新iPhoneも対応した「eSIM」とは何か メリットと課題を解説:MVNOの深イイ話(2/3 ページ)
eSIM搭載のスマートフォンやノートPCが市販されるようになり、今改めてeSIMについて注目が集まっています。今回はスマートフォンでのeSIMについて解説します。eSIMでは何が行われていて、どんなメリット、課題があるのでしょうか。
eSIMのセキュリティ
SIM書き換え技術について、1つ忘れてはならないのが、SIMのセキュリティをどのように保つかという点です。
クラウドSIMやGSMA標準のeSIMでは、SIMに相当する情報がインターネット上をデジタルデータとして流通します。仮にこのデータが意図しない形で利用された場合、大きな問題に発展します。
独自のSIM書き換え技術においても、何らかの形で安全を確保するための仕組みは準備されているかとは思いますが、GSMA標準のeSIMはセキュリティ確保のために強固な仕組みを備えています。GSMAでは、eSIMやeUICCを取り扱う事業者に対して厳格な審査を行い、それを確認できる認証システムを設けることで、規格のオープン化と高いセキュリティの確保を両立させています。
eSIMの使い方
先に挙げたSIMの書き換え技術の中から、今後普及が見込まれるGSMA標準のeSIMについて、その使い方を取り上げたいと思います。
筆者が所属するIIJでは、2018年1月よりお客さまに提供しているフルMVNO基盤において、eSIMによる通信が行える検証環境を整えています。
また、9月21日に発売されたiPhone XS/XS Maxは本体にnanoSIMスロット以外にeSIMが内蔵されています(※)。このeSIMはGSMA標準規格に基づいたeSIMということをIIJの調査で確認しています。
iPhone XS/XS Max発売直後はeSIMを使うことができなかったのですが、10月31日に公開されたiOS 12.1アップデートにより、このeSIMが有効になりましたので、今回はiPhoneのeSIMにIIJが発行したeUICCプロファイルを書き込み、実際に通信してみます。
なお、GSMA標準のeSIMでは、eSIMの書き換え(eUICCのダウンロード)をRSP(Remote SIM Provisioning)と呼びます。RSPにはM2M機器向け(人間が操作しない機器向け)の手順、コンシューマー機器向け(人間が操作する機器向け)の手順があります。コンシューマー機器については、タブレットやスマートフォンのようなタイプのものと、スマホなどと組み合わせて使うガジェットを想定したコンパニオンデバイス向けの手順が規定されています。
今回紹介するiPhoneの事例は、この中でタブレットやスマートフォン向けの手順です。
この記事では主に利用者側視点でのeSIMの使い方を紹介します。MVNOなど、携帯電話事業者視点でのeSIMの取り扱いについては、IIJが開催するイベント「IIJmio meeting」で紹介しましたので、そちらの資料もご覧ください。
IIJmio meeting 21 SIMカードの調達プロセスと管理〜そしてeSIMへ
1.契約・QRコードの入手
eSIMを利用する場合でも、従来のSIMと同様にいずれかの携帯電話事業者と通信サービスを契約することには違いはありません。一つ異なるのは、契約の際に携帯電話事業者から提供されるのがプラスチックのSIMカードではなく、QRコードであることです。このQRコードにはその契約に基づくeUICCプロファイルダウンロードするための情報が含まれています。
2.スマートフォンでのQRコードの読み込み
eSIM対応のスマートフォンでは、SIM関連のメニューにQRコードの読み込み機能が用意されています。iPhoneの場合は、「設定」→「モバイル通信」→「モバイル通信プランを追加」を開きます。ここで先ほど入手したQRコードを読み込ませると、指定されたeUICCプロファイルをダウンロードして良いかの確認画面が表示されます。
3.eUICCプロファイルのダウンロード
確認画面でタップすると、eUICCプロファイルがダウンロードされます。このダウンロードはインターネット接続が必要になるという点に注意が必要です。iPhoneの場合、Wi-FiもしくはプラスチックのSIMでのモバイルインターネット接続が利用できます。
4.APNの設定
iPhoneの場合、eUICCのダウンロードが完了すると、プラスチックのSIMとeSIMをどのように使い分けるかを選択する画面が表示されます。
また、eSIM(eUICC)はあくまでプラスチックのSIMカードの代わりになるものなので、通信のためには従来同様にAPNの設定が必要です。ですが、今回IIJが用意したeUICCプロファイルでは、IIJのフルMVNO基盤に実装したAPN自動選択機能が有効になっており、iPhoneでは特にAPNを指定しなくても通信ができます。
ご覧の通り、eSIMの利用は非常に簡単で、作業は1分とかからずに完了します。
ここまでの手順を改めて図に表すと次のようになります。eUICCプロファイルを発行するのはSM-DP+というサーバで、スマートフォンはここからプロファイルのダウンロードを行います。SM-DP+は複数の事業者が設置できることになっているため、どのSM-DP+からプロファイルをダウンロードするかを指定しなければなりません。
契約後に発行されるQRコードはインターネット上でのSM-DP+の場所(アドレス)と、ダウンロードするeUICCを特定するためのIDを指定するために使われるのです。これらの情報をActivation Codeと読んでいます。
また、先に書いた通り、eSIMには複数のeUICCプロファイルを保存できます。iPhoneでも複数のeUICCプロファイルを保存できますし、設定画面で切り替えるとも可能です。従来であれば複数の携帯電話事業者のSIMカードを持ち歩いていたような場合でも、eSIMだとスマートに対応できるようになるでしょう。
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