収益を安定させていく」(十時裕樹EVP CFO)という。
どちらかいえば、5G開始に向けて、スマホだけではない、新たな事業で巻き返しを図りたいようだ。特に業務用カメラに5Gに対応させ、遠隔地でも高画質で中継できるといったソリューションを視野に入れる。
業務用カメラに5Gを対応させるには、アンテナ技術などが必要となる。そうした技術ノウハウを構築するためには、スマホでの蓄積が不可欠なわけで、ソニーとしては技術の取得という意味でも、スマホ事業はしばらく手放すつもりはないようだ。
個人的は、せっかくスマホを手がけつつ、デジカメやテレビなどのハードウェアを持っているのだから、もっと他の製品のLTE、さらに5G対応を進めていけばいいと思う。
特にデジカメに関しては、Androidと4Gに対応し、すぐに写真をアップできるような本格一眼ミラーレスがあってもいいと思う。本格デジカメを手がけつつ、スマホ事業を持っている会社はほかにはないわけで(一時はサムスン電子もあったが、デジカメ事業から撤退)、スマホと本格デジカメの融合はもっと進めるべきではないか。
カシオ計算機が撤退したように、コンパクトデジカメはスマホに取って代わってしまったが、本格デジカメとスマホは共存できるわけで、それこそ、ソニーのポジションが生きてくるはずだ。
ソニーが得意とする、ワイヤレスヘッドフォンだって、いまはスマホをつなげて使っているが、別にヘッドフォンに4Gや5Gの通信モジュールを内蔵させて、ダイレクトにストリーミング音楽が配信されてもいいように思う。
スマホ単体で、アップルやサムスン電子、ファーウェイを負かすのは相当、難しいが、スマホ以外のハードウェアをXperia化し、モバイル通信対応ブランデッドハードウェア群で勝負できれば、ソニーのモバイル・コミュニケーション事業はいまからでも巻き返しができるのではないだろうか。
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