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「iOS 12」で変わること、iOSとmacOSの関係は? WWDC 2018現地レポート(1/2 ページ)

WWDC 2018の基調講演では、OSの着実な進化に焦点が当てられていた。どちらかというと、ユーザーの使い勝手を向上させる取り組みが多かった印象だ。iOSとmacOSを統合するのかというウワサに対しては、明確に否定した。

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 「われわれは、顧客を中心に据えて、毎年メジャーなアップデートを発表してきた」――AppleのCEO、ティム・クック氏がこう語っていたように、WWDC 2018の基調講演では、OSの着実な進化に焦点が当てられていた。「ミー文字(Memoji)」など目を引く新機能の追加もあったが、どちらかというと、やや地味ながらもユーザーの使い勝手を向上させる取り組みが多かった印象だ。

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Appleのティム・クックCEO
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顧客中心主義であることがたびたび強調された

アプリの起動がより高速に

 最初に紹介されたのは、iOS 12でのパフォーマンス改善に向けた取り組みだった。現状のiOS 11は、「2013年にさかのぼりiPhone 5sからサポートしている」(クレイグ・フェデリギ上級副社長)。対応端末の広さはアップデート率や満足度の高さにつながっており、iOS 11は81%の端末にインストールされ、95%の満足度を誇るという。一方で、OSの高機能化に伴い、過去の端末では動作速度が低下していたのも事実だ。

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iOSやmacOSのアップデート内容を発表したクレイグ・フェデリギ氏
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iOS 11への高いアップデート率や、満足度の高さが示された

 Appleがまず手を入れてきたのもこの点だ。iOS 12の対象端末はiOS 11と同じで、フェデリギ氏によると「上から下まで高速になるように改善した」という。AppleはiPhoneに採用するAシリーズのCPUを独自に設計していることから、「このチームとも密に連携した」(同)。

 具体的には、CPUの処理速度の立ち上がりを早め、アプリの起動など、負荷のかかる処理を素早く終え、その後に処理速度を落としていくように挙動を変えたという。これによって、iPhone 6sでアプリ起動が40%、キーボード起動が50%、カメラ起動が70%程度高速化した。

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CPUチームと協調することで、より速くピークに達するようなパフォーマンス改善を施す。これによって、過去のiPhoneも高速化するという

Siri、おやすみモード、通知の改善

 Siriは、複数のタスクをまとめて処理できる「Shortcuts」に対応。それらを呼び出す言葉も登録でき、ユーザーが必要な処理を簡単に行えるようになる。基調講演のデモでは、帰宅時にルートを出すのと同時にiMessageを送り、そのまま好きなラジオ番組を再生するという使い方が紹介されていた。

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Siriは「Shortcuts」に対応。複数アプリのタスクを組み合わせて、ユーザー自身で設定したキーワードで話しかけることで、それらをまとめて起動させることができる

 ユーザーにとっては、「おやすみモード」や「通知」の機能が向上するのも、細かな点だがうれしい進化といえる。おやすみモードに設定しているにもかかわらず、iPhoneを見たら通知だらけでついついアプリを開いてしまったという経験をしたことがあるだろう。iOS 12ではここにも手が入り、朝になるまで画面上の通知を抑制する。

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夜間は、通知そのものを表示させないようにすることが可能に

 おやすみモードを、特定の場所にいる間だけオンにしておく設定も可能になる。デモで示されていたように、子どもと公園で遊んでいるときだけ通知が鳴らないようにできる。日本語のおやすみモード(英語では「Do Not Disturb」)という名称はそのままだが、“就寝”というよりも、“通知をおやすみする”という意味合いが強くなった格好だ。

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特定の場所にいるときだけ、一時的におやすみモードを有効にできるようになった

 さらに、同じアプリからの通知がグループ化されたり、簡単に通知を非常時にできたりと、通知管理の機能も強化される。ユーザーにとって不要な通知に煩わされる必要がなくなるというわけだ。アプリの開発を促進するWWDCでこれらの機能が発表されるのは、不思議な感覚を覚えたが、それだけ通知の数に悩まされるユーザーが増えたということだろう。冒頭で引用した「顧客を中心に置く」という考え方を、開発者に示したメッセージとも捉えることができる。

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通知を止めたり、グループ化したりと、ユーザーの使い勝手を向上させる改善が多数盛り込まれている

スマホ中毒を防げる「Screen Time」

 このAppleの考えをもう一歩推し進めたのが、「Screen Time」と呼ばれる管理機能だ。Screen Timeは、文字通り画面をどのくらいユーザーが見ていたかを計測する機能。週ごとに、どんなアプリをどの程度使っていたのかが、レポートとして表示される。子ども向けのアクセス制限機能にも応用でき、親の端末からレポートにアクセスできる。

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利用したアプリの頻度や通知の頻度などを週次でレポートする「Screen Time」

 特定の時間だけアプリが立ち上がらないようにしたり、一部のアプリだけが起動できるようにしたりといった制限をかけることも可能だ。子どもの“スマホ依存”は社会問題化しており、日本でも一部のキャリアが時間帯でアプリを制限できるサービスを提供している。Screen Timeは、これをOSレベルで実装したもの。親にとっても、より子どもに使わせやすいOSになることは間違いない。

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子ども用のiPhoneに、時間帯などでアプリの制限をかけることが可能になる

ユーザーの分身「ミー文字」が作成可能に

 利便性の向上という観点では、iPhone Xに搭載されたアニ文字も進化。新たに“舌”の動きに追随するようになる他、ユーザー自身の分身ともいえる「ミー文字」を作成可能になった。ミー文字は、Galaxy S9、S9+に搭載される「AR絵文字」に近いアイデアのようにも見えるが、どちらかというと、自動的にユーザーに似せるわけではなく、細かなカスタマイズによってアバターを作れる機能といった方が正確だ。その意味では、任天堂の「Mii」に近い。

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アニ文字は種類が増え、舌の動きの検知にも対応する
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自分を模したキャラクターを作れるミー文字
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FaceTimeは最大32人のグループ通話が可能になり、ミー文字も利用できる。写真で一番大きく表示されているのは、ティム・クックCEOのミー文字

 標準アプリにも見直しがかかり、「Apple News」アプリ(日本では未提供)が「株価」アプリと連携したり、ボイスメモのユーザーインタフェースが変わったりといった強化も図る。ボイスメモアプリはこれまでiPhoneのみのプリインストールアプリだったが、iOS 12からはiPadにも提供される。iBooksはApple Booksにブランディングを変更する。

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ボイスメモアプリのユーザーインタフェースが刷新され、iPad向けの提供も開始される
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