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スマホと真逆の進化 なぜ今“ケータイ”が必要とされているのか石野純也のMobile Eye(2/3 ページ)

ドコモの「カードケータイ」やauの「INFOBAR xv」が話題を集めている。スマートフォン全盛の中、真逆ともいえるシンプルケータイが息を吹き返しつつある。今なぜシンプルなケータイが必要とされているのか?

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キャリアやメーカーがケータイに取り組む理由

 調査によって委細は異なるが、スマートフォンの普及率はおおむね6割から7割程度だ。総務省の平成30年版情報通信白書では、全体で60.9%、20代や30代のように90%を超えている世代もある。全世代というわけではないが、子どもや高齢者以外には、ほぼ普及しきったといっても差し支えないだろう。一方で、ドコモやauの扱うシンプルケータイは、スマートフォンが行き渡った層をターゲットにしているようにも見えない。

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総務省の「平成30年版情報通信白書」によると、スマートフォンの普及率は2017年時点で既に60%を超えている。世代によっては90%を超えることも

 では、なぜあえてキャリアやメーカーがシンプルなケータイに挑戦するのか。理由の1つは、スマートフォンの大画面化にある。ドコモの吉澤氏は「動画(を見るため)などの大画面ニーズは引き続き根強いものがあるが、一方でもうちょっと持ち運びやすい、あるいはシンプルなケータイが欲しいという声もたくさんいただいている」と語る。

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スマートフォンが大画面化する中、あえて小型でシンプルな端末を開発したという

 実際、ドコモが冬春モデルとして発表したスマートフォンを見ても、「Galaxy Note9」は6.3型、「Xperia XZ3」は6.0型、「Pixel 3 XL」も6.3型と、フラグシップモデルは軒並み6型を超えている。「Pixel 3」の5.5型がコンパクトに感じるほどだ。docomo withを見ても、「AQUOS sense2」が5.5型、「Galaxy Feel2」が5.6型と、いずれも5.5型を上回っている。

 ディスプレイが18:9以上の縦長になっているため、型(インチ)数だけを見て一概に大きいとはいえないが、スマートフォンの表示領域の平均値は、以前より確実に広がっている。スマートフォンをアプリやネットでコンテンツを消費するためのデバイスと捉えると確かに合理的だが、片手操作でサッと電話やSMSを送りたいというニーズは満たせていない。ここに、カードケータイなどのコンパクトでかつ機能を絞ったケータイが登場する余地がある。

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スマートフォンは大型化が進んでおり、フラグシップモデルでは6型以上が当たり前になった

 また、SNSやアプリ、ネットを必要以上に使ってしまう“スマホ依存”が問題視されている社会背景も無関係ではないだろう。AppleはiOS 12からアプリの利用時間などを制限できる「スクリーンタイム」を導入しているが、対するGoogleもPixel 3、3 XLの発表会では「Digital Wellbeing」と呼ばれる同種の機能の紹介に時間を割いた。ただ、こうした機能はあくまで緩やかな歯止めにしかならない。

 どちらも利用時間を可視化する効果はある一方で、ユーザー自身が解除してしまうこともできる。より徹底するのであれば、機能自体が絞り込まれた端末を持つというのも手だ。2台持ちして、日によって端末を使い分けることもできる。INFOBAR xvの発表時に、KDDIの商品・CS統括本部 プロダクト企画部の砂原哲氏は「デジタルデトックスなどに関心の高い方もいる」と述べていたが、シンプルなケータイはこうしたニーズを満たせる可能性もありそうだ。

 eSIMやワンナンバーのような技術が登場したことも、シンプルなケータイにとって追い風といえる。2台持ちがしやすくなるからだ。SIMカードを差し替えれば、確かに日によって使うデバイスを変えるのも不可能ではないが、どうしても手間がかかる。逆にスマートフォンとワンナンバーフォンの組み合わせであれば、外出時に必要な方を手に取るだけでよく、SIMカードの差し替えよりも手軽さは上だ。

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スマートフォンの子機として使えるため、SIMカードの入れ替えなどの面倒な作業をせずに使える

 シンプルなケータイが相次いで登場したのは、単なる偶然ではない。「スマートフォンの大型化」や「スマートフォン疲れ」に加え、これらの問題を解決する「新技術の登場」という3つの要因が重なり、シンプルケータイが登場する余地が生まれたというわけだ。グローバルで見ても、HMD GlobalがNokiaブランドのフィーチャーフォンを復刻するといった動きもあり、これは世界的なトレンドともいえる。

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HMD Globalが復刻した「Nokia 8110」

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