“欲を言えばあとちょっと”を加えた「AQUOS sense plus」 シャープ流SIMフリー市場での戦い方:SIMロックフリースマホメーカーに聞く(1/2 ページ)
日本のSIMフリー市場でシャープがシェアを伸ばしている。夏に同社初となるSIMロックフリー専用モデルの「AQUOS sense plus」を発売する。本機の狙いや、SIMフリー市場での戦い方を聞いた。
中国メーカーや台湾メーカーの独壇場だったSIMフリースマートフォン市場だが、その情勢も徐々に変化している。ここ最近、急速にシェアを拡大しているのが、AQUOSシリーズでおなじみのシャープだ。同社は2017年に「AQUOS sense」シリーズの派生モデルとなる「AQUOS sense lite」を投入。この端末がMVNOから好評を博し、SIMフリー市場でシェアを大きく伸ばすことに成功した。
調査会社MM総研によると、2017年度のSIMフリースマートフォン市場では、Huawei、ASUS、Appleに次いで、シャープが第4位につけている(関連記事)。キャリアモデルのブランド刷新に加えて、SIMロックフリースマートフォンが伸びたことで、スマートフォン全体ではAppleに次ぐシェア2位を獲得。これまでAndroid端末で首位の座を守っていたソニーモバイルを抜き去る結果となった。
SIMフリースマートフォン市場で手応えを得たシャープは、夏に同社初となるSIMロックフリー専用モデルの「AQUOS sense plus」を発売する。同モデルは、AQUOS senseシリーズのスペックを高めた端末で、おサイフケータイや防水・防塵(じん)といった特徴はそのままに、プロセッサやディスプレイなどを強化。細かな点では、AQUOS sense liteで非対応だった5GHz帯のWi-Fiもサポートする。
では、シャープが今、SIMロックフリースマートフォンを強化する狙いはどこにあるのか。AQUOS sense plusを開発した経緯と合わせて、同社の通信事業本部 パーソナル通信事業部 事業部長 小林繁氏と、AQUOS senseシリーズを手掛けるパーソナル通信事業部 商品企画部 主任の坂口昭夫氏に話を聞いた。
SIMフリー市場はコストパフォーマンスの勝負
―― AQUOS sense plusは初のSIMフリー専用モデルとのことですが、AQUOS sense liteなどがあったため、発表時には「あれ? 初めて?」と思いました。なぜ、このタイミングで専用モデルの開発に踏み切ったのかというところから、聞かせください。
小林氏 確かにハードウェアレベルでは(キャリアモデルなどと)共有化を図ってきてはいましたが、“ハードウェアとソフトウェアの両方をSIMフリー専用に設計したモデル”としては初になります。実際、発表時のスライドにもそんな「注」がついています(笑)。
SIMフリースマートフォンのマーケットが爆発的に伸びるという論調もありますが、本音ではそうは思っていません。昨年(2017年)末ぐらいから料金プラン的にも、通信品質的にも、MNOが優位になってきているのは事実で、ここから突然MVNOが2倍、3倍に増えるとは考えにくい。ただ、かつてガラケー(フィーチャーフォン)時代にシャープの携帯電話に先進感を感じて選んでくれた人が、今、SIMフリーの顧客になっていますし、新しいものを求める層も一定数います。その方々は発信力が高いという側面もあります。
AQUOS sense liteのときもそうでしたが、AQUOS senseの発表から時間がたってからAQUOS sense liteが出てきて、さらに(話題の)ピークが上がりました。MVNOごとにたくさんのカラーバリエーションを出しましたし、総数ではすごい数になりましたが、出るたびに話題になり、AQUOS senseブランドの認知拡大にとっては有効に働きました。こういったお客さまに「AQUOS sense liteはいいぞ」と言っていただいたことで、回りまわってAQUOS全体の認知拡大や、ネットでの推奨度向上につながる、いい循環が出てきました。
ただし、SIMフリー市場は特別だとも思っています。戦略的な観点で見ると、戦い方が非常にグローバルで、それに伴って値段の付け方もグローバル市場のようになっています。コストパフォーマンスの勝負だともいえ、「今までAQUOSがよかったから、次も」というようなことがあまり通用しません。その意味では、日々戦いになっています。
―― なるほど。キャリア市場とは戦い方も違ってくるということですね。
小林氏 ちょっと違いますね。一定層のお客さまは安心感を求めて(継続してAQUOSを)買われているのは事実ですが、SIMフリーの中から(他と比較して)選んだという方も多いですね。とはいえ、もしかしたら将来的にはこの戦いが、市場の全てになっている可能性もあります。ここで勝てなければ、携帯電話メーカーとして生き残れません。ですから、ここでブランド力を上げ、一定のプレゼンスを作ることに注力しています。
AQUOS sense plusで実現した「欲を言えばあとちょっと」とは?
―― 確かに、キャリア市場もdocomo withを筆頭に、分離プランの割合が増えていますし、今後、SIMフリー市場のようにならないとも限りません。そんな中でAQUOS sense plusを発表しましたが、この特徴を改めて教えてください。
坂口氏 特徴は大きく「液晶がきれいで見やすい」「レスポンスがいい」「定番の防水やFeliCaに対応している」の3つです。AQUOS senseシリーズということで、普通に使いやすい端末を目指しました。AQUOS sense liteのときも「こういうのを待っていた」という声があった一方で、「欲を言えばあとちょっと」という声も聞こえてきました。そういう後者の方々に向け、あとちょっとの余裕を実現するという意味で、「plus」と名付けています。
一番の特徴は見ていただければ分かる通り、18:9のディスプレイです。ナビゲーションバーを隠すという条件はつきますが、アプリの表示領域は5型、フルHDのモデルから23%もアップしていて、一覧性が上りました。画面の美しさにも、近年の取り組みになる「リッチカラーテクノロジー」を入れています。
また、レスポンスのいい端末ということで、CPUにはSnapdragon 630を採用しました。これは、2016年度のハイスペックモデルと比べても、処理速度で約2倍のスコアが出ています。メモリ(RAM)も3GBに増やしました。レスポンスという意味では、通信速度も向上していて、キャリアアグリゲーションや256QAMにも対応しています。あと、地味に「いいよね」と言われるのは、Wi-Fiの5GHz帯対応ですね。
小林氏 (5GHz帯が非対応だった)AQUOS sense liteのときは、「田舎で企画するから5GHz帯が載らない」などとも言われてしまいましたが、広島にもマンションはあります(笑)。5GHz帯は、確かにそういった集合住宅では必要かもしれませんが、その分コストが上がってしまいます。今回はplusということで、そこにもキッチリ対応しました。
坂口氏 防水・防塵やおサイフケータイにも対応していて、ここは海外メーカーとの差になるところでもあると思います。実は本体の幅もAQUOS senseと同じで、背面をぎゅっと絞って持ちやすくしているといった特徴もあります。
―― おサイフケータイ対応のSIMフリー端末は、意外と増えないですね。もっと海外メーカーも載せてくると思っていました。
小林氏 おサイフケータイはサーバ側の対応も必要になり、SIMフリーモデルだとメーカー自身がやらなければなりません。SIMフリーの場合、シャープも自分たちで実装していますが、これができているのも長年フェリカネットワークスとのお付き合いがあったからです。また、一定以上の規模も必要になってくるので、そう簡単にはいかないと思います。
ただ、SIMフリーだから何か機能を犠牲にするというのは、あまり健全ではありません。スマートフォン業界全体が冷めてしまうのが一番よくないと考えています。
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