総務省が「完全分離プラン」を求める緊急提言を発表――画一的な料金施策を求めることが競争になるのか:石川温のスマホ業界新聞
総務省の研究会が「完全分離プラン」の導入を迫る緊急提言案を取りまとめた。「キャッシュバック憎し」の提言を見ると、総務省は10年前の屈辱を晴らしたくて仕方なかったのかと思えてくるほどだ。
11月26日、総務省は「モバイル市場の競争環境に関する研究会(第4回)ICTサービス安心・安全研究会 消費者保護ルールの検証に関するWG(第4回)合同会合」において、緊急提言を発表した。
その中身といえば、端末購入に伴う通信料金の割引を禁止するという「完全分離プラン」の導入を迫るものだった。また、4年縛りも抜本的に見直す必要があるとした。
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この記事は、毎週土曜日に配信されているメールマガジン「石川温のスマホ業界新聞」から、一部を転載したものです。今回の記事は2018年12月1日に配信されたものです。メールマガジン購読(月額540円・税込)の申し込みはこちらから。
これにより、NTTドコモやKDDI、ソフトバンクが提供している現在の料金プランや販売方法が軒並み、否定されたことになる。
総務省としては、キャッシュバックの横行を問題視しており、販売代理店にも業務改善命令を出せるようにと、販売代理店を管理できるよう届出制を導入するとまで言い出す始末だ。
緊急提言を発表するというから、もっとも画期的な内容になるかと思いきや、結局はキャッシュバックを潰すという10年前から同じことを言い続けているだけに過ぎなかった。10年前も総務省は販売奨励金をなくせと息巻いていたが、結局、ソフトバンクが新スーパーボーナスを生み出し、他の2キャリアが追随したことで、総務省のメンツは丸つぶれになってしまった。
今回の「キャッシュバック憎し」の提言を見ると、総務省はあの時の屈辱を晴らしたくて仕方なかったのかと思えてくるほどだ。
この提言がやっかいなのは、競争を促進するどころか、競争を停滞させる内容になっていることに総務省が気が付いていないというところにある。
本来、料金プランも販売方法も、それぞれの会社が知恵を絞り、新しいプランの建てつけで競争するというものだ。それがユーザーに支持され、他キャリアから顧客を奪うようなインパクトがあるのなら、競合他社も追随してくるものだ。競争し、後追いしたからこそ、3社が横並びになるということも珍しくない。
しかし、今回の提言は、総務省がひとつの販売方法しか認めない。これではどこも同じ建てつけになってしまう。総務省としては同じ条件になることで、値下げ競争を促進させようとしているのかもしれないが、そんなに簡単にはいかないだろう。
本来であれば、端末が割り引かれた買い方もあれば、完全に分離されたプランなど、複数の買い方、プランから、ユーザーが選べるのが理想だ。それでこそ、ユーザーが自分に見合ったプランを選べるという環境が整う。
総務省はユーザー視点が全く欠けた、机上の空論でしか議論できていない。
数年後、この提言が本当に正しかったのか、責任を持って、きっちりと検証作業をしてもらい、誤っていたとわかったら、軌道修正する勇気を総務省には持ってもらいたい。
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